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第七話 義経伝説時を超えた殺意

 博物館は、息をひそめるようにヒッソリとたっていた。
 何故か、この前までうるさかったのセミの鳴き声さえなく、時が止まっているような、不思議な感覚に包まれている。
 そんな物音一つしない空間を、俺たち三人の足音だけが響き渡っていた。
「やあ、みんなそろってなんの用だい?」
 展示室の中にいた斎藤館長が、ゆっくりこちらを見渡しながら聞いてくる。
「実は、事件の犯人が分かったんですよ」
 先生が、ゆっくりと口を開いた。
「ああ、事件か・・・聞いたよ。青木君が犯人だだったんだろ?遺書もみつかったって・・・まったく嘆かわしいよ・・」
 言いながら、少し芝居がかっているように、大げさに首を振る。
「いえ、剣は青木さんが盗んだ事で間違いはないでしょうが、殺人はちがいます・・・」
 やっぱり、青木さんは殺しは、やってなかったんだ!俺の中に、少しだけ安堵感が湧いてくる
「それは、変な事を言うね・・・青木くん、藤堂と同じ毒で死んだそうじゃないか、それが、何よりの証拠だろ?」
 いいながら、俺たちを睨みつけてくる館長の顔には、いつもの穏やかさは微塵もなかった。
「それに、俺が見つけた時には、藤堂はもう死んでいたんだ!殺せるのは、青木くんしかいないだろう!」
 しかし、先生は冷静さを一切崩さずに淡々と会話を続ける・・
「斎藤館長、あなたがメールを貰ったのは何時ころですか?」
「そんなの、警察にも見せただろう!2時13分だよ!」
「メールを貰って、すぐに駆け付けたんですよね?」
「ああ、そうだ!夜は道も空いていたからね、15分で博物館まで到着したよ!何度も説明してるだろう!!」
 館長は段々いらだったように、何度か地面をけり上げる・・・
「そうですか・・・しかし、おかしいんですよ。あの日、館長が家から博物館まで15分で到着することは不可能だったんです」
「何を言っているんだ!実際、来れたじゃないか!何を根拠に、そんな事を言うんだ!!」
 九条先生は、おもむろにポケットから一枚の写真をだし俺たちに見せた。
 それは、ひき逃げがあった事と、当時の目撃情報を求める看板だった。
「それが何だって言うんだ」館長は小ばかにしたように、はきすてた
「見てほしいのは時間です。ひき逃げがあったのは午前2時位、それから警察により、道路が30分位通行止めにされていたんです。館長の家から博物館までの道路は、この日館長が通ったと主張する時間、通行止めだったんですよ・・・じゃぁ、館長、あなたはどうやって博物館に来たんですか?」
 その瞬間、静寂が訪れた・・・
「そうか、でも俺が博物館に入って来る所は、防犯カメラにも映っていただろう・・・それは、藤堂が死んだ後だ。それは、どう説明する?」
 館長は、少し挑発的に睨みながら聞いてくる。しかし、先生は、まったく動じる事なく淡々と言葉をつなぐ・・・
「そもそも、藤堂さんが一人で集中しているから、資料室には近づくなと警備員達に言ったそうですね。そのことから考えると、あなたは予め資料室で藤堂さんに薬をもって、眠らせていたんじゃないですか?」
「俺の前に、警備員が藤堂が死んでるのを見てるだろう!」
「そこなんですが、警備の橋本さんに話を伺った所、矢が刺さって倒れていたのは確認したけど、直接は確認していないと話していたんです。直ぐにあなたが来て、死亡を確認したと聞いています」
「だから、言ったろ!俺の前に警備員が・・・」
「落ち着いてください。私が言いたいのは、警備員が見たのは眠っている藤堂さんじゃなかったのか、という事なんです。」
「えっ先生・・それだと叫び声はなんだったんですか?」
「録音されていた声は鮮明ではなく、藤堂さんの声と断定できないでしょう?つまり、スピーカーから全く別人の叫び声だけ流したとしたら」
「という事は、警備員が発見した当時は生きていたって事っスか」
「そうです。館長は、藤堂さんの死亡を確認した後、直ぐに部屋をでて扉を閉めてしまったそうですね」
「それは、現場を荒らさないようにするために・・」
「違います。他の人から、なるべく藤堂さんを見れなくするためです。そうしていおいて、館長は警備員達に見回りを頼んだ。彼らは、頼まれた通り直ぐに現場を離れました。それを確認した後に、再度藤堂さんの元に行き、そこで本当に殺害をした」
「何を言ってるんだ!そんなの、全て君の憶測だろう!!証拠はあるのかっ俺が藤堂を殺したって証拠はっ!!!」
「すべて、あなたが自分で口走っていたじゃないですか!藤堂さんと青木さんは同じ毒殺だと!」
「それは、警察から聞いたんだ!」
「残念ながら、藤堂さん青木さんの死因について警察は発表してないっス」
「つまり、二人の毒殺を知るのは警察関係者と犯人だけなんだよっ!」
 九条先生は館長を鋭い眼差しで、真実をたたきつける!
・・・・ふっふっあはっはっはっ・・・・
 館長が突如、狂ったように笑い始めた
「あーあ。バレちゃったか。仕方ないね」
 急に態度も表情も変わり、そこには俺の知っている館長はいなかった・・・
「でもね、全然ダメ!君たちは何もわかってない。そもそもここは、義経に関するものを、全て手に入れる為につくられた所なんだよ。俺たち八咫烏は、頼朝よりの銘を受けて結成された秘密結社さ。義経が持っていたヒヒイロカネを手に入れる為にね・・・」
「頼朝はヒヒイロカネの事を知っていたの?」
「そう、弟の癖に、兄の頼みを断って、ヒヒイロカネを渡さなかった。頼朝は、どうしても手に入れたかったけど、公にすると朝廷に献上しないといけなくなるのが嫌で、秘密裏に自分の物にするために結成されたのが八咫烏のはじまりだ。しかし、生きている内には手に入れる事が出来なかった、が秘密結社はヒヒイロカネを手に入れる為に、歴史の裏に存在し続けてきたんだよ。しかし、この数年は新たな発見もなく動きもなかった。元々研究所としていた建物も、博物館にすることで、公に全国から情報を集められる様になり、俺は、表向き館長として働いていた。正直、このまま年を取って隠居するんだと思ってた、なのに・・・」
 俺たちを恨めしい目で睨むと
「小鳥遊君、君の家から剣と古文書がみつかった。その瞬間、陰で息を潜めていた八咫烏は動き始めた。俺は、古文書の内容をいち早く知る立場にあった。だから、他のメンバーが剣に目が向いている隙に、ヒヒイロカネの情報を手に入れる事に成功した。しかし、運が悪く藤堂が研究者として参加する事になった。彼に知られる前に、ヒヒイロカネの情報を隠す必要があったのだが、運悪く先に知られてしまった。このままだと公にされてしまうからね、それを避ける為に彼には死んでもらう必要があった。幸いにも八咫烏のメンバーは剣に夢中になっている。俺は、その事を利用する事にした。青木君は八咫烏の古参メンバーだったが、借金がかさんで、博物館が集めた品をこっそり売り裁いていた。俺はそれを知って、彼と取引をした。盗みを組織に黙っている代わりに、剣を盗みださせ、鎧武者の姿をさせ捜査を混乱させようとした。正直、殺人も依頼したんだがね、流石に断られたから、そっちは諦めたよ。後は、君たちが知っての通りさ」
 俺たちは、黙って館長の話を聞いているしかなかった・・・
 そんな俺たちを面白そうに見まわすと
「小鳥遊君、君が持っていた勾玉、ヒヒイロカネなんじゃないかね?」
 確信を持った口調に、思わず目を背けると
「ああ、やっぱりそうか・・・君にも死んでもらおうと思ったんだけどね、案外丈夫だったね・・」
「あなたが小鳥遊君を、ひき殺そうとしたのか!」
「運が悪く、他の車が通りかかちゃってね、その場で勾玉を手に入れる事が出来なかったのが残念だ。俺が君をひいた事が組織にバレちゃってね、俺より先に組織が君に会いにいっただろ?」
 一気に話す館長に、ちょっと違和感を感じた時
 ドォォォォーン!!!
 大きな音と共に、奥の方から火が上がり、一気に煙が俺たちを包み始めた。
「さぁ、早く逃げた方がいい・・・ここも間もなく火の海になり吹き飛ぶからね・・・」
「ヤバいっス。早く逃げるっス!!」
「ああ、行こう小鳥遊君!!」
 佐藤刑事と先生は、両側から俺の腕を引っ張るが
「館長、館長も逃げないと!!」
 俺は、なんとか館長も助けたくて、手を伸ばす
 しかし、館長はニッコリと笑い
「小鳥遊君。勾玉の事は組織には知られていない。これからも気をつけなさい。闇は君が思っているより深いからね・・・」
 館長が話しながらも、炎が建物を飲み込もうとしている。辺りは煙が充満し、もう一刻の憂慮もながった。
 俺は、両腕を二人に抱えられながら、目の前の窓に向かって体当たりする。
 俺たちが外に出れた瞬間に背中側で、爆発音が響いた・・・・


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