③溢れ出ていく歪んだ器──歪んだ器の、根っこ
プロローグ
わたしはたくさん気付いてる。
歪んでいたり、
かけていたり、
汚れていたり、
いくつもの器を抱えて生きている。
人間関係という単語を見るだけで、
嫌気がさすほど疲弊する私。
幸せが目の前にあると、
掴むことをためらい、
安易に手放してしまう私。
でもなぜかと聞かれると、
その構造を理解するには、
あまりにも心が満ち足りてない。
わかっている。
それでも、
同じ場所に戻ってしまう。
第一章:正しさの空気
涙を見せると触発させる、母の怒号。
私の感情より、
母の"機嫌の安定"が先決だった。
自分の居場所全ての、空気を読み、
行動を選ばされていた。
間違えてはいけない、失敗してはいけない。
私は正しい"正しさ"を、
いつもそうあるべきという
前提に囚われていた。
第二章: 私が私を使い捨てた
気づけばその感覚は、
自分の中で解像度が増し、
どのシーンにいても私を覆っていた。
今でも聞こえる、嘲笑うような母の声。
この怪物に支配され続ける私は、
どこまでいってもダメなやつ。
何度も同じところをリピートする、
壊れたレコードのように聞こえる声。
でもそれは、
他者が私にさせてるのではない。
私自身が望んで、
全てを差し出しているのだ。
その構造の本質は、
私自身が私を卑下し、
雑に扱い、
使い捨ての何かとして扱った結果。
そんな私の器が、
満たされる日は来るのだろうか。
第三章:未完了の復讐
私はずっと、
この状況が終わらないことに、
どこか安心していた。
憤り、喪失感、それとも諦めだったのか、
どれも当てはまらないかもしれない。
ただひとつだけ、
はっきりと刻まれているのは、
その感情は私の中で、
強制終了することは、
許されていなかった。
あの声は今も再生される。
気づくと耳のずっと奥の方で聞こえてくる。
「お前はダメだ」
その言葉が、いつも頭の中でこだまし、
みんなが私に向けて放っていた。
この報いを誰かにぶつけたい。
復讐とは、
誰かの心を抉ることではなかった。
本当はずっと、
自分の中で壊れたラジオのように、
繰り返されていた欠落を、
満たしたいだけだった。
でも私の歪んだ器は、満ち足りることはない。
無理やり注いでも、溢れかえって
同じ場所に戻り続ける。
私はようやく気づく。
私はようやく気づく。
これは誰かとの問題を、
棚上げしていたのではなく、
私の中で、
まだ終わっていなかった
“関係の形”だった。
復讐とは、
相手を、ねじ伏せるのではなく、
その構造から降伏することだった。
エピローグ:歪んだ器の、正体
私の器ははじめから、
歪んでいたわけではないだろう。
ただ、出来上がる過程の中で、
外から無理やり握り潰されたのだ。
どう振る舞うべきか。
どう感じるべきか。
どう正しくあるべきか。
その構造の中で、
私は自分の核を作っていった。
気づいたときにはもう、
それが自分の器の姿だった。
でも本当は違う。
それは意図して作り上げたものではなく、
私が長い時間をかけて“適応した形”だった。
歪みではなく、適応。
壊れていたのではなく、
壊れないように作られた構造。
私はそれを、ようやく手放そうとする。
それでもまだ捕まりそうになる。
でも、それに心を許す必要はなくなる。
器はまだそこにある。
ただもう、それに支配される、
か弱い私ではない。
そして私は初めて、
器の力を借りず、“中身としての自分”で、
そこに立っている。
歪んだ器は、
ある日突然できたわけじゃなかった。
▶︎ ② 溢れ出ていく歪んだ器──ペラペラになるまですり減っていった
▶︎ 全部、繋がっている
