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ジブリ風の世界観で描かれる、王道にして至高のファンタジー「ARCO/アルコ」:レビュー

テアトルの優待が残っていたため消費するため鑑賞しに行ってきました。この作品を優待で鑑賞できたのは、とても有難いことです。


本作を観始めてすぐに感じるのは、かつての私たちが夢中になった、あの「王道ファンタジー」です。浮遊感のある空の描写、草花のざわめき、そして未知の世界への情景と、音楽(久石譲さんかと思うようなスコアになってました)。その手触りはどこかスタジオジブリ風で、特に「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせます。

舞台となるのは、2075年という近未来の美しくもどこか儚い、地球のどこか(作品は、仏映画です)。そこに住む少女イリスと、空から落ちてきた虹色の少年アルコ。イリスは、アルコが虹の彼方に戻るために協力することに。
両親と離れて暮らすイリスには・・・。
途中までは、王道すぎて若干の物足りなさを感じたりもしましたが、物語が進むにつれて大人鑑賞にも耐えうる傑作だと気づきます。
日本アニメの高レベルなビジュアルと比較すると、ややショボイですが間違いなく全世代が物語の世界へと没入できる普遍的な魅力を放っています。各国映画賞を総なめにしているのもうなづけます。

少女と少年の成長、そして「喪失」が教えること

物語の中心は、主人公たちの瑞々しい成長物語です。しかし、本作は単なる「めでたしめでたし」のお話では終わりません。

旅の過程で彼らが直面するのは、避けることのできない「喪失」です。ロボットでありながら不在の両親に変わり、ずっとイリス(と赤ちゃん)の養育を任されてきたミッキ。

そのミッキが二人の窮地を救うシーンは、涙です。これも王道かもしれませんが大切な何かを失い、その穴を抱えたまま、それでも前を向いて歩き出さなければならない。その過程で描かれる「切なさ」の描写が、とにかく秀逸すぎます。このシーンが伏線になり、最後に繋がるのですがそこでまた涙。ミッキの愛、そして両親の愛、非常に尊いものを感じます。

この「切なさ」こそが、大人の観客にとっても深く胸を打つスパイスとなっており、鑑賞後に誰かと語り合いたくなる深い余韻を生み出しています。

「どうやって見つけたの?」涙腺が崩壊する、あの壁画

本作において、絶対に欠かせない屈指の名シーンがあります。それは、死力を尽くして描いたミッキの「壁画」です。

「どうやって僕を見つけたの?」

色んな年代、色んな場所、その中で「どうやって僕を見つけたの?」その問いかけに対し、アルコの両親が答えます。

「壁画を見たんだ。」

探し出すのにものすごく時間がかかったであろうことを、両親と姉の老いた姿で観客は、それを理解します。失った時間の大きさを。
また、近未来な世界で壁画という超アナログな手法、でも千年単位で保存することができる壁画。ミッキはそれを見越して残してくれたのだと。そして、力尽きた(涙腺決壊)。
壁画に描かれたその内容は、イリスへの愛が込められ、アルコに出会うまでが描かれていました。「記憶がなくなって行く・・・」そう言いながら力尽きたミッキ。その思いは、イリスとアルコだけでなく、数十年の時を経てアルコの両親にまで届き、無事再開することができました。ミッキの自己犠牲とその愛によって「見つけた」のではなく、「導かれた」のだと確信させる圧倒的なカタルシスがありました。

登場が少ないですが、恐らくはイリスに好意を寄せているであろうクリフォードの存在も非常にイイ。「リトル・ダンサー」のゲイの友人のようにイリスを応援しているのがとても良い。

観終わった後に広がる、五月晴れのような清々しさ

重厚なテーマや切なさを描きながらも、エンドロールが流れる頃に胸を満たすのは、驚くほど澄み渡った「清々しさ」です。
エンディングでは、イリスのその後の成長が分かるような写真などが描かれますが、イリスは建築の勉強をするために大学に進学し、実際にアルコの住んでいた空中の建物を設計したようです。ここでも、イリスの成長を知ることができ、また憎めない3人組のキャラとも仲良くしている様子が見て取れ、非常に心温まる感じで着地してました。

鑑賞前日には、雨が降ったあとに素晴らしい虹が出てましたが、その世界観まんまなアニメでした。帰り道にはふと空を見上げたくなる。そんな、五月の爽やかな風のような後味がこの映画にはあります。

「ARCO/アルコ」は、私たちが大人になる過程でどこかに置き忘れてきた「純粋な心」を、そっと手元に戻してくれるような作品です。

もし、今度の休日に何を観ようか迷っているのなら、ぜひスクリーンでこの奇跡を目撃してください。


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