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【アート巡り記】ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―@東京都庭園美術館 2026.8.2訪問

 本展フライヤーのビジュアル写真がとても雰囲気があって素敵で、うっかり自分もそんな写真が撮れないかと思い、OM-D E-M10MarkIIにM.ZUIKO DIGITAL14-42mmレンズを装着して持っていった。最近は利便性からすっかりiPhoneのカメラばかりに頼っていたが、またちょっと 10年前に買った一眼レフカメラで撮影してみようかと思い始めたところである。まあ、カメラに慣れる意味もあって気軽に撮れればと思った次第。ちなみに本展フライヤーはビジュアル違いで3種もあり、贅沢な限りである。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2026/07/lucierie_teien_flier-A_final.pdf

https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2026/07/lucierie_teien_flier-B_final.pdf

https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2026/07/lucierie_teien_flier-C_final.pdf

 展覧会に行って、撮ることに夢中になってしまうのはいけないと常々思っているのだが、被写体がフォトジェニックだとやはり撮りたくなってしまう。カメラのレンズを通して陶芸作品を見ていると、土という素材と焼成の具合と釉薬の調合によってある程度計算されて現れ出ているだろうその質感と色あいに、偶然が引き起こす絶妙なニュアンスももうひとつ加わっているのだとわかる。この微妙なニュアンスは、私の凡庸な撮影テクニックと、ライティングされた展示空間という場所では正確に写し取ることができない。今回も最初はいつもiPhone で撮るように観覧記録として撮ろうとしていたが、せっかく一眼レフで撮るのだから、それはもう写真という私の作品であると割り切ることにした。

 陶芸には疎く、ルーシー・リー(1902-1995)という陶芸家のこともまったく知らなかった。オーストリアのウィーンで生まれ、ウィーン工芸美術学校で陶芸を学び、作家としての道を歩んでいたものの、1938年に戦争で亡命を余儀なくされ、イギリスのロンドンに渡ったという。ロンドンでバーナード・リーチ(1887-1979)に出会い、その影響を受けるも、やがて独自の作風を確立していく。バーナード・リーチは日本の民芸運動と深く関わった陶芸家であったため、ルーシー・リーもまた東洋の陶芸と出会うことになる。

 「第1章ウィーンに生まれて」では、ウィーン時代のルーシー・リーの初期作品と、同時代の作家やデザイナーの作品が紹介されていた。この時代のウィーンの代表的作家はウィーン工房創設者のひとりであるヨーゼフ・ホフマン(1870-1956)。そのホフマンが造形し、上野リチ・リックスが装飾を施したリキュールグラスや、デザイナーのユッタ・ジカ(1877-1964)のティー・コーヒーセット、バウハウスを牽引したオットー・リンディッヒ(1895-1966)のティーセットなど、この時代のウィーンやドイツのデザインは実験的で洗練されている。そのなかにあってルーシー・リーの作品もまた、独特の存在感を放っている。

上野リチ・リックス(装飾)/ヨーゼフ・ホフマン(形) リキュールグラス 1929(1917形/1929装飾)
撮影:Apple iPhone 15 Pro
ユッタ・ジカ ティー・コーヒーセット c.1901-02
撮影:OM-D M10II
左:オットー・リンディッヒ ティーセット 1928
右:オットー・リンディッヒ ココアポット 1920-24/蓋付水差 1922
撮影:Apple iPhone 15 Pro
ルーシー・リー 鉢 c.1926
撮影:OM-D M10II

 イントロダクションとして、旧朝香宮邸の大広間と大客室にはルーシー・リーの代表作と言われる作品が展示されていた。壁面装飾と展示作品とのコラボレーションがこの庭園美術館の展覧会の見どころでもあるのだが、自然光が入る空間で撮影しようとすると逆光になったり順光になったりと、露出の調整がなかなか難しい。こういうところでは勝手に調整してくれるスマホカメラやオートモードがありがたいと思う。

ルーシー・リー 
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II


 「第2章 ロンドンでの出会い」は、バーナード・リーチの作品が多く紹介されていた。ロンドンに渡ったころのルーシー・リーの作品は、かなりリーチに寄った作風になっている。

バーナード・リーチ ティーセット c.1920-25
撮影:OM-D M10II
バーナード・リーチ 蛸図大皿 1925
撮影:Apple iPhone 15 Pro
ルーシー・リー 蓋椀 1940年代
撮影:OM-D M10II

  そのなかで、ルーシー・リーらしい釉薬の研究がなされていたのがボタンの制作だったようだ。戦時下のロンドンでは陶器製作は高級な産業であり不要であるとされたため、当初はガラス製のボタン制作をしていたが、その後自身の工房で陶製ボタンを制作するようになったという。陶製ボタンは戦後も人気を博し、アシスタントも雇うほどになり、後の制作パートナーとなったハンス・コパー(1920-1981)もボタン制作を手伝っていた。戦時中の陶製ボタンは、デザイナーの三宅一生(1938-2022)がコレクションに取り入れたことでも知られている。

ルーシー・リー ボタン 1940-50年代
撮影:OM-D M10II

 ハンス・コパーの作品も多く展示されていた。ルーシー・リーとの共作もあったが、コパー作品はまた独特の作風である。形状はリーの作品に似ているようにも思うが、質感や色あいの出しかたはむしろリーチに寄っているのではないかと思った。ロンドン風と言えばいいのか、やはりちょっと武骨で男性的な感じがする。

ルーシー・リー/ハンス・コパー コーヒーセット c.1955
撮影:OM-D M10II
ハンス・コパー
撮影:OM-D M10II
ハンス・コパー 壺 1968
撮影:OM-D M10II


 「第3章 東洋との出会い」では、日本の濱田庄司とリーチとその妻ジャネット・リーチの作品などが参照されていた。

 ルーシー・リーの作品にも東洋のデザインが取り入れられ、ティーポットの取っ手を竹製にしたものなどがある。竹製の取っ手は日本の友人が作ったものだそうだ。

左:ルーシー・リー ティーポット c.1965
中央:ルーシー・リー 鉢 1968
右:ルーシー・リー 鉢 c.1968
撮影:Apple iPhone 15 Pro
ルーシー・リー ティーポット c.1965
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー 鉢 c.1968
撮影:OM-D M10II


 「第4章 自らのスタイルへ―陶芸家ルーシー・リー―」では、1970年代以降にリーが自身の作風を確立した作品群がたっぷり展示されていた。形も質感も色あいも、自在に自身のものにしたという感じがよく出ている。陶芸とはこんなにさまざまな微妙な色あいが出せるものなのか。ほとんど作陶をしたことがない私には魔法のようにしか見えなかった。

ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II
ルーシー・リー
撮影:OM-D M10II


 質感や色あいそして不安定なやや歪んだ形状は非常に特徴的で、なんとか肉眼で見たままを写真に残せないかと思ったものの、やはり難しかった。だから最後にもう一度回って、肉眼にその姿を焼きつけることにした。思うような作品ができるまで、いくつもの試行錯誤を重ねたに違いなく、何度見ても美しいものは美しかった。自分が思い描いたところにに辿り着こうとする精神の高みまで感じられ、素晴らしい作品を数多く残した人だと思った。

参考:
東京都庭園美術館ホームページ https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/lucie-rie/

会期 2026年7月4日(土)〜9月13日(日)

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