神デス-腐敗51 #07 朝食のパン(職場篇)
◆セロニック Seronic=self (自己) + ironic(滑稽さ・皮肉)
俺の造語だ。
セロニック――絶望を、皮肉と笑いに変える発酵菌だ。
セロニックとは、怒りや恥や後悔を、滑稽さとともに時間と熱で熟成させ、
やがて笑いと諦観の香りを放つ“人間の納豆”へと変えていく心の酵母。
この記録は、実話として綴られた皮肉な発酵過程の観察日誌。
名を──「神のデスギフト腐敗51」。
◆朝食のパン(職場篇)
俺の職場には午前1時に出社するシフトがある。
夜中の1時というやつだ。
2社目の会社なので部署には偉い人や先輩が50人ほど、
24時間制で働いているからだ。
1時に出社するには人数分パンを買って行かなければならない。
下っ端の俺は、
全員の好みを把握し”確実に”買って行かなければいけなかった。
彼らにはコンビニの好みがある、メーカーにも好みがある。
コンビニが違えばクリームパンといっても入荷しているパンは違う。
当然味が違う。
俺はそのコンビニを22時頃から探し回る。
もちろん売り切れの時もある。
売り切れで出社すると”無能”の烙印を押され、罵倒される。
50人分、15000円ほどあらゆるコンビニで買い物をすると深夜0時、
つまり家を出発時間だ。
心「この2時間は勤務ではないのか」
考える事をやめなければ精神が破綻する。
出社し皆に配るが受け取る時は手を出されるだけ。
ありがとうの一つもない。
俺は苦しかった。
特にKGが俺の心に傷を負わせた。
KG「俺はあのコンビニのちぎりパンしか食べないの。
なんでわかんないの?
明日の仕事失敗したらお前のせいだからな、この無能」
俺「そのちぎりパン、生産終了したみたいです」
KG「パンの会社と俺どっちが偉いの?わかるよね」
KGは日本のマーケットを全くわかっていない。
パンの会社は世界的企業だ。
しかし、俺にはどっちが偉いなどわからなかった。
恐怖という培養液で発酵していたから。
ハラスメントは言っている人はわからない。
言われた人ほど記憶に残る。
俺は、今もちぎりパンの類似品ですら手に取ることができない。
——セロニックとは、
自分を食べる神にパンとして差し出しながら、「この焼き加減、悪くない」と笑う心の技術だ。
俺は今日も、オーブンの中で発酵しながら焼かれている。
◆次回予告
腐敗.08 眠りにつく夜(職場篇)
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