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長濱船団 オーストロネシアの古代船というアート

header photo from Wind Voyagers Instagram.

ここのところ、いろんな仕事を抱えてバタバタしつつ、娘の秋休みを利用して、心のふるさと、台東県長濱(チャンビン)に2泊で行ってきた。友人の冠宇(グァンユー)とイリー(Ilid)が、子どもの教育のために、元々住んでいた南澳から引っ越してから大好きになり、通っている場所だ。コロナ後のBRUTUS台湾特集でも紹介されていたので知っている方もいるかしら。そう、どこからも遠い場所として紹介されていたあの街です。遠いからこその魅力がある街で、遠くても戻りたくなる、定期的に帰りたくなるところだ。

冠宇とイリーのジェラート店 Mini
季節の材料厳選、白砂糖は使わない
アフォガートも美味しい

長濱ってこんなところ

 長濱にはアミ族など原住民族の人々がたくさん住んでいて、素敵なゲストハウスがよりどりみどりで、ローカル食材を使った手作りジェラート店があり、店番をすると泊めてもらえる独立系書店があり、パーマカルチャーを実践する海辺の森の手作りパスタ屋があり、そして何より、3万年前の先史時代の遺跡がある八仙洞があり、朝から夕方まで次々に表情を変える、美しい海がある。

八仙洞の霊岩洞
隠れ家のようなパスタ屋さんの一角

冠宇たちがオーストロネシアの古代船を作り始めるまで

冠宇は、元々音楽プロデューサーやミュージシャンをしていた人で、イリーは、温かく魅力的な声を持つ、アミ族出身のシンガーソングライター。普段は音楽関係のことではほとんど関わってなくて(イリーが台北でライブをしたら行くこともあるけど毎回ではない。イリーの歌は大好きなんだけど、忙しい彼らはわざわざ教えてくれることもなく、情弱な私はたびたび逃してしまう)、これまでは彼らが台湾での出版を望んだ自然農のの翻訳と版権交渉に関わったり、お互いの子どもがシュタイナー教育を受けている関係で、一緒にオイリュトミーを習ったりという感じで、プライベートでのみゆるゆると付き合ってきた。

そんな二人が、というか主に冠宇がここ数年取り組んでいるのが、古代からオーストロネシア語族に代々伝わる方法での木製の帆船(カヌー)作りと航海だ。冠宇の夢は、2027年に台湾を通り過ぎる予定のホクレアと一緒に10艘の古代船で台湾近郊を航海すること。彼は夢を実現させるべく、手作業での造船と航海の練習を始め、あれよあれよという間に長濱船団を立ち上げて、すでに3艘の船が出来上がっている。今はもっと遠くへ行けるように、大型の船を委託制作中なのだそう。

ちなみにオーストロネシア語族というのは、西はマダガスカル、東はイースター島、北はハワイ、南はニュージーランドまで広がる考古学的、言語学的区分によるグループで、近年はこのグループの発祥の地が台湾だという説があり、2年前には台湾で「台湾国際オーストロネシア美術トリエンナーレ」も立ち上げられている。(この展覧会について以前artscapeに書いた拙稿はこちら

冠宇とラフィン

ちなみに最初の船マカニー(瑪卡妮、ハワイ語で「風」の意味)は、上記のトリエンナーレにも出展していたアミ族の彫刻家ラフィン・サオマー(拉飛·邵馬)が船の作品を作っていた時に、同じスタジオで作っていたらしい。ラフィンが2023年6月に40歳で海の事故で亡くなった時には、冠宇の仕事場はすでに別の場所に移っていたとのことだけれど、その後しばらく経ってから、冠宇は船を漕いでラフィンが亡くなった辺りに行ってみている。そして、その場所を通りかかった時、知らせのようなものを受け取ったことを、長濱船団の航海日誌で書いていた。

私はラフィンと直接会うことはなかったけれど、彼の彫刻はとても好きなので、本当に残念に思う。そして彼は今でも、みんなの中で生きているのだな、と折に触れ、感じている。(↓このビデオは彼が亡くなった時に、追悼の意味で公開されたもので、日本語字幕はないけれど、長濱の海や彼の制作の様子、儀式など、とてもいいのでぜひ見てほしい)

アートって何?

冠宇は先月、視盟という台湾のアーティスト連盟が大稻埕で主催していた城市跑庫文化運動会に出るというので、珍しく台北に来ていた。長濱から帆船も持ってきていて、ロープワークのワークショップを開いていたので、私もちょこっとだけ遊びに行った。「これって、アーティストとして出てるの?」と聞くと、冠宇は「そうだよ」と言いつつ、ちょっと考えて「Mio、什麼是藝術(アートって何)?」と突然、大きな質問を投げかけてきた。

雨に濡れた帆がちょっと寂しいけど美しい
ロープワークは文字通り命綱。
そして美しい

「私はずっとアートって領域のことだと思ってたけど、シュタイナーは、アートは人間を人間たらしめている能力だと考えているから、アートへの見方が随分変わったんだよね」と答えると、なんに対しても好奇心旺盛で、深いところまで知ろうとする冠宇は、「え、シュタイナーはそれどこで言ってたの。もうちょっと教えて」と、食いついてくるので、「ごめん!どこで言ってたか調べておくね」と答えたのだった。そういえば、長濱でその話しようと思ってたけど、船のこととワラーチ作りに夢中でしなかったな。

そう、今回の長濱には、縁あって、はだし研究者の金子潤さん一家と一緒だったので、まずは1日目、長濱船団の基地に遊びに行き、2日目の夜はワラーチにフォーカスして、とても充実していた。(ワラーチ作りの話はまた今度!)

古代の航海術を学ぶこと

基地では、冠宇がしっかりプレゼンしてくれて、ますますの本気度が伝わってきた。

Tawahi (ポリネシア語で「先祖が来たところ」の意味)と名付けられた船の
向こうには、モニターと席があって……
ジャジャーン、これが星を見ながら航海するためのミクロネシアの羅針盤。
覚えることがいっぱいある、と冠宇
冠宇が台北の芝山岩で出土した古い玉の装飾品の形をもとに
デザインした長濱船団の旗

ホクレアとの航海を実現するために、長濱船団が着実に船を増やし、技術を爆上げしているのにはほんとに感動する。冠宇の企画力も実行力も半端なく、学ぶところが大きい。

いつか体験したいスターナビゲーション

11月から2月までは、ちょうど海が荒れがちで船に乗れない時期なのだけど、次回はぜひ乗ってみたい。自分でちゃんと乗れた暁には、長濱船団のことも、頭でっかちにならず、ちゃんと書けるだろうし、逆に乗れるまでは、詳しく書く資格はない気もしている。

ただ、オーストロネシアの古代航海法(スターナビゲーションとも呼ばれる)については、私も元々石川直樹さんの本で読んでいたり、(ここでちょうどいいサイズの石川さんインタビューを見つけた)娘が7年生の時に山鹿工作室のインストラクターたちと一緒に澎湖の無人島に行って、触りだけ学んだりといった経験があったりして、いろいろ繋がってくるので、いずれまとめてしっかり言葉にしてみたいなぁと思っている。

いずれにしても、台湾にいてここの海も山も知らないってどうよ?というのはここ数年強く感じている事で、アート界にも原住民の自然との関わり方に学ぶアーティストやプロジェクトをはじめ、いろんな動きが増えてきているように思うので、私も自分の足で、身体で、そして筆で、追っていけたらと思う。そうしたら、文献など当たらずとも(大してちゃんと読んでないシュタイナーに頼らずとも、汗)「什麼是藝術?(アートって何だ?)」という問いに、自分の言葉ですらすらっと答えられるようになるかもしれない。

オーナー夫婦が隠居することを決め、2年前に閉業した
大好きなゲストハウスからの眺め。
長濱の海は水平線がこんなふうに光っていたりする

💎長濱船団 航海日誌(いずれも基本は台湾華語)
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💎長濱への行き方
台北から花蓮県玉里まで特急電車(ネットで予約)で3時間半ほど、
そこからレンタカーが一番楽(約40分で到着)。
レンタカーは、今回は格上という大手チェーンにしました。(CarplayどころかBluetoothも付いてない車だけど、一日5000円くらいでありました。でもちゃんと清潔で、整備もしっかりされていて満足。保険付き)
ちなみに日本の運転免許保持者は、指定の翻訳を携帯することで、
台湾でも運転ができます。詳しくはここで。


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