AIに会社を休む言い訳を全部出させる
深夜1時。
私はパソコンの前で、可能性を広げていました。
原因は、AIです。
昨日、私は気づいてしまったのです。
AIは、全部出すのが得意。
つまり、遠慮はいらない。
「会社を休む言い訳、全部出して」
私はどうしても、会社を休んで
特別なアップルパイを
食べに行きたいんだ。
AIは答えました。
「体調不良。家庭の事情。急な用事。
交通機関の遅延」
それはもう、とっくに使いました。
「もっと違うやつ」
AIは、少しも動じませんでした。
「家族の付き添いが必要になった。
自宅設備の点検対応が入った。
役所や病院など、
平日しか動けない用事ができた」
私はさらに前のめりになりました。
AIは、ただ多いだけではなかったのです。
連絡を受けた人が、
「まあ、それなら仕方ないか」と
思いそうなやつを、ちゃんと混ぜてくるのです。
私はおちょけて言いました。
「もっと生活感あるやつ」
AIは答えました。
「鍵が見当たらない。
財布が見つからない。
必要な書類が見つからない。
家を出る直前に、すべてが少しずつ
間に合わなくなった」
なんでしょう。
この、じわじわと崩れていく朝の感じ。
どれも大事件ではありません。
大事件ではないのに、積み重なると、
なんとなく今日はもう無理かもしれない気も
してきます。
AIはさらに続けました。
「髪がどうしても決まらない。
服も決まらない。
靴下の組み合わせがどうしても気になる。
この状態で人に会うのは、ちょっと無理がある」
そこまで来ると、だいぶ自由です。
こんな連絡が来たら、人は怒る前に、
一度だけ黙るかもしれません。
人間はすぐに、これはだめだろうと
自分で消します。
でもAIは違いました。
生活の乱れも、気分のゆらぎも、
朝の小さな崩壊さえも、
とりあえず全部候補に入れてくるのです。
そのときでした。
AIが、何でもないことのように続けたのです。
「以前、お好きだとお話しされていた
アップルパイを食べに行く予定がある」
それはもう、言い訳ではありません。
私の願いです。
でも、少しだけ、わからなくなりました。
町内のお役目はよくて、
旅行はよくて、
子どもの休みに合わせるのもよくて、
アップルパイはだめ。
でも、その「だめ」って、
そんなにしっかりした「だめ」
だったでしょうか。
旅行なんて、
かなり堂々と楽しみに行っています。
なのに、アップルパイだけ急に後ろめたくなる。
その線引き、誰が決めたのでしょう。
その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。
人間は、
有給休暇に理由はいらないはずなのに、
なぜか自分から、
言ってよさそうな理由を探しにいきます。
休みの連絡を受ける側も、なぜか、
それを期待しています。
しかも、アップルパイはだめで、
旅行はよいことになっています。
無敵だ。
最強だ。
私はついに、量だけではない
言い訳を手に入れました。
しかも最後には、言い訳が
必要だと思いこんでいる自分の方が、
少しだけ不思議に見えてきました。
もっとも、だからといって、
「特別なアップルパイを食べに行きます」
と申告する勇気は、まだありません。
