短編エッセイ|私たちは、もう友達じゃなかった
久しぶりに地元の友達と会った。
昔は毎日のように一緒にいた。
同じ部活で、
同じ時間を過ごして、
将来のことなんて何も考えずに笑っていた。
会わなくなったのは、
喧嘩したからじゃない。
私が都会へ出て、
帰らなくなったからだ。
一人はシングルマザーだった。
実家の近くで子どもを育て、
一人で家まで建てた。
もう一人は学校の先生だった。
男の子を三人育てながら、
忙しく働いている。
昔から人望があった。
今でもしょっちゅう人が集まってくるらしい。
私は二人の話を聞いていた。
子どもの話。
学校の話。
家の話。
地域の話。
私は相槌を打っていた。
知らない話ではない。
でも自分の話でもなかった。
会話は続いている。
ちゃんと笑ってもいる。
それなのに、
どこか遠かった。
あんなに仲が良かったのに。
昔は話すことなんて無限にあった。
恋愛の話。
部活の話。
嫌いな先生の話。
好きな先輩の話。
コンビニで何時間も立ち話をした。
あの頃は、
沈黙になる方が珍しかった。
今は違う。
話題がなくなるわけじゃない。
ちゃんと話している。
笑ってもいる。
それなのに、
ふと会話が途切れる。
気まずいわけじゃない。
ただ、
昔とは違った。
帰り道、
少しだけ寂しかった。
友達を失ったわけじゃない。
次に帰省したら、
たぶんまた会う。
連絡先だって知っている。
嫌いになったわけでもない。
それなのに。
あの頃の温度は、
もうどこにもなかった。
ふと思う。
本当は私も、
こういう人生になると思っていた。
結婚して。
子どもを育てて。
地元で暮らして。
そんな未来も、
どこかで自分のものだと思っていた。
でも違った。
気づけば、
想像もしなかった場所にいた。
今の人生が嫌なわけじゃない。
むしろ好きだ。
夫もいる。
穏やかな暮らしもある。
それでも。
彼女たちを見ていると、
一度も歩かなかった道を想像してしまう。
もし地元に残っていたら。
もし子どもがいたら。
もし別の人生を選んでいたら。
どちらが幸せかなんて分からない。
比べられるものでもない。
ただ少しだけ。
羨ましかった。
そして少しだけ。
あの頃の私たちが、
懐かしかった。
▶︎ 人生は、選ばなかった道も心に残る。
それでも私は、今の私を少しずつ好きになれた。
『あなたの不完全さの隣にいる。』
