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ガラスケースの中の日本人形、優しい怪奇


祖母の部屋には、いつも彼女がいた。

大きなガラスケースに入った日本人形。
漆黒の長い髪に鮮やかな赤い着物を纏って、
いつもそこでふんわりと柔らかく微笑んでいる。

子供の頃から見慣れた顔のはずなのに、
どこか現実離れした美しさがあって、
私はその部屋に行くたびに、 なんとなく視線をそこへ向けてしまっていた。



亡き祖母の部屋には大きなベッドがあった。

ふかふかで寝心地がよくて、
私はよくそこでお昼寝をしたり、 ごろごろしながら本を読んだりしていた。

日本人形は、そのベッドから見上げるとちょうど視界に入る高さの、
昔ながらの古い大きな箪笥の上に置かれていた。



私が人形が動くのを見たのが、確か中学2年生の夏だったと思う。

その夜も私は祖母のベッドで眠っていた。
8畳ほどの部屋で冷房をガンガン効かせていたので、真夏なのにも関わらずとても寒かった。


ふと夜中に目が覚めた。


理由はわからない。
物音がしたわけでも、誰かに起こされたわけでもない。
ただ、パッと意識が戻ってきた。

そしてそのまま、 吸い寄せられるように 日本人形の方を見た。

ベッドから顔を上げ見上げた、その瞬間。
日本人形がこちらを振り返り、

「にこり」と優しく微笑んだ。


不思議なことに、
めちゃくちゃ怖がりな私が、全く怖いとは思わなかった。

むしろ温かいような、
優しい何かに包まれるような気持ちがして、
私はそのまま、また静かに眠りに落ちた。

あれは夢だったのか。 それとも本当に見たのか。

今でも、わからない。

ただひとつだけ確かなのは、 あの夜から私の中で、
あの子はただの「人形」ではなくなった。



それから暫く時が過ぎ、20代前半の頃だったと思う。

県外にいる弟が帰省した時のこと。
このときも夏だったと記憶している。

夜中、弟が慌てて部屋に入ってきた。

「どうしたの?」とびっくりして聞き返すと、

日本人形が鬼のような形相でこちらを見ていて、
ガラスケースをこじ開けて外に出ようとしていた、と。



そんなまさか、と思いながら、
私と母と弟で祖母の部屋に確認しに行く。

すると、 日本人形はいつも通りの姿でそこにいた。


ただいつもと違ったのは、


『ガラスケースが開いてた』こと。

  誰も明けていないのに。


これは私が実際に体験した話です。
様々な霊体験の中でも、
私の中では強く鮮やかに残っている出来事です。

この話しには続きがあります。

第二章『弟が連れてきたなにか』

次回も、ぜひご覧ください。


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