かぼちゃのイタズラ
こいつをどうしてくれようか。
厄介なブツを眺めながら、小さくつぶやく。まったく、誰がこんなイタズラを……。
目の前には小さな袋がひとつ。無機質な透明な袋に真っ赤なリボンが眩しい。そこには小さめのまあるいクッキーが何枚か入っていた。
甘いものは、好きだ。だから、クッキーを貰うのは問題ない。
クッキーも、好きだ。しっとりとした柔らかクッキーもザクザクとした食感のクッキーも。このクッキーはなんだか見慣れない種みたいなものが入っているけど……まぁ、問題ない。
問題なのは、誰がくれたかわからんクッキーだということだ。
気持ちのよい秋風と一緒に登校し、靴箱を開けた瞬間にこいつと目が合った。なんだ、これ。手にとって眺めてみると、クッキーと一緒にルーズリーフの切れ端が入っていた。袋の外側からでも読めそう。そっと顔を近づける。
“trick or love”
薄く消え入りそうなまるっこい字で書かれていた。イタズラか愛か……。ちょっとお洒落に訳すなら「愛をくれなきゃイタズラしちゃうぞ」といったところか。なんなんだ。誰に愛をあげたらいいんだ。というか、これ自体がイタズラだろうに。捨てるのも後味が悪いので、鞄に突っ込んだまま頭の中から消えていった。
「それ、なぁんだっ?」
明るい芯の通った声が僕の背中にぶつかった。そのままの勢いでクッキーを床に落とす。僕の手から離れたそれは、細長く整った彼女の指につまみ上げられた。……サイアクだ。
「クッキー、貰ったの?」
貰った?貰ったが正しいのか?確かに靴箱に入ってはいたけれど。誰からのものなのかわからないけれど。言葉が喉元にひっかかって出てこない。曖昧に笑うと「ふぅん。」と言いながら、袋を開けだした。は?何だよ、急に。
「おい、俺の……」
「えっ……貰ったわけじゃないんじゃないの?」
そのまま、クッキーが彼女の唇に触れる。
彼女はいつもそうだ。自由気ままに僕の周りをうろちょろする。眩しいくらいに明るい笑顔を浮かべながら、僕にちょっかいをかける。
でも、決して何も言わない。踏み込まない。僕だってそう。この関係が壊れてしまうくらいなら──。
「ねぇ、おいしいよ!かぼちゃのクッキー!」
手渡されたクッキーをよく見ると、かぼちゃの種が散らばっている。そうか、この種っぽいものはかぼちゃだったんだなぁ……。
僕が食べるのを待ちきれなかったのか。彼女がクッキーを僕の唇に押しつける。ザラっとした感触とかぼちゃの微かな香りが鼻に抜けた。
彼女を見るといたずらっぽい笑みを浮かべていた。ゆっくりと彼女の唇が動く。
「trick or love!」
こちらの企画に参加させて頂きました!
約1年ぶりのショートショートです。創作もだけど……。ふっと浮かんだので書いてみました。
いいなぁ、こういう女の子好きなんだよなぁ。と思いながら書きました。彼女を書くの楽しかったです!
小説書くのも、いいですね!!
灯火さん、ありがとうございました!
