小さな星の物語【創作】
閉館間際の科学館。展示室の照明が落ち、天体模型だけがぼうっと光を放っていた。
今日は、来月の企画の準備をしようと思ってたのに。図書室の整理なんて、今度にすればよかった。
私は、倉庫にやってきていた。企画準備のヒントになりそうなものがないか、覗いておこうと思ったのだった。
そっと棚の隅に置かれた小箱を手に取る。埃をかぶったそれには、昔の企画展の名残が詰まっていた。
「このあたりは、かなり昔の企画ね。」
──ほしのなまえを、みんなでかんがえよう。
なんとなく、聞いたことがある企画名だった。
開けてみると、紙片に書かれた星の名前がぎっしり。
「ライダーぼし」「メビウス」「ほしのかけら」
参加者は、おそらく小学生くらいだろう。
……そんな中に、見覚えのある字。
ぶわっと記憶がよみがえり、胸が熱くなる。──自分が子供の頃に書き込んだ、星の名前があった。
はじめて、科学館にやってきた日を思い出す。
天井の高い展示室に入ると、光る星の模型や巨大なプラネタリウムドームが目に飛び込んできた。
暗がりの中で星々がゆっくり回るさまは、まるで宇宙の中に自分が浮かんでいるような錯覚を覚えた。
机の上に置かれた小さな望遠鏡や、壁に並ぶ天体写真の数々。どれも手に触れられそうで、手が届かない、神秘的な魅力……。
そのとき感じたワクワクは、今も消えていない。あの「科学館の魔力」に取りつかれたからこそ、今もここで働いているのだ。
──ほしのなまえ。
「すてきぼし」にしよう。
この星には、いろんなうちゅうじんがすんでいて。
あやとりやなわとびをして、みんなでなかよくくらしていて。
流れ星が、たまにあそびにやってくることもあって──。
ストーリーを考えて、一生懸命文字をかいた。
用意された、星型の折り紙のかたちにだってこだわったっけ。
最近の私は、館長と意見が食い違うことがしばしばあり、それが悩みのひとつになっていた。
だが、長年勤めている経験があるからこそだろう。こうして昔の企画の品を大事にとっているところを見ると、館長は子供たちのことを本当に大切にしているんだな、と心が温まった。
私はふと、思いつく。
「今度の企画でも、子供たちに新しい星の名前を考えてもらって...…。過去の参加者がつけた名前と見比べて、楽しんでもらおう。」
壁の模型の星を見上げながら、にこっとほほ笑む。
この企画なら、科学館に訪れる子供たちも、自分自身も。過去と今をつなげられる。
これだったら館長も、もっと子供たちのことを考えろ、なんて怒ったりしない。
明日、話してみよう。
昔の自分と今の子供たちをつなぐ、小さな星の物語を。
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書いてる人も偉い。書いてないけど考えてる人も偉い。まぶしい。