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死を願わなくなるまで

「希死念慮」について語ろうと思います。

暗い話題は避けたい方はそっ閉じプリーズ。


希死念慮なんて普通だと思っていた。
いや、モノホンの希死念慮持ちからすれば私の希死念慮なんてカスみたいなものだと思う。
実行したことはないし、実行しようとも思わない。

「早く終わらないかな」
と、思っていた時期がある、くらいのものだ。

誰かを殺したいと思ったことはない
自分から死のうと思ったこともなければ
どうして生んだと親をせめる気持ちもない
死にたいとは思わない
ただできれば生まれてきたくなかったと思うだけ
二度と
生まれたくないと思うだけ

吉野朔実「ECCENTRICS」


ああ、私の気持ちはこれだ、と思った。

武器になりそうな重い通学鞄を膝にトンネルを抜ける。
乗りなれていない乗客が激しい風に慌てて窓を閉める。
轟音のなか、トンネルが崩落したら即死かな、なんて夢想する。


トンネルを抜けて、ホッとしたようなしないような気分を抱え、
終わっていない予習を気にしながら学校へ向かう。

「勉強しないと」

ずっとそう思って生きてきた。

ずっと勉強してきたから、勉強しないと不安になる気がまだ少しする。


生きることは無意味ということよ
生きるというのは無駄なことなの
こーゆーふうに言えば満足…?あなたの願いをかなえるわ
なんでも言って
どうしてほしい?
もし怖いなら今すぐに殺してあげてもいい
ひとりでいくのが淋しいなら
…いっしょに死んであげる

高河ゆん「B型同盟」

エイミはそう問い、
ブラックは「生きたい」と願った。


私は母の満足する大学に入学した。

ほらもういいでしょ、私のノルマは達成したでしょ?

だのに

自分のために生きることに、30を過ぎたあたりから限界を感じ始めた。

この毎日を繰り返しながら、老いていく。

ゾッとした。

10年後、20年後、少しずつ老けていく自分がこの机で仕事をしている。少しずつ責任が増え、少しばかりの肩書きがつき、お局と呼ばれる。

そこで英会話と料理教室と結婚相談所に申し込んだ私はなかなか先見の明があったと思う。

結婚相手は母の望む相手ではなかったが、そこまでの期待に応えるのはさすがに無理だった。

結婚相手に難癖をつけられて初めて、グレてやろうかと思った。
いや、正確には初めてではなかったが、私と母の間の大きな溝を実感した。

「母の願い」が私のためのものか、母のためのものか、その境界は曖昧なものなのだと気づいた。

なんにせよ、私は希死念慮を払いのけ、有能なコンサルトとして自らをマネージメントしてのけた。

それでも育ててもらった恩義に応えるべく、私は親より先に死なないようにはしようと思っている。
そして、自分の子どもに、親が自殺したと思わせたくないと思っている。

そこに自分がないことが、私らしいといえば私らしいのだろう。

もう一度生まれたいか?

金持ちの家の猫とかがいいな。

今からでも金持ちの家の猫みたいに振る舞えばいいのかな。

終わりがきたら、ああ疲れたようやく休めると私は心のどこかで安心するのかもしれない。

私は死ななきゃ自由になれない?

そんなわけはない。

誰かの望みを背負い期待に応え、死にたいなんて微塵も思わせないで誇り高く生きる?

ガラスの天井をブチ破る切込隊長として矢面に立つ?

ふざけないで

私は私のために努力してきたの。
タダ乗りなんて許さない。

対価を求めて何が悪いの?

抑圧してきた感情が吹き出す。

自分の好きなように生きられないなら死んだほうがましだ。

…これは希死念慮じゃないな。

私が達成したノルマは、誰に託されたノルマなんだか。

子として妻として母として

私は私をどこに落としてきたんだろう。

私のカケラを拾い集めて繋ぎあわせる。

私のカケラは生きたいと叫ぶだろうか。
もういい加減にしてくれと怒るだろうか。

今、私は私のカケラの声を
掬い上げようとしている。

私の希死念慮は希死念慮じゃなくて
自分の言葉を取り上げられて
拗ねているだけ、なのかもしれない。


「私も同じ経験があるから、あなたの気持ちがよく分かります」

なに勝手に分かった気になってんだよ、このクソカウンセラーが、顔洗って出直してこいや。

てめーは一緒に死のうって言われたことあんのかよ、ねーだろ、バーカバーカバーカ。

図書館で借りた本なんかでアタシの何をどうしようってんのよ、そんな付け焼き刃で切れるのなんか豆腐くらいだよ。

寄り添い、傾聴、洞察

結局は自分がどう納得するかなんだろうな。

奥に潜れば生きたい気持ちのカケラがキラキラしてるけど、
それは反転すれば死にたい気持ちのカケラもキラキラして見えるということ。

よく見てみたら、私の死にたい気持ちはペラペラしている。
でも人間は水たまりの水でだって窒息死する。

死はそこらへんに転がっているし、
死を考えることは、ある意味生について考えることだ。

私はキラキラ光る死より、己の役割を優先したのかもしれない。
社会的な人間としての側面が私を成人させたのだろう。

生きる意味はあると思えば見えてくるし、ないと思えば気楽な気もする。

正解も真実も真理も

見てるだけじゃ博物館の展示と同じだし、

食べたって胃腸が弱けりゃ腹を下して終わる。

ガリゴリと噛み砕いて飲み込んで、死ぬ気で吸収してやっと、ちょっと、

ほわんとお腹が温まる。

そんなものだと、私は思う。

私達は普通じゃないことになれているので
不幸の方が落ち着く癖があるのよ
自分では悪いことも不幸も望んでいるつもりはないわ
そうじゃないのに
知らず知らず
心の深い深い底の方で
幸福を恐れてる

吉野朔実「ECCENTRICS」


「ECCENTRICS」を読んで、私が作家にならなくても、この人の作品を読めばいいじゃないかと思った。

でもそうじゃない。

私は私の言葉で自分を表現したい。

"The opposite of war isn't peace…   It's creation."

ミュージカル「RENT」LA VIE BOHEME    B      

Oooooh !

そう大声で叫ぶ瞬間、希死念慮はまっくろくろすけみたいに、出ていっちゃう。

だから、まぁ、
そういうもん、じゃない?

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みみずくの耳 なんと!いいんですか!? ありがとうございます😊 あなたにいいことがありますように✨