【第21話 研修当日】サファイアを追いかけろ~とある会社の採用ストーリー~
4月に入り、新年度の採用活動はスタートしていた。そして時は四月中旬。
面接官研修の当日、僕は少し早く会議室に入った。
テーブルの上には、山路さんと何度もやり取りして作り上げた研修資料が並んでいる。その横には、2019年につくった古い面接官マニュアルを参考資料として置いた。紙の端は少し黄ばんでいる。でも、これから始まる半日を考えれば、あれは過去の失敗作ではなく、「今との違いをはっきりさせるための土台」だ。
ドアが開いて、最初に入ってきたのは白石さんだった。手には出席者リストと名札。やや緊張している表情だ。
「朝霧さん、思ったより人、集まりましたね」
「そうだな。今日は“説明会”じゃなくて、本当に“現場を変える会”にしたいからな」
少しして、矢野くんも入ってくる。
最後に、各部門の責任者たちが続々と席についた。営業、企画、管理、IT、製造などなど。いつもなら誰かは遅れてくるのに、今日は社長と役員まで含めて、全員が時間通りに座っている。
それだけで、この研修にかかっている期待の重さが伝わってきた。
開始時刻ぴったり、山路さんが前に立った。僕たち人事三人は、後方と脇に回り、進行の補助に徹する。
「それでは、面接官研修を始めます」
少しのざわめきが収まり、静けさが広がる。
「今日ここに集まってもらったのは、人事が“採用のやり方”を一方的に教えるためではありません。この一年で50名を採用するプロジェクト、“サファイアを追いかけろ”の中で、皆さんが“会社の顔”としてどんな面接をするのか。そこを一緒に決めていくための時間です」
「サファイア?」
誰かが小さくつぶやき、何人かが顔を上げた。その反応に、山路さんは少しだけ笑って続けた。
「プロジェクト名の話は、あとで触れます。まずは、今日の流れを共有させてください」
ホワイトボードに、太い字で三つの言葉を書く。
「一つ目は“現状を知る”。二つ目は“ギャップを知る”。三つ目は、“何を変えるか決める”。」
山路さんは一度区切ってから、続けた。
「そして、この三つをやる中で、面接官としての『見極めのスキル』と『面接官同士の認識合わせ』も、しっかりやっていきます」
会議室の空気が、少しだけ前のめりになるのを感じた。
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