掌編小説|馬車馬のような汽車犬のような電車猫のような飛行機鳥
「無理せず生きようぜ」って、最近よく聞く。
SNSでも、テレビでも、上司の口からですら。
みんな笑顔で言う。「自分を大切に」「ペースを守って」「休むのも仕事」だって。
……おい、誰が走るんだ、それで。
朝、街を走る。
馬車馬のように汗を流し、汽車犬のように吠えながら、
電車猫のように線路をすり抜け、飛行機鳥のように風を切る。
僕らは動力そのものだ。誰かの生活を回してる。
「無理せずに」と言われても、止まったら町が沈む。
パン屋は寝坊すればパンが焼けないし、駅員が休めば電車が止まる。
誰かが「今日はもう限界です」って横になった瞬間、世界がちょっと遅れる。
そうやって“みんなでゆっくり”とか言ってる間に、未来を他の誰かに抜かれる。
飛行機鳥が笑った。
「おい、下を見てみろ。地面の奴ら、まだ走ってるぜ」
汽車犬が吠えた。
「当たり前だ、止まると錆びる」
電車猫が唸った。
「快適とか安全とか言う奴ほど、俺らの上に座ってスマホ触ってるんだよ」
そうだ。
僕らは走るために作られた。
止まらないで、壊れるまで走る。
それが、たぶん一番まっとうな生き方だ。
夕方、街が赤く染まる。
誰もが「今日もお疲れさま」って言い合ってる。
その声を聞きながら、僕はまた前に出る。
馬車馬のように、汽車犬のように、電車猫のように、飛行機鳥のように。
無理して生きて、世界を動かす。
それでいい。
いや、それしかないだろ。
――そして、明日も走るんだ。
あとがき
高市新総裁の言葉(馬車馬)で色々と反応はありましたけど、全員が全員じゃなくても、公僕くらいはもっと働けという意図で理解してます。
一般人だって働ける人は働かして欲しいですね。(その分、給料上げてくれ、と)
残業ゼロとか言ったら仕事(商品開発など)が遅くなるだけじゃない??と。
