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【83時間目】The REAL ORDINARY DAYS

—25話を旅して、あなたの「人を見る目」はどう変わったかー

まず、完走おめでとうございます

25話、ついに読み切りましたね。本当にお疲れ様でした。

「妄想性パーソナリティ障害」から始まり、「間欠爆発症」で締めくくるまで——正直、けっこうヘビーな旅だったと思います。

読んでいて、「こんな人、実際にいるの?」と思った回もあれば、「あ、これ職場の○○さんに似てる……」とゾクッとした回もあったかもしれません。

でも、それでいいんです。むしろ、そういうリアルな感覚を持ちながら読んでくれた方こそ、このシリーズの本当の意味を受け取ってくれた人だと思っています。

今回はちょっと息抜きも兼ねて、「このシリーズで私たちは何を手に入れたのか」を、肩の力を抜いてゆるく振り返ってみましょう。

25話で出会った「変人」たちを思い出してみる

改めてざっと眺めてみると、なかなかの顔ぶれが揃っていましたよね。

第01話のスターリンを彷彿とさせる妄想性パーソナリティ障害に始まり、演技性・自己愛性・反社会性・境界性・シゾイド・シゾタイパル・依存性・回避性・強迫性——パーソナリティ障害10種を一気に学んで、

続いてASDの5つのサブタイプ(孤立型・受動型・積極奇異型・尊大型・大仰型)まで丁寧に分解しました。

さらには解離性同一症(DID)、妄想症、双極性障害Ⅰ型、統合失調症、強迫症(OCD)、代理ミュンヒハウゼン症候群(FDIA)、窃盗症、放火症、虚偽性障害、そして間欠爆発症(IED)まで。

これだけの顔ぶれを「ひとつひとつ」学んできたわけです。
われながら、なかなか濃い旅でした。正直、大仕事でした。

「知っている」と「知らない」では、見える世界が違う

突然ですが、ひとつ質問をさせてください。

あなたの職場や日常に、「なぜかいつも人間関係が壊れていく人」はいませんか? 
本人は至って真面目で、悪意もない。
むしろ「自分は正しいことをしている」と信じている。
でも、周囲との摩擦が絶えない——。

このシリーズを読む前なら、「性格が悪いのかな」「育ちの問題かな」と漠然と感じていたかもしれません。

でも今のあなたは違います。
「ああ、もしかしてASDの積極奇異型かもな」「強迫性パーソナリティ障害っぽい完璧主義が出てるな」と、ひとつの「仮説」を立てることができる
この違いは、思っているよりもはるかに大きいんです。

「仮説を持てる」ということは、相手の行動が「予測可能になる」ということでもあります。
予測できる相手には、感情的に振り回されにくくなる。
また始まった」と内心思いながらも、表情は穏やかに、声のトーンは落ち着いたまま対応できるようになる。
これが、このシリーズで手に入れた最大の武器だと私は思っています。

感情的にならない、というのは「冷たくなる」ことじゃない

誤解しないでほしいのですが、「冷静に対応できる」というのは、「相手を見下す」とか「感情を切り捨てる」ということじゃありません。
むしろ逆です。

相手の行動の背景にある神経科学的・心理学的なメカニズムを「知っている」から、「この人はわざとやっているわけじゃないな」「この行動パターンには、こういう脳の特性があるんだろうな」と理解した上で接することができる。
それは、根拠のある優しさです。

間欠爆発症(IED)の第25話で触れたように、「キレる人」の多くは「キレたくてキレているわけではない」。
扁桃体の過反応と前頭前野のブレーキ不足という、神経学的な問題を抱えています。それを知っていれば、怒鳴られたとき「この人は今、脳のブレーキが間に合っていない状態なんだ」と解釈できる。
感情的に受け止めずに済む。これが、知識を持つことの実際の力です。

「変人」は遠い世界の話ではない

このシリーズを通じて、もうひとつ気づいてほしいことがあります。

「変人の脳科学」というタイトルから、「特殊な犯罪者や極端な人たちの話でしょ」と思っていた方もいるかもしれません。
でも読んでみてどうでしたか? 
びっくりするほど「身近な話」が多かったんじゃないでしょうか。

依存性パーソナリティ障害は「頼りすぎる恋人」の話。
回避性パーソナリティ障害は「傷つくのが怖くて引きこもる人」の話。
強迫症(OCD)は「手を洗い続けるオフィスワーカー」の話。
窃盗症は「万引きが止まらない主婦」の話。

「ちょっと変わった人」と「障害レベルの変人」の間には、実は連続したグラデーションがあります。
診断名がつくかどうかの違いは、「程度」と「本人の苦しみ・周囲への影響」の大きさだけで、根本にある脳のメカニズムは地続きです。
だからこそ、これを学ぶことは「自分自身を知ること」にもつながるんです。

マインドセット、完了です

さて、25話を通じてあなたが手に入れたものを整理してみましょう。

まず「分類する力」
目の前の人の言動を見て、「どのパターンに近いか」という仮説を立てられるようになりました。

次に「距離を測る力」
「この人とはどう関わるのがベストか」を、感情ではなく知識ベースで判断できるようになりました。

そして「動じない力」
予測できない行動に直面しても、「脳科学的にはこういう状態だろう」と一歩引いて見られるようになりました。

これら三つが合わさって、「人を見る目」というマインドセットが完成します。
一度これが身につくと、人間関係のストレスは驚くほど軽くなります。
「なぜあの人は……」という消耗する問いが、「ああ、そういう脳なんだろうな」というフラットな観察に変わるからです。

次章予告——もっとディープな闇へ

さて、ここからがお楽しみの予告編です。

変人の脳科学シリーズ第一章は、パーソナリティ障害・発達障害・衝動制御障害を中心に展開しました。
でも実は、まだまだ語り切れていない「変人」たちがいるんです。

たとえば——「シリアルプーパー」という言葉、聞いたことありますか? 連続して公共の場や他人の所有物に排泄行為を繰り返す人たちのことです。
学校の教員であれば、校舎内のトイレの個室の壁に排便が塗りたくられている場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
または、わざと排便を流していない状態の便器を見たことはないでしょうか。

ニューヨークの地下鉄やロサンゼルスのビーチ周辺で社会問題になっており、その背景には肛門的執着や反社会性の特殊な発現形態があります。
「なぜそんなことを?」という問いに、脳科学はちゃんと答えを持っています。

また、「盗撮に溺れる人間」の話も避けては通れません。
性的興奮を伴う場合だけでなく、「見ること」への強迫的な衝動として発現するケースもあり、その神経科学的な背景は意外なほど複雑です。
報酬系の暴走なのか、支配欲の発現なのか、それとも全く別のメカニズムが走っているのか——深掘りしてみると、かなり興味深い世界が広がっています。

他にも、「誰かを尾行し続けることをやめられない人(ストーキング障害)」、「嘘をついて自分を被害者に仕立て上げることに快感を覚える人(虚偽被害申告症)」、「自分の臭いへの過剰な恐怖から生活が崩壊する人(自己臭恐怖症)」など、まだまだ語るべき「変人」たちが列をなして待っています。

少々、自分の頭の中を整理整頓した上で、さらにディープな闇と、さらに濃い脳科学を携えて第2章としてお届けする予定です。

最後に——あなたはもう、一人じゃない


25話の締めくくりにこんなことを書くのも少し照れくさいのですが、正直に言います。

このシリーズを通じて、「変人」と呼ばれてきた人たちの内側を一緒に覗いてきた私たちは、もう少しだけ、人間というものの「複雑さ」に対して寛容になれたんじゃないかと思っています。

理解することは、許すことではない。
でも、理解することで、怖れや嫌悪は、少しだけ「観察」に変わる

そしてその観察が、人間関係の無駄な消耗を減らし、自分自身を守ることにもつながっていく。

さあ、第二章をお楽しみに。
次はもっと深く、もっと予想外の場所へ潜っていきますよ。

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