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朱色のあとに

暑さが少しだけ和らぎ、さらさらとした滑らかな空気が佇む頃。季節の移り変わりとともに緊張感が増していく。微かに残った夏の香りも吹き始めた秋の風もすべてを蹴散らす“全国”を目指す戦いがそこにあった。

もっとも、私はこの季節が1番嫌いだったのだけれど。

他団体を蹴落として当たり前。
絶対に全国大会に勝ち進まなければならない。
それが私たちの背負ったガチガチの重圧だった。朝練、昼練、夜練……。音楽室はピリピリとした痺れそうな雰囲気が充満している。触れたら何かが壊れてしまいそう。息が詰まる。
けれど、行かないわけにはいかない。行かなければ、周りから白い目で見られてしまう。部内の雰囲気がさらに悪くなる。そんなどんよりとした重たい空気の中で歌うのはとてつもなく苦しい。胃がキリキリと痛み、身体はギクシャクしてうまく動かない。音がはるか遠くで微かに鳴り響ているかのように聴こえづらい。
それでも。
身体中を使って息を吸い込み、すべての思考と迷いを捨てて、声を出すあの瞬間は私の確かな救いだったのだ。


結果を出さなければならない。
この文字の羅列にどれだけ踊らされてきたんだろう。誰かのために。賞のために。認められるために。自分のために。いろんな思いが渦巻き続ける。その度にうんうんと唸って、頭でっかちになって、答えの出ない正解を探して迷い続けた。途方のない旅だった。わかったのは、答えなんてものは一生でない。ただ、それだけ。

何かのために行動する。
それも大切な気持ちのひとつ。けれど、そのずっと手前側にぽつんと落し物をしていた。立ち止まって、そうっと拾い上げる。柔らかくて強く握ると、壊してしまいそう。目をつぶってしまうほど眩しいくせに、ほんのりあたたかい。私たちは知っている。この懐かしさにも似たふわふわとした気持ち。
それは、表現することが好きという気持ちであり、楽しいという気持ちであり、やりたい!という気持ちだった。まっさらでぴょんぴょんと弾むような気持ち。ワクワクして、思わず笑顔になってしまう気持ち。私たちはいつだって、そこから旅をスタートしたはずだ。

澄み切った風があざやかな朱色に染まった葉っぱを揺らす。ひらひらと葉が散っていき、いつかは剥き出しの木々が佇む。でも、それで終わりなんかじゃない。楽しい……好き……やりたい!その気持ちが栄養になって、また木々を育てていくのだから。





こちらの企画に参加させていただいています。
7月くらいから、コンクールの結果を見かけるようになりました。今ではすっかり遠のいていますが、高校まではコンクールに積極的に参加していました。
コンクールは嫌いじゃないのですが、どうにも部内の雰囲気に馴染めず……当時は苦しかったです。それでも、あの場所に居続けたのは音楽や表現が好きだったから。
“好き”や“楽しい”の気持ちをいつだって大切にして表現をしていきたいです。

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