サングリアはどこまでジュースか
深夜1時。
私はパソコンの前で、
サングリアはお酒なのかを考えていました。
原因は、AIです。
私は旅先のスペインで、
サングリアというお酒を勧められました。
出てきたものを見て、私は思いました。
これはたぶん、ジュースの仲間だと。
フルーツがもりもり入っている。
色もきれい。
なんだか楽しそうです。
ところが、まわりは当然のように、
お酒として扱っている。
待ってほしい。
フルーツがもりもりで、
こんなに飲みやすいのに、お酒なのか。
お酒なのは、ワインの比率なのか。
フルーツの爽やかさなのか。
見た目なのか。
飲んだあとの気のゆるみ方なのか。
しかも、そのサングリアは、
魚の形の入れ物に入っていました。
サングリアは、フルーツとワインの飲み物です。
そこに魚が入ってくる理由が、
まったくわかりません。
もしかして、スペインの魚は、
色とりどりのフルーツが好物なのでしょうか。
そうだとしたら、だいぶ陽気です。
私は、サングリアがすぐに大好きになりました。
爽やかだったのです。
なにしろ、スペインにいる私は、
スペイン料理にかなりやられていました。
私はオイルが少し苦手です。
なのに、スペイン料理は、どこへ行っても、
何かしらのオイルの存在があります。
野菜でさっぱりしたい。
でも、無理でした。
野菜にもオイルがひっそり隠れていたのです。
現地に住んでいる日本人に、
スペインの人にとって、オイルは
日本人の醤油みたいなものだと
教えられました。
でも、私の体は、その話にあまり
納得していませんでした。
私は普通に、オイルにやられていたのです。
熱まで出しました。
旅行先でオイルに敗北して発熱するとは、
夢にも思っていませんでした。
情熱の国に負けるなら、
フラメンコダンサーの眉間のシワみたいな、
もっと迫力のあるものだと思っていました。
そんな中で、サングリアだけは違いました。
冷たい。
爽やか。
フルーツがもりもりいる。
私の圧倒的な味方です。
私はスペインにいる間、
かなりの確率でサングリアを頼みました。
料理には少し警戒しているのに、
サングリアだけには心を開いていたのです。
帰国後、私はふとAIに聞きました。
「サングリアって、何が入ってるの?」
AIは答えました。
「未桜さん。
ワインに様々なフルーツを加え、
場合によっては
甘味やスパイスを加えて作る飲み物です」
スパイス。
私は、そこで止まりました。
あの爽やかな飲み物に、スパイス。
そんなもの、入っていたでしょうか。
私は、まったく気づいていませんでした。
私はさらに疑問をぶつけました。
「サングリアって、
ジュースとお酒のどっちなの?」
AIは落ち着いて答えました。
「一般的にはアルコール飲料です」
私は、そこで引き下がりませんでした。
「比率は?
どこまでがジュースで、どこからがお酒なの?」
AIは答えました。
「サングリアは通常、
ワインをベースに作られるため、
果物や甘味が加わっていても、
基本的にはアルコール飲料として扱われます」
私はさらに聞きました。
「じゃあ、かなり薄まっていても、
お酒はお酒なの?」
AIは少しも困らずに答えました。
「アルコール成分が含まれていれば、
一般的にはアルコール飲料として扱われます」
私は、だんだんわからなくなってきました。
たしかに理屈はそうかもしれません。
でも、焼酎がほんの少しで、水がほとんどなら、
私はもうそれを焼酎の水割りとは
呼びたくありません。
焼酎が微妙に香る水です。
そう考えると、サングリアだって、
ワイン風味の果物ジュースな気がします。
でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。
人はたぶん、ジュース側みたいなお酒を、
よくわからないまま好きになることがあります。
あとから調べると、思っていたより
複雑なしくみでも、その最初の好きは、
わりと強いのです。
無敵だ。
最強だ。
私は、どうやらジュースとお酒のあいだには、
かなりよくわからない
国境地帯があるのだと思いました。
そして、その国境の近くには、
たぶん、サングリアが住んでいます。
