法螺貝体験記〜体と大地をつなぐ螺旋の音色〜
思い出の山伏修行
2017年。
山伏修行に初めて参加したあの年から、ずっと心のどこかにあった思いがある。
先達の山伏が常に携帯していた法螺貝。
あの厳かで、どこか懐かしい響きをもつ法螺貝の音色。
もしできることなら、自分でも奏でてみたい。
淡路島へ、「ポチッ」と修行へ
そんな折、淡路島の最高峰・諭鶴羽山で、法螺貝の体験合宿が開催されるという情報を知った。迷いなく「ポチッ」と申し込み。
ファシリテーターは青木マーキーさん。
そして法螺貝の師匠として迎えられたのは、宮下覚詮先達。
歴とした修験者である。

手にした法螺貝はずっしりと
合宿の初日。
人生で初めて手に取った法螺貝は、想像以上に重く、ひんやりと冷たい。
けれど、不思議なことに、2日間一緒に過ごすうちに、その重みがむしろ心地よく感じられ、貝の丸みが腕のなかにぴたりと収まるようになった。まるで相棒のような存在に。
もちろん最初は音が出ない。空回りする息。
けれど、先達の丁寧な指導で、呼吸法を一から整えていくと‥。
ついに音が鳴った。
学生時代に親しんだ、合唱の腹式呼吸や、鼻腔や頭蓋骨を響かせるようイメージすふスキルが、ここで生きた。
響いた瞬間、内なる何かが開いた
あの「ブオォッ」という音が出た瞬間、胸の奥が震え、自分の中の何かが開かれるような感覚がした。
地から空へ空気を吸い上げるイメージ。呼吸を通して、大地と身体と天がつながるイメージ。

法螺の音は、祈りであり、力である
先達の法螺の音は圧巻だった。
地響きのような低音が、空間を一変させる。
あれが「音の力」なのだ。
法螺貝の歴史は新石器時代にまで遡るという。太古の人類もまた、法螺貝の奏でる神秘的な音色に惹かれ、人知を超える存在と繋げたのだろう。
その螺旋の形は、銀河、大気、植物、人体‥。あらゆる自然に共通する普遍の形である。
吹くのではなく「立てる」
法螺貝は「吹く」のではなく「立てる」という。
息が、貝の螺旋に沿って音へと変わり、360度に広がっていく。
その響きが、人にも自然にも届いていく。
これは音楽ではなく、祈りであり、調和である。
自然と人、人と神をつなぐ。修験道の世界観が、そこにあった。
自分の中に、軸ができた
2日間の合宿が終わるころ、私の中には静かな変化があった。
法螺を立てる時に、身体と大地が一本の線でつながったような感覚だ。
軸が通った、という感覚。

いつか、マイ法螺貝を持って
この2日間は短いけれども、中身の濃い時間だった。
自分がどこにいるのか一瞬わからなくなるような感覚に陥ることも。
また機会があれば、法螺貝と対話してみたい。
いつか、自分だけの「マイ法螺貝」を手にして、自然の中で法螺貝を奏でる日を夢見ている。
