ぬけぬけみち
まさかの坂、みたいに抜け抜けとした道、なんてのはどうだろう。
抜道。
抜け抜けとした道。
「抜け抜けと」って表現は、どこかネガティブな印象がともなう。ずるい、許せない、底には嫉妬、羨望。
それに対して「抜道」は賢そうだ。若干の小賢しさはあるが、許容範囲だろう。車の渋滞を避ける道、のイメージが強いからだろうか。
「ぬけぬけみち」
…なんか、ネバネバしてそうだ。
墓場の奥にたまに開かれる「ぬけぬけみち」を通ってしまった子どもが神隠しにあう、みたいな。
…………
「ぬけぬけみち」
「暗くなる前に帰っておいで」
いつも母さんは言う。
冬は暗くなるのが早いから、もう夕方のチャイムが鳴る頃には真っ暗だ。
「もう暗いじゃないの」
母さんは眉根をよせる。
公園のテニスコートの裏が好きだ。落ち葉が溜まってカサカサいい音がする。僕はそこのベンチに水筒を置いて遊ぶ。いつも母さんは水筒を持って行けと言う。
公園にはいつも鍵の掛かった物置きがある。何が入ってるか想像する。たぶん掃除道具とかなんだろうけど、でも、もしかしたら。
夜中の3時になったら、妖怪が中から出てきたりしないかな。
あの鍵は実はとっても大事な封印だったりして。
もしかしてもしかして。
これ以上考えたら、夜怖くなっちゃうからやめよう。もう帰ろう。
僕は水筒を肩にかけて帰ろうとした。
…あれ?こんな道、あったっけ。
こっちの方が近道かな。
「もう!いつまで遊んでるの!!」
母さんが迎えに来た。
いつもの道から。
「はーい、ごめんなさい。」
母さんは怒ると長いから、早めに謝っておく。
「暗くなる前って約束したでしょ!?」
やばい。ああもうちょっと早く帰るんだった。えっとえっと、
「お腹すいた!晩ご飯なに?」
母さんが何か言おうとする、やばい。
「お母さん!走ろー!」
「えぇえ!?」
僕は家に向かって走り出した。
<了>
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