確定申告AIの衝撃──経理も採用も「人を探さない」時代へ
2026年の確定申告シーズン、大きな変化が起きています。フリー株式会社は2月17日、ChatGPT向けアプリ「freee確定申告」の提供を開始しました。税理士など専門家が回答した1万件以上の相談事例データベースをもとに、AIが最適な情報を提示してくれるサービスです。一方、マネーフォワードも初のAIネイティブプロダクト「マネーフォワード AI確定申告」を投入。領収書をアップロードするだけで、AIが内容を読み取り、取引記録を自動作成します。
「確定申告がAIでラクになる」──これ自体はうれしいニュースですが、私はこの動きの本質はもっと大きなところにあると思っています。それは、中小企業のバックオフィス業務が「人を雇わなくても回せる時代」に本格突入したということです。
確定申告だけじゃない──バックオフィスAI化の現在地
今年の確定申告まわりのAI進化を整理すると、各社の動きはかなりのスピードで進んでいます。
【2026年 確定申告AI 主な動き】
freee:ChatGPT連携アプリで税理士回答1万件のデータベースを活用(2026年2月17日提供開始)
freee:書類アップロード→AIが種類を自動判別→適切な項目へ自動入力
freee:国民健康保険・年金などの控除書類をAIが自動合算
マネーフォワード:領収書アップロード→AIが取引記録を自動作成(AIネイティブプロダクト)
e-Tax:スマホ向けAI自動入力の対応項目を12→36項目に3倍拡大
freeeの調査(個人事業主・副業会社員1,153名対象)によると、確定申告で不明点が生じた際にかかる時間は「1時間以上〜半日未満」が32.1%と最も多く、「1週間以上」費やす人も4.2%いました。AIレシート読み取り機能を使えば、この作業時間が半分以下になるとされています。
「人を探す」から「仕組みで回す」へ──BPO×AIの新潮流
確定申告のAI化は、あくまで氷山の一角です。注目すべきは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界全体でAI協働モデルが急速に広がっていることです。
4stella合同会社のレポートによると、2025年後半から2026年にかけてのBPO業界では「完全自動化」ではなく「AIが一次対応し、人が判断を補うハイブリッド運用」が主流になっています。つまり、AIがルーティン作業を処理し、人間は判断が必要な部分だけに集中するという形です。
ここで立ち止まって考えてみてほしいのですが、あなたの会社のバックオフィス業務──経理、請求書処理、勤怠管理、契約書チェック──これらにどれだけの時間をかけていますか?
たとえば、月に20時間を経理業務に費やしている会社があるとします。年間240時間です。時給換算で1,500円としても、年間36万円。これが「仕組み」で半分になれば、18万円分の時間が営業やサービス改善に使えるようになります。しかもこれは1人分の話で、複数人が関わっていればインパクトはさらに大きくなります。
私は「人を探さずに人手不足を解消する」という考え方を大切にしていますが、その根底にあるのはまさにこの発想です。足りない人手を「採用」で埋めるのではなく、「そもそもその業務に人が要らない状態」を作る。確定申告AIの進化は、その具体例のひとつだと思っています。
中小企業がまず手をつけるべき3つの業務
では、具体的にどこから手をつければいいのか。私は以下の3つの業務領域から始めることを提案したいと思います。
【AI化の優先度が高いバックオフィス業務】
経理・記帳:freeeやマネーフォワードのAI機能を活用。レシート撮影→自動仕訳が現実的に
請求書処理:AIツールで請求書を読み取り、会計ソフトへ自動連携。手入力の時間をゼロに近づける
問い合わせ対応:ChatGPTなどのAIチャットボットで一次対応を自動化。社内FAQの整備と組み合わせると効果大
重要なのは「全部を一気にやろうとしない」ことです。まずは1つ、最も時間がかかっている業務を選んで、そこにAIツールを入れてみる。効果を実感してから次に進む。このステップが、結果的にいちばん速いと思っています。
もうひとつ大事な視点があります。それは「AIを入れること」がゴールではないということです。AIはあくまで道具であって、本当のゴールは「経営者と社員が、本来やるべき仕事に集中できる環境を作ること」です。確定申告に半日かけていた時間が30分で済むようになれば、その分だけ顧客対応や新規開拓に時間を使える。これが中小企業の競争力の源泉になるんですよね。
まとめ──「人がやるべきこと」を再定義する
確定申告AIの進化は、単なる便利ツールの登場ではありません。中小企業の経営者にとっては「人がやるべき仕事とは何か」を改めて考えるきっかけだと思っています。
経理、記帳、請求書処理、問い合わせ対応──これまで「人がやるしかなかった」業務が、次々とAIで代替可能になっています。だからこそ今、考えるべきは「誰を雇うか」ではなく「何を仕組み化するか」です。
人を探す前に、仕組みを探す。そこから始めてみませんか。
(出典:フリー株式会社プレスリリース 2026年2月17日 https://corp.freee.co.jp/news/20260217freee_gpt.html 、ITmedia AI+ 2026年2月18日 https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2602/18/news095.html 、株式会社マネーフォワードプレスリリース 2025年11月25日、4stella合同会社コラム、Kaikei AI Daily 2026年3月3日)
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