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小さな◯をつけた日

休日の午後
何気なく母とのトーク画面を開いた

並んでいるのは、私の短い返信ばかり

「うん」
「大丈夫」
「また連絡する」

それに返ってくる母からのメッセージは
いつも少し長い

「ちゃんとご飯食べてる?」
「暑いから水分もしっかりね」
「時間ができたら、たまには顔を見せてね」

画面を見つめていると、ふと母の顔が浮かんだ

「また、連絡しなきゃな」

親への連絡は、いつでもできると思っていた

仕事が落ち着いたら
時間ができたら
そう思っているうちに、月日は静かに過ぎていた

思い出したのは、母が笑って言った一言

「忙しいんでしょう? 無理しなくていいから」

遠慮がちに、でもどこか寂しそうに笑った顔

あの一言の奥には
『本当は話したい』
『顔が見たい』

隠しきれない本音が透けて見えていたような気がする

飽きられるくらいが、ちょうどいい
何度も電話をして
「また、どうしたの?」と笑われてもいい

その声が聞こえるだけで
今日も元気なんだと安心できる

親孝行なんて、大層なことじゃなくていい

豪華な食事をごちそうすることでも
高価な贈り物を渡すことでもない

「今度の休み、帰るね」

たったその言葉で
母は冷蔵庫の中を思い浮かべながら
何を作ろうか考え始める

親が待っているのは、贈り物じゃない

「おかえり」と言える時間なのだと思う

私は母の名前を押した

「もしもし、母さん?」
「どうしたの?」

弾んだ声が返ってくる

「用事はないんだけど、なんとなく…」
「なにそれ、珍しいこともあるもんだね」

母は笑っていた

夕飯の話
近所にできた新しいお店の話
庭で育てている野菜の話

どれも急いで話すようなことじゃない

それでも、その何気ない時間が嬉しかった

電話を切って、もう一度トーク画面を開く
そこには、短い返事ばかりを返してきた自分がいた

次の休みは帰ろう

今度は画面の中じゃなく、ちゃんと顔を見て話そう

私はカレンダーを開き
次の休みに小さな◯をつけた

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