「私にできることをしているだけ」——ハチドリのひとしずくが教えてくれた、仕事の本質
「自分ひとりが動いても、どうせ変わらない」
そう思って、動けなくなったことはありませんか?
大きな問題の前では、誰だってそう感じます。
私も、コンサルタントとして職場の課題に向き合ってきた中で、「自分ひとりでできることなんてたかが知れている」と思った瞬間が、何度もありました。
でも、ある小さな鳥の物語が、私にひとつの大切なヒントをくれました。
今日は「ハチドリのひとしずく」という物語を通じて、「できる人ができることをやる」という働き方の本質について、一緒に考えてみたいと思います。
南米の民話「ハチドリのひとしずく」って、知っていますか?
南米アンデス地方の先住民族・キチュアに伝わる、こんな民話があります。
森が火事になりました。
炎は大きく燃え広がり、動物たちは我先にと逃げ出します。
象も、ライオンも、シマウマも——みんな安全な場所を目指して走っていきます。
そんな中、たった一羽のハチドリだけが違いました。
名前は「クリキンディ」。
くちばしに水を一滴くわえて、火の中へと飛び込み続けていました。
また水を取りに行く。また落とす。また取りに行く。
何度も、何度も。
他の動物たちが、呆れて声をかけます。
「そんな小さな水で、いったい何になるんだ。無駄じゃないか」
するとクリキンディは、こう答えました。
「私は、私にできることをしているだけです」
この物語は、文化人類学者の辻信一さんが監修・紹介し、2005年に光文社から「ハチドリのひとしずく いま、私にできること」として出版されました。
以来、多くの人に読み継がれてきた、静かで、でも深く刺さる一冊です。
読むたびに思います。
「できることを、ただやる」——これは、ビジネスの場でも本質的な原則なんじゃないか、と。
「完璧な準備ができてから」が、一番危ない
私がコンサルタントとして多くの職場を見てきた中で、
ある共通の傾向に気づきました。
問題を抱えている組織ほど、「全部解決できてから動こう」と考える傾向があるんです。
完璧な答えが出るまで待つ。
誰かがまとめて解決してくれるのを待つ。
自分が動く前に、まず周りの様子を見る。
この気持ち、わかりますよね(笑)。
中途半端に動いて失敗するよりも、
確実に成功できるタイミングを待ちたい——。
でも、ハチドリの話を思い出してください。
クリキンディは「この一滴で本当に火が消えるのか」なんて計算していません。
「私にできることをしている」——ただ、それだけです。
完璧な解決策を待っている間、火はどんどん広がっています。
組織の問題も、放置すれば同じことが起きます。
「全部できるようになってから」を待ち続けた結果、チームの雰囲気は悪くなり、優秀な人材が流れていく——そんな職場を、私はこれまで何度も見てきました。
「いつか」を待つより、「今日できること」に目を向ける。
それだけで、組織は少しずつ変わり始めるんです。
一人ひとりの「ひとしずく」が、組織の空気を変える
「大きな変革」じゃなくていい
誰かが問題の全体を一人で解決しなくてもいい。
一人ひとりが「自分にできること」をやり続けることで、組織は確実に変わり始めます。
たとえばこんなことです。
朝、少し早く来てミーティングの場を整える人。
うまくいかなかったプロジェクトで、落ち込んでいる後輩にひと声かける人。
不満を口にする前に、建設的な提案をひとつだけ出してみる人。
どれも「大きな変革」ではありません。
でも、こうした「ひとしずく」が集まったとき、職場の雰囲気は確実に変わります。
「すごい人」だけが変えるわけじゃない
ここで大切なのは、そのひとしずくは「すごい人」じゃなくてもいい、ということです。
よく「変革をリードするのは一握りのリーダーだ」という話を聞きます。
でも私は、現場で何百という職場を見てきて、少し違う実感を持っています。
変わっていく組織は、必ずといっていいほど、「目立たないけどコツコツやっている人」がいる。
大声でビジョンを語るわけでも、大きな施策を打つわけでもない。
ただ、自分にできることを、毎日続けている人が。
それが、組織の文化をつくっていくんです。
私自身のハチドリ体験
正直に言いますと、私も長い間
「もっと上手になってから、大きなことができるようになってから動こう」と思っていた時期がありました。
力をつけてから。
もっと実績が出てから。
完璧な準備ができてから——。
でも、そう思っている間は、何も変わらなかった。
振り返ると、ただ時間が過ぎていただけでした(苦笑)。
あるとき、尊敬する先輩経営者の方に、こんな言葉をもらいました。
「村上さん、できることを全部そろえてから進む人は、永遠に一歩目を踏み出せないよ」
刺さりましたね。本当に。
それから私は意識を変えました。
完璧な準備がなくても、今日できることを少しずつ積み上げる。
小さなセミナーを開いてみる。
ブログに自分の考えを書いてみる。
一人の管理職と向き合って、一緒に考えてみる。
そのひとしずく、ひとしずくが、今の私の仕事に繋がっています。
そしていつのまにか、「あのとき一歩踏み出してよかった」と思える場面が増えてきました。
完璧じゃなくていい。
大きくなくていい。
クリキンディと同じことを、私もやっていたんだな——と今は思います。
あなたの「ひとしずく」は何ですか?
大きな変化は、いつも小さな一歩から始まります。
あなたには、今日「できること」が必ずあります。
大きくなくていい。
完璧でなくていい。
クリキンディが「この一滴で火が消えるかどうか」を考えなかったように、あなたも「これで問題が解決するか」を考えすぎなくていいんです。
ひとつだけ、問いかけさせてください。
「今日、あなたにできることは、何ですか?」
チームの誰かに感謝を伝える。
先送りにしていた課題をひとつ確認する。
自分が感じている不満を、建設的な提案に変えてみる。
いつもより少しだけ丁寧に、後輩と話してみる。
何でもいいんです。
あなたが「自分にできる」と感じることを、今日ただやってみてください。
そのひとしずくが、あなたのチームを変えるきっかけになるかもしれない。
そして何より——それを続けることで、あなた自身が少しずつ変わっていきます。
クリキンディが火を消したかどうか、この民話は語っていません。
でも、クリキンディは飛び続けた。
私は、そこに本質があると思っています。
まとめ
「ハチドリのひとしずく」が私たちに教えてくれること。
完璧な解決策を待つより、今できることをやる
小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化を生む
「自分ひとりでは変わらない」は、思い込みかもしれない
できる人ができることをやる。これは能力の話ではなく、姿勢の話です。
あなたにも、必ず「ひとしずく」があります。
今日も一緒に、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
参考サイト
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