見出し画像

リオデジャネイロ(ブラジル)の雑記|カーニバル編|海外ひとり旅

 リオのカーニバルのパレードは激しい競技なのである。
強豪サンバスクールが出場し、2部リーグ→1部リーグ→(こどもパレード)→チャンピオンズリーグ と勝ち抜き戦を行う。
 1部リーグがいわゆる本選で、選ばれしチームがチャンピオンリーグに行くべく本気で臨むため、一番人気が高い。

 せっかく見るならと1部リーグのチケットを探したのが昨年10月末、本番3か月半前。調べながら探したのだが、全て高い。
 遅かったか…と後悔しつつ、とある日本の代理店に相談した。残り僅かで60000円と言われたが、他のサイトでは同等かそれ以上で、また自分のリサーチ力を信用していないため、すぐ購入した。いわゆる立ち見席(コンクリート段で指定なし)で、現地価格は200レアル(≒6000円)なので、まあ安心安全をお金で買ったということか。代理店は丁寧にフォローしてくれたので感謝している。

 そもそもカーニバルの起源は、カトリックの四旬節(肉の摂取を断つ期間)の前にごちそうを食べて歌い踊る、無礼講の「謝肉祭」だそうだ。
 今や四旬節を守っている人はいないだろうが、カーニバルはブラジル人のメンタリティに合わせ残っている。
 上記のパレードのみならず、期間中は街中で山車が出たり、ストリートサンバが行われたりしている。ブラジルの他地域でもカーニバルは行われるが、やはりリオが規模の大きさで有名だ。

 というわけで、高額チケット片手にぼっちで臨んだカーニバルの様子を思い出に書き残しておく。

カーニバルが始まるまで

 カーニバルは22時に始まるが、念のため薄明るい19時前にホテルを出た。 地下鉄Praça Onze駅を降りて人の波に従うと会場のサンボードロモ(Samba + Dromo、サンバの道の意)に到着する。
 そこから観客席であるセトール(セクター)毎に入口が異なるため、セトール10の入口を求め徘徊する。
 気合十分のメイクアップで盛り上がる気満々の人達がずらりと並ぶ。こちとら徹夜を見越しすっぴん眼鏡だ。


ダフ屋に声を掛けられまくりながら辿り着いた


 無事入口を見つけ、QRコードを見せ、セキュリティチェックを通るといざ会場入り!19時半に到着したので指定席に人は居ないが、立ち見席は少しずつ埋まりつつあった。

 サンボードロモのパレード道は700mあり、セトール(セクター)が13個ある。私のセトール10は比較的審査員席に近く、パレードを間近では見られないが全体像は見やすい。適当な場所に座り込み、その時が来るのを待った。

始まる直前のワクワク


 22時に向け少しずつ盛り上がってくる。掃除の人、エンジニアの人、水売りの人がパレード道で拍手喝采を受ける。縁の下に光を当てるの良いな。

 場内アナウンスが流れ花火が上がり、メインスポンサーだろうか、ビールのBRAHMAのパレードが始まり早速盛り上がる。

本気のパレード開始

 ついに22時が来た!
 今晩は4組が出場する。1組あたり準備10分、パレード80分以内が厳密に決まっているようで、各所のパネルに時間経過が表示される。そのパネルには同時に、パレードで流れるサンバを手話で歌う女性の姿がずっと映される。
 耳が聞こえない人も一緒にサンバのリズムに乗れるのだ。

 Jリーグ初期によく聴いた、オレーオレオレオレー今がチャーンス!のメロディに乗って大合唱が始まる。『ole ole ole ola Lula Lula!』ブラジルのルーラ大統領の曲なのだろうか。でもなんで?と考えているうちに、向こうではパレードが始まっていた。
 700mを80分かけて通過するためまさに牛歩。私のセトールは真ん中より少し後方なので、開始後25分くらいでやっとパレードの先頭が見えてくる。でも最初から全員立ち上がり何も見えないので、私も立って来るのを待つ。

 先頭に軍服のような衣装のダンス隊、その後ルーラ大統領を称えるデジタルサイネージ、そして山車が見えてきた。
 度肝を抜かれる。
 もはや建物である。アパートくらいの大きさ。しかも山車の一部が動く駆動機構付き。

 パレードが近づくと、私たちのセトールにバッと強い照明が付き、客席の盛り上がりは最高潮になる。総立ちで踊りながらサンバを大声で歌う。パレードは審査員席の前でしっかりと見せ場を作る。

 最初の山車が一番目玉で、その後に巨大な山車が5つほど控える編成のようだった。
 山車の前後に色とりどりのサンバ隊や打楽器隊が連なる。
 ソロダンサー(男女ペア、女性のみなど、私たちが想像するいわゆるサンバダンサー)、山車に乗って歌い踊るダンサー、趣向を凝らした数種類の衣装を着た数千人のサンバ隊、打楽器隊(100人以上が必須)などでパレード道が寸分の隙もなく埋まり、大音量のサンバと観客の歓声が地鳴りのように響き続け、煌びやかさとグロテスクさに軽く眩暈を覚える。
 狂気という言葉がぴったり来る。

 時々妙に盛り上がるポイントがある。ルーラの生い立ちをモチーフにしたこのパレードでは恐らくルーラ本人が居た(テレビカメラやセキュリティに囲まれた男性を観客が携帯で撮っていた)。
 他のパレードでも急に歓声が上がる瞬間があり、多分有名人が出ていたりするのだろう。知っていればさらに楽しめそうだ。

…とは言え、これ日本に置き換えたら、高市総理万歳!っていうパレードなのか…?と考えると、斜め前のおじさんが、このチームの時だけは頑なにノっていなかった理由も想像できた。
 ルーラは物議を醸す大統領だ。ストレートに政治色を出すパレードには賛否あるだろう。

メインの山車はこのくらいの大きさ
真昼の明るさとこれ以上ない賑やかさ


テレビカメラがパレードの間を縫って撮影していた

 フワフワとした変な夢を見ているような時間が過ぎ、1組目のパレードが終了した時には既に疲れていた。
 固いコンクリートに腰を下ろす。この熱狂があと3組か…。お腹が空きそうだが売店に行くと元の場所には戻れない(一人旅のデメリット)。水でごまかして次を待つ。

 次の組はテーマカラーが緑で、最初の山車でカメレオンが出てくる。その後も虫、ジャングル、動物、真珠などをモチーフにしており、自然保護だとか環境の多様性だとかがテーマかなと推測した。

 この組は音楽が特徴的だった。とにかく複雑なのだ。
 転調、変調だらけで、一度聞いても真似できない。
 確かにサンバはリズムが命の印象だったが、こんなに難しい調子の曲に、観客たちはすぐ順応し、軽々と歌っているのだ。
 元々知られた歌を編曲しているのだろうか。或いはブラジリアンが生来持っているバイブスというものだろうか。

 この組はまた山車の完成度も素晴らしく、サンバ隊も統率が取れているように見えた。
 疲れていたけど、やっぱり目の前に来るあたりから立ち上がり、キレッキレで踊る人々に歓声を捧げ、その後50分間しっかりと見届けた。

カメレオンと書いてあったが、ブラジルにカメレオンはおらず、イグアナの仲間をそう呼ぶらしい


何かの意味があるのだろうが、分からない
打楽器隊は途中でパレードから横に逸れ、審査員席の前で最後まで叩き続ける

 余談だが、2組目が終わった午前2時ごろ、先日ペルーで出会ったシェフ志望の女の子から旅行の具合はどう?というDMが来た。
 今リオでカーニバル見てるよ!と勢い良く返すと、リマで仕事が見つからない涙 と返ってきた。18歳の女の子の悩みはいつだって重大なのだ。
 拙い英語で慰めつつ、私はここでも仕事探しの悩み相談をするのか…と可笑しくなった。



 3組目はリオの歴史にまつわるような山車だった。
 観客席からRepublica Rio-grandense(リオ・グランデ共和国)の旗を振っている人がいたり、山車も聖人や神のような人物、アンデスやアマゾンの先住民のように見える人物などが出てきて、恐らく歴史を知っていたら解像度が上がるんだろうなと思いながら見ていた。

 もうこのころになると、他の観客も眠気と疲れで座り込んでいた。それでもやはりパレードが近づくと立ち上がり、音楽にのって自然と体が動く。
 これがサンバの力!
 あまり記憶にないが、携帯のフォルダには確かに熱狂的な雰囲気が残っている。

山車にはデジタルサイネージのような説明的なものもあり面白い
ひとつのチームで数千人、1年かけて、億単位の費用をもってこの日を迎えるそうだ
右下のパネルに74とある。タイムリミットはあと6分、時間配分ミスったであろうこの山車は速やかに通過していった


試練の帰り道


 3組目が終わり午前3時半、回らない頭で試案した結果、4組目を見ずに帰ることにした。
 なにせ朝6時半からコパカバーナ、イパネマ、セントロ街歩きをして、強いお酒のカイピリーニャを飲んだのに仮眠に失敗している。
 またその日にサンパウロ行きのバスに乗ろうと思っていたので、少しでも睡眠を取っておきたかった。

 数万人の観客と同時に帰るのは現実的でない。今ならまだUberも捕まりやすいだろう。人を踏まないようふらふらしながらセトールを後にし、会場の外に出た。

 が、考えが甘かった。
 ガイドスタッフのいるギリギリの場所、大きな道路に通じる道からuberを呼ぶが、すでに相当混みあっておりマッチしない。
 タクシーも全滅のまま15分経ち、やっとマッチしたドライバーからは『通行止めなので〇〇まで来てくれ』と言われ、調べると徒歩11分かかる。
 即刻キャンセルし、地下鉄でホテルの最寄りまで行きUberに切り替えることにした(駅からホテルまで徒歩5分だが、午前4時には絶対に歩きたくないエリアだ)。

 地下鉄には多くの人が乗っていたが、途中のターミナルでかなりの人が降り、車内は急に静かになる。
 地下鉄の駅構内は広く暗いため、一人だけで電車を降りて地上に行くのは嫌だ。しかし私が降りるUruguaiana駅では誰も降りず、仕方なく車内に留まる。次のCarioca駅は乗り入れもあるので、きっと人が降りるだろう、そこに便乗しよう。
 はたして5人くらい降りたので、一緒に地下鉄の改札を出る。しかし彼らは別の出口に行ってしまった。

 最後の難関、出口からUberを待つまでの間に人がいるか?もし居なければ諦めて地下鉄戻ってループしよう…と緊張しながらエスカレーターを上がると、すぐそこに警官が見張りをしていた。
 警官が居てこんな嬉しいことはない。心底ほっとしてパトカーの近くに行きUberを呼ぶと、3分もせず、強面でごつい黒人のLuizが来てくれた。
 到着し、チップをはずみ、煌々と光るホテル入口で待機しているごついスタッフに見守られながら(さすが治安の悪い場所だ)、部屋に戻るやいなや泥のように眠った。


 こうして、念願のリオのカーニバルの長い1日は終わった。

 全組見られないのは勿体なかったが、1組見るだけでも十分元を取ったと思えるくらい素晴らしい経験だった。
 世界最大級のエンターテインメント、もし機会があれば、(送迎付きのツアーで)ぜひ行ってみてほしいと思う。

後記:結果発表

 全ての1部リーグの発表が終了し、リオっ子が大注目の結果発表の日。
私が見たチームに優勝・準優勝は無かったが、2組目のカメレオンのチームが上位の成績だった。
 ルーラのチームは2部に降格。出来栄え以外の何かがあったのだろうか…

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集