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pasteltime
【短編】黄色くて金色のシャボン玉
「シャボン玉を、これで吹いてごらん」
その人はそういって、足元に咲くタンポポを一本折り取って、
綿毛を全部、ふうっと空に吹き飛ばしてから
ちょっと茎を折って私に持たせると
ズボンのポケットからシャボン玉液の小さな瓶を取り出して、蓋を開けて私に差し出した。
なぜタンポポの茎で…
なぜ大人の男性のズボンのポケットにシャボン玉液…
なぜ私はこの人とこの公園に…なぜ…なぜ…
私は上手に飛んでいく綿毛をみながら、心の中の「なぜ」が顔や言葉に出てこないようにこらえた。
そして言われた通り、タンポポの茎をシャボン液につけると、静かに吹いた。
ふうううう…っ
小さなきらきら薄黄色に光るシャボン玉が笑いながら現れた。
あははあはは…
確かに笑い声がした。
私はもう一度、シャボン液をつけて吹いた。
また笑顔のシャボン玉が黄色く金色に光りながら笑いながら太陽を目指してのぼって行った。
いくつかはのぼらずに私のまわりにまとわっていた。
くすぐられたような気がして私は微笑んだ。
私が笑うとシャボン玉はますます嬉しそうに輝く。
私にシャボン液を差し出している人も微笑む。
はああっ…
私は大きくため息をついた。
なにか、胸につかえていた大きな思いものが、それで取れた。
もう一度、タンポポの茎でシャボン玉を吹く。
さっきより大きめのシャボン玉が吹ける。
シャボン玉はどんどんどんどん大きくなって
私とその人を映している。
二人とも金色で虹色だ。
さあっと風が吹いて、シャボン玉も私も彼も浮き上がり
明るい空に飛ばされていった。
(了)
*小牧幸助さんの企画に参加します
