【67時間目(変人の言動を簡単に今すぐ実体験する方法を紹介します!!)】
「俺がいちばん正しい」
—配信に凸る"変人"たちの脳科学ー
ニコ生・ツイキャス・Kickなどの配信サイトで「神回」が生まれる本当の理由
まずは、ここまで読んでくださりありがとうございます。読み疲れたかもしれませんので、今回はいつもと少し違うテイストでお届けします。
このシリーズ(25話)はずっと、脳科学・精神医学の専門的な内容を硬めの文体でお伝えしています。
しかし今回の番外編だけは、少し違う書き方にしています。
難しい専門用語はできるだけ日常の言葉に置き換えながら、最後まで気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
さて、本題に入りましょう。みなさんは「コレコレさん」という配信者をご存じですか?
私は個人的にかなり以前からコレコレさんの配信に注目し視聴しています。
なぜなら、彼の配信中に「〇〇〇」が登場してくるからです。(このあと説明します)
彼の配信の最大の特徴は「課題を抱えたリスナーが相談や凸(とつ)してくる」スタイルにあります。
一般的な配信者が視聴者とコメントでやり取りするのに対し、コレコレさんはリアルタイムで音声や動画を繋いで直接会話します。
相談を聞いたり、トラブルの仲裁をしたり、「ちょっと待って、それはおかしくないですか?」と突っ込んだりする——そんなスタイルです。
そしてこの配信に、「独自の正論」を持った人たちが次々と集まってきます。
「私の彼氏が絶対に悪い、なぜなら〇〇だから」
「上司がパワハラをしている、その証拠は▽▽だ」
「世間の常識がおかしい、本当は△△が正しいんだ」
そう力強く主張してくる人が後を絶ちません。
そして——これが面白いところなのですが——そういう回がなぜか「神回」になるんです。
コメント欄がざわめき、切り抜き動画がYouTubeに上がって再生数が伸び、「あれ見た?あの人やばかった」とSNSで話題になる。なぜ"やばい"人が来ると神回になるのか——そこに、このシリーズ25話分の答えが詰まっています。
「健常者には理解できない正論」って、どういう状態?
少し立ち止まって考えてみてください。「健常者には理解できない正論」とは、いったいどういう状態なのでしょうか。
たとえば、妄想性パーソナリティ障害(このシリーズの第1話)の方が凸してきたとします。「職場の全員が私を嫌っていて、陥れようとしています。その証拠に、先週の会議で誰も私の意見に賛成しませんでした」——そう話してくるわけです。
聞いた瞬間、「え、それは証拠になるんでしょうか?」と感じますよね。でも本人の中では、これが完全に筋の通った話なんです。「全員が私を嫌っている→だから反対した→それが証拠だ」というロジックが、本人の頭の中では揺るぎなく成立しています。脳の「脅威を感じるセンサー」のような部分が過剰に反応し続けている状態で、周りの人には中立的に見える出来事が「敵意のサイン」として処理されてしまっているんです。
あるいは、積極奇異型のASD(第13話)の方が相談を持ちかけてきます。「コレコレさん聞いてください。職場でいつも無視されるのですが、私の話が正しすぎて周りが理解できないからだと思います。昨日も1時間かけて効率改善の提案をしたら全員に無視されました。私は間違っていますか?」
提案の内容は確かに論理的で正しいかもしれません。でも「1時間話した」「みんな聞いていなかった」——この段階で視聴者は「あ、そりゃそうだよね」と感じます。
しかし本人にはその気づきがない。「相手が飽きてきたら話を終わりにする」という、言葉にしなくても伝わるはずのルールが処理されないんです。
これが「健常者には理解できない正論」の正体です。論理の内側は一貫していて、本人はまったく本気です。
ただ「その論理の前提が、周りと共有されていない」——だから噛み合わない、だから"やばい"と見えてしまう。
なぜ、彼らは配信に凸ってくるのか——5つの理由
ここからが本題です。なぜパーソナリティ障害やASDを抱えた方々は、ネット配信に凸ってくるのでしょうか。脳科学と心理学から、5つの理由が見えてきます。
【理由①】リアルの人間関係より「安全」だから
対人関係に困難を抱えている方にとって、配信への凸は「相手の顔が見えない」「物理的な距離がある」という安全弁があります。第8話で扱った回避性パーソナリティ障害の方は、リアルでの拒絶を極度に怖れています。
でも電話なら「最悪、切ればいい」という逃げ道がある。第5話の境界性PD(BPD)の方は対人関係の感情の波が激しいですが、画面越しなら爆発しても「怖い」と思われる程度で済みます。配信はゼロリスクではないけれど、リアルよりコストが低い対人接触の場なんです。
【理由②】「わかってもらえる場所」を探しているから
コレコレさんの配信の大きな特徴のひとつが「どんな話でも聞く」というスタンスです。
これが、普段の生活で「話を聞いてもらえない」「理解されない」と感じている方を引き寄せます。
第9話の依存性PDの方は「誰かに認めてほしい」という欲求がとても強い。第7話の自己愛性PDの方は「自分が正しいと言ってほしい」。
第13話のASD積極奇異型の方は「わかってくれる人に出会いたい」。
コレコレさんの配信が、そのニーズを満たす最後の窓口のようになっているんです。
【理由③】「正しさ」を判定してもらいたいから
凸してくる方の多くは、「自分は正しいですか?」という問いを持ってきています。
妄想性PDの方は「私の見ている現実が正しいと言ってほしい」。
OCD気質の方は確認行為の延長として、配信者に「私の心配は正当ですよね?」と確認を求めます。
これは承認への欲求でもありますが、もっと深いところでは「自分の認知が正しいという保証」を外部から得ようとする行動です。
頭の中の「本当に大丈夫か?」という不安を、外からの確認で解消しようとする——そういう仕組みが働いています。
【理由④】「舞台」があるから
第6話の演技性パーソナリティ障害の方にとって、数千人・数万人が視聴している配信は最高の舞台です。
注目・同情・驚き——これが一度に大量に得られます。
自己愛性PDの方は「自分の主張を多くの人に聞かせる場」として使います。
第25話で扱う間欠爆発症のように衝動性が高い方は、怒りのエネルギーをぶつける出口として使います。
「公開されている場所」であることが、こういったタイプを特に引きつける理由になっています。
【理由⑤】孤独の出口だから
これが、おそらく最も本質的な理由です。
回避性PD・統合失調質PD・ASD孤立型——これらの特性を持つ方は、多くの場合、日常的に深い孤独の中にいます。
人と関わりたいけれど関わり方がわからない、あるいは関わることが怖い——でも孤独にも耐えられない。
そのジレンマの中で、「凸」が「人と繋がれる最後の手段」として機能しています。「どんな人でも話を聞く」というコレコレさんのスタンスが、どこにも繋がれなかった人のための最後の扉になっているんです。
なぜ「神回」になるのか——見ている側の話
視聴者側の話もしておきましょう。なぜ「独自の正論を持つ人」が来ると神回になるのでしょうか。
まず「自分と比べてしまう」からです。
心理学に「社会的比較」という考え方があって、人は自分の考えや行動が「普通かどうか」を無意識に周りと比べています。
「あの人の言っていることが、よくわからない」と感じた瞬間、「自分はちゃんとしているんだな」という安堵感が生まれます。これは悪意があるわけではなく、脳が自然にやっている比較なんです。
次に「次に何が来るかわからない」からドキドキするということがあります。
脳は「予想外のこと」に最も強く反応するようにできていて、「この人、次に何を言うんだろう」「コレコレさんどう返すんだろう」という予測不可能な展開が、「見続けてしまう」状態を作り出します。ギャンブルのスロットと同じ仕組みですね。
そしてもうひとつ——「コレコレさんが代わりに突っ込んでくれる」から気持ちいいという側面もあります。
「それはちょっと違いますよね?」とコレコレさんが言う瞬間、視聴者は「そうそう!言いたかったのはそれ!」とスッキリします。
自分ではうまく言えないこと、言える立場にないことを、配信者が代わりに言ってくれる——これが神回としての体験になっているんです。
でも、笑っていいのでしょうか——もうひとつの視点
ここで少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。
「神回」として消費されるとき、凸してきた方々は「笑いもの」になっていることが多いです。切り抜き動画のタイトルは「やばい人が凸してきた」「論破された変な人」——そういう枠組みで拡散されます。
でもこのシリーズを読んできた方なら、もうおわかりですよね。
彼らの多くは「悪意のある人」ではありません。
脳の特性と、これまで生きてきた環境の組み合わせの中で形成された考え方のパターンを持っていて、それが多数派の方々とズレているだけです。
「やばい」と感じるその行動の背景に、虐待・孤立・長年の誤解の積み重ね——そういうものが存在することが多いんです。
笑うのは自由です。
見ていて面白いのも事実ですし、コレコレさんの配信が「社会の縮図」を可視化しているという意味でも価値があります。
普段は見えないところで孤立している方々が、あの配信に引き寄せられてくる。
ただ、笑った後に「なんでこういう人が生まれるんだろう」と一瞬でも考えてみると——そこからが本当の「理解」のスタートだと思います。
このシリーズで学んだことを踏まえ、ツイキャスやKick、ニコニコ生放送などを鑑賞してみてください。
最後に、シンプルなお願いをして締めくくりにします。
変人の脳科学シリーズで扱う25種類の特性——妄想性PD・ASD各タイプ・BPD・自己愛性PD・反社会性PD・DID・OCD……これらを「特殊な事件の犯人たちの話」として読まれる方もいるかもしれません。
でも実は、こういった特性を持つ方々はあなたのすぐそばにいます。
そしてその方々が「言葉」として現れる場所のひとつが、ニコ生・ツイキャス・Kickのような配信プラットフォームです。
コレコレさんの配信、あるいはYouTubeの切り抜き動画を一度見てみてください。「あ、これは第○話で読んだ話だ」と感じる瞬間が、きっとあります。
論理は通っているのに話が噛み合わない——反社会性パーソナリティ障害かもしれません。
一方的に話し続けて止まらない——ASD積極奇異型かもしれません。
「自分だけが正しい、周りが全員おかしい」——妄想性PDか自己愛性PDかもしれません。
知識として「知っている」ことと、実際に「生きている人間」として視聴し、リアルに体感することは、全然違います。でも両方を組み合わせたとき、「理解」はぐっと深くなります。
「やばい」と思いながらも、その人の背景に「何があったんだろう」と少しだけ想像できるようになっていたなら——このシリーズをお読みいただいた意味があったということだと思います。
息抜きにお付き合いいただき、ありがとうございました。
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