デル・トロ推薦「かたつむりのメモワール」:レビュー
可愛さの裏に隠された、深く心揺さぶる物語
テアトルの優待券の期限が7月末に迫っていたので、気になっていたクレイアニメの映画を観てきました。普段、映画料金を考えるとクレイアニメを映画館で観ることはほとんどないのですが、今回は優待のおかげで念願叶っての鑑賞。優待に感謝です!(∩´∀`)∩
この作品はアカデミー賞にノミネートされているだけでなく、あのギレルモ・デル・トロ監督が「大好き!」と公言していると聞いて、きっと私の好みにも合うだろうと期待していました。そして、その期待は裏切られるどころか、予想をはるかに超える感動があり、途中から涙が( ノД`)シクシク…。
可愛らしい見た目の奥に潜む、大人のテーマ
この映画は、その可愛らしいビジュアル(ブサかわいい路線?)に騙されそうになりますが、実際かなりハードなテーマを扱っており、完全に大人向けの作品です。もちろん「下ネタ」も出てきますが、それが決して下品ではなく、むしろ可愛らしく、しかしかなりハードに描かれているのが印象的でした。
物語の主人公は、双子の姉弟であるグレースとギルバート。彼らの人生は、まさに「受難」と呼ぶにふさわしい。
のっけからグレースは、口唇裂(先天性異常)を抱えて生まれてきます。その手術の跡が鼻の下に残っているせいで「うさぎ顔」といじめられます。母親は、双子の出産で亡くなり、大道芸人の父親も「睡眠時無呼吸症候群」で他界するという、幼い頃からの過酷な運命を背負います。別々の里親に預けられた寂しさから、グレースはかたつむりを集めるようになり(収集癖)、部屋はかたつむりで溢れ、引きこもりがちに。また、万引きを繰り返すようになり(クレプトマニアとも説明されていました)、これは現代社会で多く見られる精神的ストレスや、発達障害的な要素も感じさせる設定でした。
かなりニッチな病気設定になっているのは、マイノリティの生きづらさを描きたかったからでしょうか(監督はゲイだそうです)。
一方のギルバートは、目に見える病気はないものの、ゲイであることで虐げられます。時代設定が1970年代のオーストラリアということもあり、「ホモ」という差別的な言葉も出てきました。「火遊びが好き」という設定は、病的な扱いではなく(パイロマニアとは言っていない)、彼なりの寂しさを紛らわす手段だったのかもしれません。
苦難の先に結ばれる、深い絆の物語
グレースはギルバートと離れている間に、優しいおばあちゃんのピンキーと仲良くなり友情を深めますが、彼女もまた認知症を患って亡くなってしまうという、非常に切ない展開に涙が・・・。ただ、彼女との出会いは、グレースにとって間違いなく前に進む原動力になったはずです。
そして、初恋で一目惚れしたケンと結婚するのですが、彼がいわゆる「デブ専」で、グレースを油で太らせて自分好みに仕立て上げていたことが、偶然発見したケンの秘密のスクラップブックから明らかになるという結末も描かれます。
ギルバートもまた、里親がカルト教団だったために、家では毎日りんごの出荷作業を強いられます。そして、その給料は搾取され、さらにはゲイであることで虐げられ、ついには殺されてしまいます( ノД`)シクシク…。
それを手紙で知ったグレースは、深い悲しみに。
産まれてからずっと、苦難の連続だった二人。この物語がどう着地するのか、ハラハラしながら観ていました。
しかし、死んだと思われたギルバートは、実は教会が燃える火事から間一髪逃れて生きていたのです!「お金を貯めていつか迎えに行くよ。」とグレースに約束したギルバート。ついにグレースと再会を果たし、二人で一緒に暮らしていくという(ですよね?)エンディングでした(号泣)。
心温まる細やかな演出と、未来への希望
部屋いっぱいのかたつむりの中に、反対巻きの親友の「シルビア」も一緒にいるという描写や、お互いの火傷の跡を合わせるとそれが笑顔になるという演出は、二人の深い絆を象徴しており、観ているこちらも自然と笑顔になれます。
これまでの人生で多くの苦労を経験してきた二人。これからは二人一緒なら、きっと後戻りすることなく前向きに生きていける(=かたつむり)だろうと、温かい気持ちになれます。
可愛らしいクレイアニメという表現方法で、人生の厳しさや心の機微を繊細に描き出した『かたつむりのメモワール』。8年をかけて制作したという小道具のこまやかさも必見です。その奥深さに改めて感動。甲乙つけがたいですが「ロボット・ドリームズ」と同様、心に深く残る大人向けの作品です。

