体を動かしたあとに、心が軽くなる理由
朝の送り出し、家事、仕事。
1日が始まる前からもう疲れている、という日があります。
そんなときでも、少し体を動かしただけで、
「なんだか気分が軽い」
「頭がすっきりした」
と感じたことはないでしょうか。
あの感覚は気のせいではありません。
そして、よく言われる「エンドルフィンが出るから」という説明だけでも、少し足りません。
最近は、運動によって脳内のエンドカンナビノイド系が働くことが、心の軽さや高揚感に関係すると考えられています。
株式会社ミラハピ代表の高山久恵です。現役の薬剤師として、日々、医療や暮らしの変化を現場から感じながら、イギリス人ネイティブ講師であり、ジョリーフォニックス・グラマー公認トレーナーのDavid Watkinsと共に、東京発のオンライン英語教室「Yamatalk English®」を運営しています。
だからこそ、体や心の変化が、日常や学びにどう影響するのかには強い関心があります。
しんどいのに、少し気持ちいい
運動を始めた直後は、たいてい苦しいものです。
息が上がるし、体も重い。
でも、そこを少し超えると、ふっと楽になる瞬間があります。
この「苦しいのに、少し気持ちいい」という感覚が、いわゆるランナーズハイです。
とはいえ、毎回強い快感が起こるわけではありません。
実際には、気分が少し上向く、思考が整う、イライラが減る、といった穏やかな変化として感じる人も多いはずです。
子育てや仕事で頭がいっぱいのときほど、
こうした変化はわかりやすいかもしれません。
体を動かしたことで、頭の中の雑音が少し静かになる。
それが「心が軽くなる」という実感につながります。
昔はエンドルフィン説が有力だった
ランナーズハイは、長いあいだ「エンドルフィンで説明できる」と考えられてきました。
エンドルフィンは、痛みをやわらげたり、気分を上向かせたりする物質です。
実際、2008年には長時間のランニング後に脳内オピオイド系の変化を示す研究があり、エンドルフィン説を後押ししました。
この時点では、「運動で脳内麻薬のような物質が増えて、高揚感が出る」という理解がかなり広まりました。
ただ、その後の研究で、話はもう少し複雑だとわかってきます。
エンドルフィンも関わっている可能性はあるけれど、それだけで全部を説明するのは難しい。
今は、複数の脳内物質や神経系の反応が重なって起きると考えるほうが自然です。
今注目されているのはエンドカンナビノイド
最近、より注目されているのがエンドカンナビノイドです。
これは体の中で作られる物質で、運動後の気分の上向きや不安の軽減に関係すると考えられています。
ヒト研究では、運動後に多幸感や不安の軽減が見られ、さらにオピオイド受容体をブロックしても、その感覚が完全には消えないことが報告されています。
つまり、「気分が軽くなる理由」はエンドルフィンだけではなく、エンドカンナビノイドも重要な候補だということです。
簡単にいうと、
体を動かす
脳と神経が反応する
気分や痛みの感じ方が変わる
この流れが起きている、と考えるとイメージしやすいです。
だから、頑張りすぎなくていい
ここで大事なのは、ランナーズハイを狙って無理に追い込む必要はない、ということです。
激しい運動をしないと意味がない、という話ではありません。
むしろ、日常の中で少し息が弾むくらいの動きでも、気分の変化は十分に起こりえます。
たとえば、早歩き、軽いジョギング、階段を使う、子どもと外で少し走る。
そんな小さな運動でも、気持ちの切り替えには役立ちます。
忙しい親にとって大切なのは、立派な運動習慣を作ることより、
数分で自分の状態を整える手段を持つことかもしれません。
体験として確かめるなら
次のようなときに、少し意識してみてください。
3分だけ早歩きしたあと。
階段を使って息が弾んだあと。
子どもと公園で軽く走ったあと。
家の中で少し体を動かしたあと。
そのあとに、
「気分が少し軽い」
「頭がすっきりした」
「イライラが減った」
と感じるなら、それは体の反応としてかなり自然なことです。
大げさな変化でなくて構いません。
ほんの少しでも、心が整う感じがあれば十分です。
まとめ
体を動かしたあとに心が軽くなるのは、気のせいではありません。
昔はエンドルフィン説が有力でしたが、今はエンドカンナビノイドを含む、複数の仕組みが関わると考えられています。
だからこそ、疲れたときに少し体を動かすことは、
気分転換としても、頭を整理する方法としても意味があります。
しんどいのに、少し気持ちいい。
あの不思議な感覚は、体がちゃんと反応しているサインなのかもしれません。
参考資料
Do Endocannabinoids Cause the Runner's High? Evidence and Open Questions
The influence of endocannabinoids on the runner's high in humans
Runners' High Demonstrated: Brain Imaging Shows Endorphins Play Major Role
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