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何者かになる必要はなかった。勘違いをしていた。

「結局、何になりたかったのだろう。」

何度も考えてきた、この問い。

成功したい?
豪勢な生活をしたい?
世界中を飛び回りたい?

私は「足りないもの」ばかり探していました。

もし、あの人生だったら

うまく文章が書けたら。
伝えたいことを届けられるかもしれない。

もっと影響力があったら。
自分を責めなくて済むかもしれない。

もっと時間があれば、
もっと恵まれた環境だったら、

「足りないもの」を探し続けてきた。
考え始めると、終わりがない。

選ばなかった人生は、どれも輝いて見えてくる。

「あの人みたいだったら。」
「私も、あんな人生だったら。」

頑張っても、「まだ足りない」と思ってしまう。

でも、本当はどうなのだろう。

欲しかったのは、誰かの人生?
それとも、今の人生をもう少し、好きになりたいだけ?

同じ人なのに、違って見えた

私は姉が嫌いだった。

「そんなこともわからないの?」
「だから、頭の悪いやつは」

いつも人を見下すような話し方。
気に入らないければ、すぐ不機嫌になる。

成績優秀で、運動もできる姉。
努力してもできない人の気持ちは分からない。

関わることが怖かった。
ずっと、避けてきた。

でも、姉との関係が変わり始めた。

「仕事、大変よね。」
「なにか手伝えることあったら言ってね。」

考えられない。
姉から気遣いの言葉が。

「何か裏があるのでは」
昔の私なら、疑っていた。

しかし、
姉の言葉を、そのまま受け取れる自分がいる。

何が変わったのだろう。

相手を変えることをやめた

「姉が変わればいい」

以前は、そう思ってた。
でも今は、思わない。

「何かできることない?」
疲れていそうなら、声をかける。

「いつもありがとう」
感謝の気持ちを伝える。

もう、相手が変わることに期待していない。

どう向き合うかを、自分が選ぶ。
ただ、それだけだった。

その小さな積み重ねは、少しずつ関係を変えていった。

「昨日、子どもが夜中に起きちゃって……。」
そんな何気ない会話。
「分かる、大変だよね」と笑い合う。

「昔、よくお弁当を持って出かけたよね。」
「お弁当、カラスに取られたこともあったよね」
お互い幼かった頃の記憶、
思い出しながら、一緒に笑う。

あんなに避けていた姉と、こんな時間を過ごす日が来るなんて。

まったく想像はしていなかった。

相手を変えたわけではない。
変えたのは、自分の向き合い方だった。

何者かになることより、大切なこと

ずっと、求めていました。
自分にないものを。

もっとできる人になりたい。
もっと認められる人になりたい。
もっと魅力のある人になりたい。

手に入れば、景色が変わると思っていた。
満たされると思っていた。

でも、そうではない。
姉との関係は、気づかせてくれた。

見方が変わると、同じ景色も違って見えることを。

お互い社会に出て、経験をしてきた。
仕事、人間関係、子育て、と、思うようにいかない毎日を。

その時間は、私たちを少しずつ変えていたのかもしれない。

言葉を素直に受け取れるようになった。
頑張りを想像できるようになった。

あんなに嫌いだった姉との時間。
今では私の大切な時間の一つになっている。

ずっと、「何者かになれば幸せになれる」と思っていた。
でも、幸せは、手に入れることではない。

気づけば、すでにそこにあった。

変えたいのは誰だろう

「相手が変わればいいのに。」

そう思ってしまう日は、自分に問いかけてみる。

この人の何を見ているだろう。
この人のどんな背景を知らないのだろう。

もちろん、無理に好きになる必要はない。
距離を置いたほうがいい相手もいる。

ただ、自分の見方が少し変わるだけで、関係が変わることがある。

あの日、変わってほしかった姉、
今はもう、いない。

「結局、何になりたかったのだろう。」

少しわかったこと。
同じ毎日を、今より少し好きになれる私になりたかった。

それだけだったのかもしれない。


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