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『太宰治は、二度死んだ』終章・鎌倉篇(第30話)

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「あっちゃん、ごめんよ」
 岩に寝転んだまま、修治さんが言いました。
「なぜ修治さんがあやまるの」
 わたしも同じように寝転んで、波の音を聞きながら青く澄んだ空を眺めていました。
「僕は、君を地獄へ誘うメフィストフェレスになっちまった」
「修治さんがメフィストフェレスなら、わたしは何かしら?」
「君はもちろん、マルガレーテさ」
 わたしは修治さんの首に両手を回して言いました。
「わたしの可愛いメフィストフェレス様。あなたのお顔、ちょっと間が抜けていて素敵よ」
 わたしは自分から修治さんの唇を求めました。一度だけのつもりが、なんだか物足りなくて、また貪るように唇を求めました。
 そして、もう一度。
 修治さんは何も言わずに、わたしの接吻を受け止めてくれました。
 わたしは狂ったように修治さんに口づけし、「もう一度」と熱に浮かされたように繰り返したのです。
 もう一度。お願い、もう一度……。 

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本作は、講談社が運営する小説投稿サイト「NOVEL DAYS」で、連載時(2020年)に月間1位を獲得した『田辺あつみの恋――太宰治異聞』を加筆訂正、改題したものです。 【本編第1話から第6話までの全文、第30話の一部及び「あとがき:フィクションと事実の狭間で」(一)~(八)を無料公開中!】 ※第7話以降は、一話につき100円 となります。計六話以上読んでいただく場合、マガジン(全39話、580円)の方がお得です。

昭和五年、太宰治(帝大生・津島修治)が銀座のカフェーの女給・田辺あつみ(当時満年齢17歳)と起こした腰越心中事件。本作は数々の資料を基に、…

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