小中学生の英語学習、究極のインプットでうまくいく、イマージョンの前にできること
小中学生の英語学習は「インプット」の取り組みで加速します。
インプットとは、英語を聞いたり読んだりすることですが、ここでは、英語を脳に取り込み、それを瞬間的に処理することまでをさしています。
単語/構文を覚え、語彙/文法/読解問題を解いて進める「学習」は、インプットではありません。
学習は必要であり、おろそかにするものではありません。ただ、学習を「実践」につなげるには、英語を受け取ってすばやく処理することが必要です。
これには、自分に合ったレベルの英語コンテンツを使って、英語を処理する練習を積むしかありません。この取り組みが「インプット」です。
※ 今回は、「英語学習者」の皆さんに向けて書いています。すでにインプット中心の学習を進めている方や「英語育児/おうち英語」に詳しい皆さんには物足りない内容になりそうです。が、せっかく来ていただいたので、「はじめに」と「おわりに」の部分だけ覗いていっていただけたら嬉しいです。
はじめに:超シンプル英語育児14年 =「究極のインプット」生活14年
いつも「英語育児」「英語習得」について語っている人が「英語学習」を取り上げるなんて、と驚かれたかもしれません。
でもこれから書こうとしていることは、英語育児そのものの話でもあります。
といいますのも、「英語育児/おうち英語」とは、見方を変えると、
英語という言語を「インプット」する生活を送ること、であり、
「イマージョン」(英語環境で英語に浸る)の前に、家庭でできることを凝縮した活動
であると言えるからです。
子どもたちが中学生になり、母親として、学校の英語教育に触れる機会が増えました。自分の英語育児との違いを考えさせられます。
自分は子どもたちと英語インプットの取り組みを細く長く続けてきて、その絶大な効果を感じています。この経験から、小中学生の英語学習者がそれを取り入れるために必要なことを考えていきます。
(Minnie家の英語インプット生活については、こちらの【Leah & Lucas プロフィール】に簡単に触れていますので、よろしければご覧ください)
英語が分かるようになるには「分かる練習」をする
英語学習と言えば、小学校高学年に徐々に始まって、中学以降は、教科書、単語帳、文法書、問題集を使うことがデフォルトのようです。単語暗記や穴埋めクイズが手軽にできる英語学習アプリも人気のようです。仮にこのような内容の「学習」ばかりを続けていったら、どうなるでしょうか。
単語をたくさん覚えた先にあるのは、単語をたくさん知っている状態です。
問題をたくさん解いた先にあるのは、問題を解くことが上達した状態です。
目先の試験のためなら、手っ取り早い方法かもしれません(実際、中学生になると、常に試験が課される過酷な状況があったりします)。でも、目指している未来が試験のその先にあるとしたら、「学習」だけでは足りません。
ならば「実践」を重ねようと、学習に「コミュニケーション」「アウトプット」の取り組みを加えることも定番になっています。けれども、アウトプットは自分が持っているものを外に出すことです。十分な英語のベースがなければ、なかなか出せるものではありません。
先生が英語で話していることがそもそも理解できなかったり、自分が英語を発するときも、「学習」して用意したものを出す状態から抜け出せなかったりする状況があるようです。
本当に必要なことは、「コミュニケーション」「アウトプット」の前に、インプットで英語のベースを作ること、そして、それによって英語を聞いたり読んだりしたときに、英語が「スッと入ってくる状態」「ラクに分かる状態」になること、ではないでしょうか。
この状態になるには、知識を増やして「分からない」部分をなくそうとするのではなく、「分かる練習」をします。いま持っている知識と経験で、英語を受け取って処理することを繰り返すのです。
これが「インプット」です。母語では当たり前にやっていることを英語でもするということです。このことが「外国語」を自分の言葉にする第一歩になります。
1)英語ビギナーこそインプット
そうはいっても、英語を聞いたり読んだりするとき、「分からない」部分が気になると思います。
自分のレベルに合った英語コンテンツを選んでも、知らない表現、分からない部分は出てきます。でもここが踏ん張りどころです。
このコンテンツは自分にはまだ早い、もっと学習してからにしようと、諦めないでください。分からない部分を潰していく取り組みは、学校の「学習」で十分にやっています。インプットの取り組みのときまで、それをやろうとしないことです。
代わりに、ざっくりと全体の内容をつかむことに専念します。それを続けていくうちに、少しずつ、でも着実に、処理が上達していきます。時間はかかりますが、理解が深まっていきます。
インプットは、上級者だけがする取り組みではありません。ビギナーこそ、シンプルな内容のものを使って、音からも、文字からも、英語という言語を受け取る練習を続けます。
例えるなら、ボール遊びをしたり、歌を歌うときのように、そのことを脳に慣れさせていくのです。
2)何をインプットするか
小中学生の学習者が取り組みやすいのは、文字を見ながら音声を聞く、絵や映像を見ながら音声を聞く、といった組み合わせの形だと思います。
目的は「英語を脳に取り込み、それを瞬間的に処理する」ことです。はじめは感覚をつかむために、すでに内容が分かっているものや、容易に理解できそうなものを使うといいでしょう。(「学習」済みのコンテンツか、初見のコンテンツを使うなら、いま学習中の内容より易しいレベルのものなど)
なるべく状況や文脈とともに取り込みたいので、1~2文の短いものではなく、ある程度まとまった分量のものを選びます。
(例えば、単語帳の例文音声よりも、教科書のリーディングパッセージなどの読み上げ音声の方がよい)
もし学校や塾から、音声つきの英語多読アプリなどが提供されていれば、それを使わない手はありません。
このような英語コンテンツを、聞いたはしから、読んだはしから、すばやく内容を受け取る訓練をしていきます。すみずみまで理解する必要はありません。分かるところをつなぎ合わせて「処理」していくイメージです。
ふだんの勉強との違いは、文の構造を分析したり、日本語に置き換えたりせずに、瞬間的に分かったという状態をつくることです。
ビギナー向け動画の一例(リトルフォックス)
Level 1 | Bat and Friends | Little Fox | Animated Stories for Kids
3)「音から入る」ことの大切さ
英語の「音」にまだ慣れていない学習者の場合は、「音声」に意識を向ける取り組みをします。これには、文字を見ないで、音声だけのインプットを集中的に行います。
本来、インプットとしては、文字よりも音声の方がはるかに受け取りやすいはずなのです。音声の方が感覚的に入りやすく、処理しやすいのです。
例えば、音声の場合は、
アクセント・イントネーション・抑揚によって、
大事な部分ほど強調され、
意味のかたまりや係り受けの関係が把握しやすい
声のトーンによって、
ナレーションなら場面や状況の雰囲気や、
登場人物のセリフなら感情が表現される
ということがあります。これらのことに意識を向けながら英語を受け取ります。
言語の本質は音です。会話をするときはもちろんですが、英文を読むときも、頭の中で音が鳴っている状態になるので、やはり音を受け取り処理する訓練は欠かせません。
また、自分が好きな音声コンテンツ(映画、アニメ、ドラマ、ポッドキャストなど)でインプットができるようになると、インプットが習慣化しやすくなり、分量が確保されます。上達のペースが上がります。
なかなか音を取り入れることが難しい場合は、音そのものの学習として、フォニックス(音と綴りの関係)や音声変化(単語と単語の音のつながり)を学ぶことも、大きな助けになります。
4)「学習」と「実践」は授業で、「インプット」は自習で
今どきの小中学校の英語授業は、さまざまに工夫を凝らした「実践」的な内容が増えてきているようです。ALT(外国人の先生)が全国の公立小中学校に派遣され、私立の学校でも外国人の先生を増やしています。
英語で学ぶ授業や、全員参加の英語研修、短期留学や海外研修の機会もますます増えています。
それでも、なかなか成果が見えないという状況があるとしたら、原因はインプット不足だという気がしてなりません。
どんなに充実した内容の授業が行われても、生徒側にそれを受け取って吸収する準備がなければ、成果は出ないように思います。
外国人の英語の先生による授業は、いわば「プチ・イマージョン」の状況です。この貴重な時間を、積極的なアウトプットの時間として使えるかどうかは、日ごろのインプット次第だと思います。
「実践」が足りないのではなく、「実践の準備」(=インプット)が足りないので、これを増やすことが、最優先ではないでしょうか。
5)学校で「インプット」のフォローをしてほしい
学校から出ている夏休みの英語の宿題を見ていて、気になることがあります。
それは、「学習」の宿題(問題集などを進める、など)と、「実践」の宿題(テーマに沿って英語で資料を作る、など)は出ているのに、「インプット」の宿題がない、ということです。
(ただし、これは、通常クラスの場合です。帰国生などで編成される「英語取り出しクラス」の宿題は反対に、インプット中心です。これには、夏休み中、英語授業がなくなり、家庭や部活動で日本語一色の生活になると、英語が衰えやすいという事情があるのだろうと想像しています。)
たしかに、ふだんから、英語の課題図書リストが配布され、任意の宿題として、英語のリーディング課題が出ていたりします。英語学習系のアプリが提供されていて、多読用コンテンツや、動画コンテンツにもアクセスできるようになっていたりします。
しかし、それらを使うかどうかは、生徒の自主性に任されています。自主的に進められる生徒はよいですが、そうでない生徒は、うまく活用できず、やらずじまいになってしまいます。
リーディングやリスニング、動画視聴などの「インプット」は、任意ではなく、全員が取り組むべきものではないでしょうか。優先度をもっと引き上げていただきたいものです。
ぜひ学校では、ふだんからインプットの大切さを説いていただき、英語授業では、効果的なインプットの自習法を手取り足取り指導し、さらに、インプットの習慣が続くようフォローを行なっていただくことを切に願います。
究極のインプットはイマージョンに限りなく近い⁈
私自身は、子ども時代にイマージョン(小学校時代のアメリカ滞在)で英語を学びました。
自分が親となって、日本で子育てをするとき、子どもたちに英語を身につけさせるために、「究極のインプット」生活としての「英語育児/おうち英語」を選びました。
プリスクールやインターナショナルスールなど、日本にいても英語イマージョンは可能です。英語を母語とする子どもに育てたい場合は、迷わず英語イマージョンを選ぶと思います。が、日本人として育てるには、英語イマージョンでは足りないことが出てきます。
インプットは、生活スタイルや望む未来によって、いかようにも調整できる便利な方法だと思います。しかも、深めていくと、イマージョンに限りなく近い訓練もできます。
子どもに英語イマージョンの環境を与えられなくても、悲観することはないと思います。インプットの方法を工夫するのみです。
こちらの過去記事では、インプット生活(英語育児)を経て、イマージョン育ちの子どもたち(帰国子女やインター通学中の子どもたち)と一緒に学ぶようになった我が家の経験を書いています。ご興味があればご覧ください。
おわりに:「学校英語」と「英語育児/おうち英語」
以上、とりとめなくなりましたが、英語学習者のインプットについて検討しました。
繰り返しになりますが、「学習」だけでは、リスニングやリーディングがラクになりません。
学習を増やすことで、ラクになるのではなく、インプットという、たくさん英語を聞いて、たくさん読む取り組みで、英語という言語を処理する力、理解する力を養うことで、ラクになります。
「英語育児」「おうち英語」と聞いて、早期英語教育のことだから、我が家には関係がないと思わないでください。そのエッセンスは、どの成長段階にある子どもにも、さらには大人にも、あてはまるものです。
学校英語は「学習→実践」、英語育児/おうち英語は「インプット→実践」という特徴があると思います。
学校英語の立場から見ると、英語育児は「学習」が足りない、英語育児の立場から見ると、学校英語は「インプット」が足りない、ということになります。
でも、学校英語と英語育児/おうち英語は、互いに反するものではなく、補完し合う関係です。
「学習」と「インプット」、両方をバランスよく組み合わせることこそが、「実践」への近道だと考えています。
お読みくださりありがとうございました。
少しでも参考になりましたら「スキ」をお願いします。
