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建設業のAI活用が全業種最下位な理由──道具より先に「業務の書き出し」を

帝国データバンクの調査によると、建設・不動産業の生成AI活用率はわずか9.4%。全業種でほぼ最下位なんですよね。ところが、すでに導入している企業の約9割が「効果を実感している」と答えている、という不思議な数字も出ています(出典:帝国データバンク「生成AIの活用状況調査」2024年7月)。やれば効くのに、ほとんどの会社が手を出せていない。この差は、技術力ではなくて、もっと手前にあると思っています。

人が減っているのに、AIに手が回らない

建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに、2024年は477万人まで落ち込みました(出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」)。30年弱で約3割減ったということです。さらに55歳以上が約37%、29歳以下は約12%。現場が高齢化していて、棟梁世代の知見がそのまま定年で持ち出されていく構図なんですよね。

私自身、住宅営業出身で住友林業にいた頃から「現場の人手が足りない」という話は耳タコでした。ただ、今はもう「足りない」ではなくて、「採れない」フェーズに入っていると思っています。ある広告運用者の方と最近お話したんですが、建設業の現場監督・施工管理は年収1,500万〜2,000万円の条件でも採れないそうです。求人媒体に月50〜60万円、転職エージェントに年収の35%。それだけ払っても採用できない時代に、「うちはAIなんてまだいい」とは正直、言っていられないなと思うんですよね。

それなのに、建設・不動産業のAI活用率は9.4%。全業種で一番遅れている。中小企業を診ているTDBの分析では、規模が小さいほど「事務量が少なくてAIの効果を出しにくい」という事情もあるそうです。でも、効果が出にくいのではなくて、事務量を見える化できていないから効果を測れていないだけ、というのが私の見方です。

「入れたのに使われない」工務店で起きていること

建設DXの専門メディアでよく紹介される失敗パターンに、こんなケースがあります(出典:AI経営総合研究所「建設業DXの失敗パターン7選」など)。

  • 二代目社長が業務管理アプリを導入したが、入力が面倒で半年後に紙に戻った

  • 施工管理クラウドを契約したが、現場監督が「パソコン苦手」で活用率が3割止まり

  • 見積りソフトを買ったが、棟梁の頭の中にある単価表がデータ化されておらず、結局Excelに戻る

  • AI-OCR(紙の書類をAIでデータ化する技術)を入れたが、書類の様式が現場ごとにバラバラで読み取れない

どのパターンも、ツール自体が悪いわけじゃないんですよね。むしろ、ツールは年々よくなっています。問題は、「会社の中の業務が、誰の頭の中で、どんな順番で動いているか」を書き出さないまま、新しい箱だけを増やしてしまっていることだと思っています。

KENTEMやビーイングなどの建設DX系メディアも、揃って同じことを書いています。「業務棚卸し(業務の書き出し)を飛ばしたDXは、必ず失敗する」。これは大手の話ではなくて、まさに中小工務店や設備工事会社、リフォーム会社さんで起きている話なんですよね。見積もり、請求書、労務台帳、安全書類、協力会社管理、現場日報。誰が・何時間使って・何を作っているか。そこを書き出さずに、いきなり「うちもAIを入れよう」と動いてしまうと、100万円のシステムが机の引き出しで眠る、ということになります。

AIの前に「業務の書き出し」が要るたった一つの理由

中小企業のDXに関する調査では、成功している会社の共通点として「業務棚卸しを最初にやった」ことが繰り返し挙げられます(出典:石田データサービス「DXが失敗する原因と成功の鍵」、ビーイング「中小建設会社向け建設DXの始め方完全ガイド」)。順序が大事だということです。AIやクラウドツールは「道具」であって、それで何を片付けたいのかを決めるのは「人」のほうです。

ここで大事なのは、業務の書き出しは「資料を作るためにやる作業」ではないということ。目的はたった一つで、「誰か1人が止まったら、会社のどこが止まるか」を経営者がはっきり見ることなんですよね。棟梁が体調を崩したらどこが止まるのか。事務員さんが辞めたら、どの請求書が遅れるのか。現場監督が一人少なくなったら、どの現場日報が回らないのか。ここが見えると、AIに任せるべき業務と、まだ人の手で守るべき業務がはっきり分かれます。

私が建設業の経営者さんと話していて感じるのは、「うちは全部、頭の中で回している」と話す社長ほど、業務を書き出してみるとびっくりするほどシンプルになる、ということです。10年やってきた仕事って、思っているより少ない数の作業の繰り返しだったりするんですよね。それを見せられて初めて、「ここはAIで十分」「ここは絶対に職人さんの手でやる」と、自分で判断できるようになります。ちょっと地味ですが、これがAIの効果を出している9割の会社が最初にやっていることだと思っています。

もう一つだけ補足すると、業務の書き出しをやると、「採用しないと回らない」と思っていた業務の3〜4割が、実は外注・自動化・廃止のどれかで片付くケースが普通にあります。現場監督1人あたり、ペーパーレス化で年間500時間削減できたという事例もあります(出典:株式会社アプリバンク「建設業の働き方改革をDXで実現」)。500時間というと、おおむね60営業日分。「1人辞めたから1人採る」ではなく、「業務を1つ減らしてから採用条件を見直す」という選択肢が出てくるんですよね。

「AIを入れるか」より先に決めるべき問い

中小建設業の社長さんに、ぜひ自問してみてほしい問いがあります。「うちで一番、属人化していて、誰かが倒れたら一番痛い業務はどこか」。ここに答えられる経営者は、AIを入れても、入れなくても、強い。答えられない場合は、AI選びを後回しにして、業務の書き出しから始めるのがいいと思っています。建設業の人手不足はもう「採用」だけでは解けない局面に入っています。AIや事務の外注(BPO)は強力な選択肢ですが、まずは自社の業務を一枚の紙に書き出してみる。ここから始めてみませんか。


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