声は想いを詰め込んだ魔法
声は魔法だ。
私たちは声を使って、コミュニケーションをとっている。一人ひとりがもつ声は、何の変哲もないただの声。けれど、その声はいつだって特別なものだ。
想いをのせ、人から人へ飛び立っていくもの。
声はたくさんの想いを詰め込んだ魔法なのだ。
以前、サブカルチャーに関する楽曲のみを演奏する合唱団に所属していた。サブカルチャーといってもジャンルは様々。アニメ・ゲーム・ボーカロイド・声優・VTuberなど多種多用な楽曲を取り扱っている。そして、団員たちも皆オタク。アニメオタクや声優オタク以外にも、鉄道オタクやコンカフェオタクなどたくさんのオタクが所属していた。
ここでは、技術なんか関係ない。
大切なのは、サブカルチャーと歌が好きな気持ち。そして、それを届けようと声にのせることだ。
私たちは想いを届けるためにたくさんの努力をする。
原曲を聴きまくったり。演奏されている方のインタビューを読み漁ったり。有識者が資料作成をしてくれることだってある。原作をみんなで鑑賞会なんてしながら、ワイワイ酒を呑むことも。時には、話し合いながら、曲への理解を深めていく。
それでも、目的は1つだけだ。
どんな想いがこの曲に詰まっているのかを知ること。そして、それを声にのせて表現する。
たったそれだけのことかもしれないが、そこに何時間も時間を費やす。
作曲者、作詞者、歌手、作品のキャラクターなどたくさんの想いが合わさった大切な曲だ。
その想いをすべて拾い上げ、そっと抱きしめて届けていく。
ある時は、プリティでキュアキュアになって。
ある時は、調査兵団の団員になって。
ある時は、シンデレラなアイドルになって。
そして、ある時はサブカルチャーと合唱が大好きなフレンズになって。
私たちは届け続ける。
だって、大好きだから。
そうした声は、キラキラと輝きながらホールを舞う。万華鏡のように。いろんな色に変化をしながら、飛んでいく。
その情景は、本当に愛おしい。
そして、声は届く。
心の中の声も、空気をふるわせた声も。
その声は相手の耳と心に届いていく。
届いた想いは相手の中で一体どうなっていくのだろう。それは、相手にしかわからないけれど、少しだけ行動や言葉に表れる。
曲ごとに推しの色のサイリウムを振ったり、心の中でガッツポーズをしたり、思わず手拍子をしたり、コール&レスポンスをしたり、咽び泣いたり……。
ホールが一体化して、ひとつになったような気持ちになる。空気の温度が上がり、あたたかい雰囲気に包まれる。
そういうのを見ると、「あぁ、少しは伝わったのかなぁ……。」って思う。
その想いもまた、胸に広がってじんわりと染み込んでいく。
それから、演奏会に来られた方にアンケートをお願いしている。
A4用紙1枚。
そこに溢れんばかりの想いが詰まっている。
声が伝わり、文字や言葉に派生する。
想いの共有が進んでいく。
聴き手もまた、たくさんの想いを文字や声にのせてくれる。
1番驚いたのは、飲み会で会った初対面の方に「あのソロ良かったです~~!!」とスライディング土下座された挙句、握手を求められた時だ。
思わず固まってしまったけれど、「ちゃんと届いたんだ。」と思った。
届いた想いは人の心の中にいつまでも残り続ける。
それが堪らなく尊い。
声の無限の可能性を感じる。
でも。
声が絶対に届くとは限らない。
耳を塞いでうずくまって、どうしても聴きたくない時だってある。
嫌だ。そんな事言わないで。聴きたくないよ。
苦しい。苦しい。苦しい。
拒絶したいときだってあるんだ。
そんな時は、聴かなくたっていい。
自分を守ればいい。
それでも、きっと声は寄り添ってくれる。
いつでもそばにいてくれるんだよ。
だって、声は誰しもがもっている素敵なものだから。
声ってすごいんだ。
誰もが持っていて、想いをのせてどこまでも飛んでいく。嬉しい想いも悲しい想いも全部のせて、誰かから誰かへと伝わっていく。
だから、声を出すってわくわくする!
感じ取った想いを解き放ち、それが誰かに伝わる。
それってとってもすごいことなんだ。
たくさんの想いを詰め込んだ魔法。
そして、誰もが使える素敵な魔法。
今日も声という魔法を使って、私たちは人々に想いを届けに行く。
