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③「お前はダメだ」の正体が分かった話


▶ 前回の話はこちら
33歳の婚活|「選ばれたい」だけだった私②

第1章:止まっていた


私は止まっていた。
“誰かと生きる”という発想すらなかった。

婚活も恋愛もしないまま、毎日終電帰り。
キャリアは積めてるけど、でもそれだけ。
仕事に没頭する自分をだましながらやっていた。

だけど私にはまだなにもない。

会社の忘年会の最中だ。
父からの電話、弱々しい声。すごく嫌な予感がした。
「お母さんの癌がまた再発した。」「もう長くないって。」

それを聞いてもまだ、私は止まっていた。

でもなぜか、なにか不思議な感情が沸いてきた。
この気持ちはなに?



第2章:サバイバー

母は13年間ガンサバイバーだった。
またか。親不孝ものだ。でも東京の暮らしもキツイしな。
何度かガンが転移するたびに、実家に戻っていた私は、
その度に帰りたくないけど帰らなきゃ、そんな気持ちになっていた。

でもさすがに今回は違う。
初めて感じた、母がいなくなるという不安、恐怖。

年始に帰る予定だったが、ひと足先に私だけ実家へ帰る。
2人きりがまた気まずく感じる。
母は気丈に振る舞う、「こんな早く帰ってこなくてもよかったのに」
私が一旦東京に戻った次の日、母は救急車で運ばれた。

最期のお正月を過ごしたのち、
母は長い入院生活に入った。



第3章:親子ごっこ


奇妙な関係が始まった。
父と母と私の三人。家族団らん?
違う、父はずっといなかった。
“家族”だったはずなのに、他人のように感じてしまった。

親子三人に強烈な違和感を感じていた。
負い目のある父は、最期だけはと、
母の病室に毎日通うことを決めた。

憩いとは程遠い三人の病室は、
テレビの相撲とオリンピックしか話題がなかった。
初めての親子ごっこだったから。



第4章:分かってなかった


最期は家に居たい、そう願う母は、
何かと理由をつけては一時退院していた。

調子のいい時もあった。相変わらず、病人と言い合いもした。

ある日、調子が良くて退院してきたはずの母が、高熱を出した。
私は焦って、薬を取りに病院へと車を走らせる。
家に戻ると母は言った、
「ごめんね、あんたにこんなことさせて。ありがとう...」

その瞬間はなんのことか分かってなかった。
でもそう、後からボディーブローのようにじわじわ押し寄せてきた。
言葉の威力。

その日の夜、大きな音が聞こえた。
慌てて様子を見に行くと、高熱でふらついたのか、
トイレの前で転んで、頭を打ったようだった。
次の日の母は、病室にあった。モルヒネで眠るように逝った。

結局母の願いは叶わなかった。
最期は家に居たいという。

そういえば、よく言ってた。下の世話だけは娘にさせたくない。
逝く前日、私は一度だけ親孝行をした。
母はすごく辛そう だった、嫌そうだった、悔しそうだった。
きっと母は最期まで娘に世話をかけたくない、甘えたくない、そう思っていたんだ。

最期はとても小さくなってた。

あんなに大きかったのに。




第5章:遅れて効いてくる


くらった痛みは、じわじわと、でも効くまでには時間がかかった。
素直になれない私は、なかなか受け入れられなかった。

実家に一人残って落ち着いた頃、その時はやってきた。
ふと母の遺影を見つめた。
あの日の言葉を噛み締め、大きな声で泣いた。



第6章:上書き


私はまだ泣いている。声こそ出ないが、止まらない。

大きな家に一人、感じるのは達成感。
母がいなくなって悲しいけど、
どこか誇らしい。
私にできることは全部できたから。

どこか母に負い目があった、きっとずっと。
その感情は上書きされた。許された。

人間は都合よくできている。
弱い母にさえも苛立ったりしていたのに。
いなくなった途端にいい思い出になるんだから。

でもそれでもいい。
おかげで今、人生に光が差し始めている。


第7章:そんな母娘


死んだからには、次はお墓のこと。
母のすごいところ、徹底して子どもに迷惑かけたくないという信念。
今はとてもありがたい。
お墓も生前に購入済み。
なんせ亡くなる前から一緒に、
「おしゃれな仏壇が欲しい」と買いに行ったくらい。

ある意味残された余命を悔いなく、
徹底して迷惑をかけなかった。
そのお墓にはもちろん父は入らない。
ね、私しかいないでしょ。

母は不器用だったけど、愛情は人一番強く持っていたと思う。
いがみ合ってはいたけど、
私が死んでからも一緒だと知って、喜ぶのかな。

私ももう少し親孝行したいしね。
形の残らない親孝行でもいいでしょ?

母との確執は、私自身で解決しようとしている。


エピローグ


母の呪縛が解けた今、私に何ができる?何がしたい?
やっと、自分の人生を生きていいんだと思えた。
不思議とエネルギーが沸いてくるのを感じていた。

そして、もう一度。
婚活の扉を、もう一度叩く。

だけど今度は、別の自分で。

次は、そのときの話を。



▶ 続きはこちら
 41歳のアプリ婚|成功の予感④



▶︎ 「選ばれる人」の共通点を書いた話「お前はダメだ」と言われた私が、“選ばれる人”の共通点を見つけるまで

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