純文学|女王様に蝕まれた私〜彼女を深く埋めるまで〜
プロローグ: 心酔
あの頃の私は、
頂点にいると思いこんでいた。
騒がしい場所に好んで行った。
人の多い場所に引き寄せられた。
気づけばいつも、
私の周りには私を慕って人が群がっていた。
お酒と音楽と、
複数の男たち。
高揚していた。
職場では結果を出した。
一目置かれていた。
あれが、心酔だと、
気づいてはいなかった。
第一章: あの声と重なった
仕事も遊びも完璧にこなし、
周りを凌駕した。
そんな私のエネルギーに皆が、
浮き足立っていた頃、
少しずつ何か黒いものが忍び寄ってきた。
だんだんお金の使い方が
おかしくなっていった。
大きな買い物も、払えるかどうかも頭になく、
躊躇なく買い出した。
1人ではたまらず
手当たり次第、一夜を共にした。
明らかに行動が常軌を逸していた。
そんなある日、いつものように睡眠を取らずに出社し、会議でプレゼンをした。
先輩に「それじゃダメだ」と叱られた。
その時脳内に響いた。あの言葉。
「お前はダメだ」
私の頭の中はぐわんぐわんと回り始め、
記憶がなくなった。
あの声だ、頭にこびりつく。
また支配されたんだと知ったのは、
しばらくあとの話。
二章: 言うことを聞かない体
それから私の生活は一変した。
テレアポするにも声が出ない。
あれだけ眠らなくても元気な体が、
毎日石のように重い。
私は会社に行けなくなった。
何もしない毎日。
何もできない毎日。
それは苦しさなのか、悲しさなのか、
寂しいけれど、誰にも会いたくない。
頂点に君臨していた女王様は、
奈落の底に突き落とされたのだ。
言うことを聞かない体をベッドに沈め、
あの姿を懐かしみ、
戻りたいと強く思っていた。
本当は二度と戻ってはいけない世界なのに。
第三章: 温かい液体
私を卑下し、
虫のように扱う怪物から
救ってくれたのは、彼だった。
薬漬けの惨めな私。
でもその惨めさを受け入れるしかない。
それが私の回復の助けになった。
無償の友情、
そんな温かい液体を
私の歪んだ器に注いでくれた彼。
家に住まわせてくれ、
ただ彼のテリトリーに居させてくれた。
それだけで救われた。
彼は決して体を求めることはなかった。
見返りも、私の気持ちさえも、
求めてこなかった。
それが、私にとって最大の愛情だった。
彼の温かいその中で、
私は少しずつ回復していった。
エピローグ: 深く埋める
あれから私は、少しずつ生気を取り戻し、
彼の元を去った。
あれはなんだったんだろう。
夢でも見ていたんだろうか。
やっぱり時々戻りたいと思う時がある。
あの頃のような、
人間離れした私は、
もう現れないかもしれない。
でも私にはいる。
慕ってくれる友人、
信頼してくれる友人、
不完全な私のそばにいる夫。
それだけでよかった。
女王様は、深く深く埋めてしまおう。
二度と這い上がってこないように。
二度と私を愛さないように。
▶ この感覚の根っこ
「お前はダメだ」と言われて育った私が「選ばれる私」を教えてる話
▶ 愛され方を間違えたOSの話
私のOSは母が作った
前提シリーズ①
