カッパドキア(トルコ)の雑記|海外ひとり旅
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世界一周12か国目のトルコ旅行で、カッパドキアに行くかどうかはギリギリまで保留にしていた。とりあえず6泊7日の滞在予定とし、イスタンブール以外の場所に行くかどうかはその時の気分で決めようと思っていたのだ。
ただ、連続して10か国以上に旅行をしていると、一つの都市に概ね2~3泊もすればだいたい雰囲気が掴めることが分かってきた。イスタンブール6泊は私にとっては少々長い。
ムスタファ・ケマル・アタトュルクに敬意を表し首都のアンカラに行くか、パムッカレで古い温泉を楽しむか、奇岩で有名なカッパドキアにするかを諸々検討し、トルコ入りする直前でカッパドキア行きを決めた。
イスタンブールからカッパドキアまでは飛行機で1時間半ほどだが、連日の飛行機にやや食傷気味であったため、11時間の長距離バスで行くことにした。行きは体力を考え日中の便にしたが、帰りは夜行なので1泊分が浮くのも嬉しい。
バスの座席は広くシートもしっかりしており、充電も完備。飲み物とお菓子のサービスもあり、3回の休憩がある快適なバス移動だった。
なお、バスターミナルにもサービスエリアにも英語表記は無い。スタッフも英語が通じにくいので、身振り手振りで何度も確認しながら、ちょっと緊張感のある『海外旅行感』を味わえるのもオツな体験だった。
夜、カッパドキアのギョレメバスターミナルに到着する直前に、バスの窓からライトアップされた岩が見えた。今まで見たことのない不思議な光景で、映画のセットのように現実感が無く幻想的な景色だ。そんなに期待していなかったけど、ここは凄い場所かも…とワクワクしてくる。
バスを降りてすぐ近くのゲストハウスに向かう間も大きな奇岩があちこちに見え、異国情緒あふれる雰囲気に圧倒される。異国というか、違う星に来たような感覚だ。
チェックイン後にすぐ気球ツアーの予約を入れた。実は気球にそこまで興味はなく乗るつもりは無かったのだが、あの光景を見てしまうとさすがに体験したくなったのだ。
ただ残念ながら、滞在中は強風が続き、気球は全便キャンセルで、見ることも叶わなかった。これはちょっと心残り。

カッパドキアには列車が無くバスも少ないため、基本的にはツアーやタクシーで名所を回る。私はツアーもタクシーも好みではないので、遠い観光地に行くことはせず、ひたすら歩き廻ることにした。
ギョレメ周辺に泊まれば、すぐ近くが国立公園なので徒歩圏内でも十分に迫力ある景色が楽しめる。また幹線道路沿いであっても変化の大きい自然を眺められるので、飽きずに歩き続けることが出来るのだ。
ということで、徒歩でいくカッパドキアの思い出を残しておく。


ギョレメ野外博物館(ギョレメ中心部から徒歩20分)
そもそもカッパドキアの奇岩はどういうものなのか。
もともとは数千年万年~数百万年前の火山活動により、火山灰が堆積し固まって出来た凝灰岩(ぎょうかいがん)が雨風によって削られ、時間をかけて出来たものだそうだ。
火山活動により硬い玄武岩も堆積するので、柔かい部分が削られ、硬い部分は残り、キノコ型や煙突型の奇妙な形になっている。
柔かい凝灰岩の浸食は現在進行中であり、景観も少しずつ変化していっているとのこと。
歴史の面でいくと、カッパドキアの拠点となるギョレメには、紀元前から人々が住んでいた。ただローマ・ビザンツ帝国時代にイスラム勢力に迫害されたキリスト教徒がギョレメに避難し、洞窟に隠れ住みひっそりと信仰を守るようになった。
オスマン帝国に支配された後も、帝国が戦略的にイスラム以外の宗教を許容していたため、1923年のトルコ=ギリシャ住民交換が行われるまで、キリスト教徒たちはムスリムと共にこの場所に暮らしていたそうだ。
(ちなみにここで言うキリスト教は、東ローマ帝国の正教会であり、カトリックやプロテスタントではない)
なぜイスラムの国なのに教会が有名なのかな?と思っていたのだが、アヤソフィア然り、トルコはキリスト教も深く根付いている国なのである。
ギョレメ野外博物館では、10~13世紀頃を中心に作られた、洞窟の教会や修道院を見学することが出来る。凝灰岩は水を通さず、温度変化もあまりないため、教会内に描かれたフレスコ画が保存状態良く残っている。
内部の写真撮影は禁止だったが、非常に鮮やかな色で聖書の場面や聖人・殉教者・修道士が描かれており、1000年以上前の絵が残っていることに感動した。
一部、顔の部分が乱暴に削られているものもあったのだが、これはビザンツ帝国時代、偶像崇拝を禁止すべきではという大論争があった時の聖像破壊行為だそうだ。見た時はイスラム勢力が破壊したのかなと思っていたが、ビザンツ皇帝サイドが政治的な意図で行ったらしい。複雑である。
なお、トルコ語でギョレメは『見えない・見てはいけない』を意味するそうだが、キリスト教が隠れ住んでいた町という歴史的背景から来ている。
奇岩や気球のイメージしか持っていなかったが、歴史的にもとても興味深い場所だった。



ウチヒサール城(ギョレメ中心部から徒歩50分ほど)
ギョレメから南西の方角に、トルコ語で『尖った砦』を意味するウチヒサールという町と、町の中心となるウチヒサール城塞がある。
カッパドキアで一番高い建造物(というか岩山)であり、高さ60mの頂上からはカッパドキア全体を一望できる。またこの城は遠くからも見えるので、歩いている時に位置や距離感を把握するのに役立つ場所だった。
岩山をくりぬいた城は防衛や避難のために使われたと言われているが、何しろ自然の岩山なので、いつ頃から使われていたかは諸説ある。3500年前のヒッタイト時代にはすでに利用されていたという説もあるそうだ。
古代ローマからビザンツ帝国時代にイスラムからの侵略を防ぐための場所であったことは間違いないらしい。
入場料を払い中に入ると、頂上まで上がる階段が整備されている。階段から外れて、迷路のような部屋や隠し通路をぐるぐると廻り、岩登りや岩下りをするのも面白い。
ただその時は非常に風が強く、遮るもののない頂上では気を抜くと吹き飛ばされそうだった。さながらロッククライミングのような感覚で、足元要注意で楽しんだ。





ラブバレー(ギョレメ中心部から徒歩1時間ほど)
ウチヒサールからの帰り道に、人気スポットのラブバレーに寄ってみた。
大きく切り込んだ谷の壁面が美しく、柱状になった岩が整然と並び、迫力ある眺めだ。谷底もハイキングが出来るようなのだが、降り方が分からず、上から見下ろす感じでしばし絶景を眺めた。
ウチヒサールの町中で少しだけ撫でてやった野良犬が懐いてしまい、ラブバレーまでの道のり(30分くらい)をずっと付いてきていたので、一緒に座り静かに時間を過ごしていた。
その後、とうとう私が餌を持っていないことを確信したのだろう、ラブバレーからの帰り道にすれ違った観光客に付いていってしまった。
ほっとしたが、あの後どうなっただろうか…



パシャバー渓谷(ギョレメ中心部から徒歩1時間15分ほど)
カッパドキアには『妖精の煙突』と呼ばれる奇岩がたくさんあるが、このパシャバー渓谷はキノコ型の岩で有名だ。別名『修道士の谷』とも呼ばれ、岩窟の中に作った修道院や礼拝所が残っている。
妖精の煙突を近くで見るためには入場料が必要だが、そこに行くまでの道でさんざん面白い形の岩を見ることが出来、また遠目でも十分満足できたので、少し休憩し土産屋などを物色した後、引き返した。





ローズバレー(ギョレメ中心地から徒歩30分ほど)
パシャバー渓谷からの帰り道、徐々に日が傾く時間帯にローズバレーを左手に見ることが出来た。私が歩いていた道は四輪のバギーや乗馬で通る観光客も多く、良いスポットなのだと思う。
夕日が当たるピンク色に染まることからローズバレーと呼ばれるその岩壁は、青空の元でも複雑な色が美しく、見ごたえある場所だった。




以上、ツアーであれば半日程度で回れる場所を時間をかけて歩き(2日間の合計歩数は54000歩)、個人的には満足の行く旅行となった。
カッパドキアにはカイマクルやデリンクユなどの地下都市の跡もあるが、ギョレメからは車で30分ほどかかるため今回は行かなかった。
もし次に行く機会があれば、是非とも気球の再チャレンジと地下都市にトライしてみたいと思っている。




ここのスタッフは(も)日本びいきで、エンジニアリングに興味があるとのこと

ブランチにして1日2食で過ごした
帰りのバスにて
20時にカッパドキアを出発した夜行バスでは、疲れてぐっすり眠れるだろうと思っていたが、案外寝付けなかった。そしてこの帰り道、少し不思議な体験をすることになる。
深夜3時半頃に最後のサービスエリアに止まり、外に出てコーヒーを飲んでいた時のこと。
唐突に『今見ている光景を覚えておきたい』と思った。
真っ暗な異国の地で、これから出会うことの無いであろう人達が、たまたま同じ場所にいて、たばこを吸ったりコーヒーを飲んだりしている。
赤いパーカーを着たスタッフがバスを洗車し始める。長いモップを器用に動かし、隅々まで丁寧に磨き、どこからかホースを持って来て、最小限の動きで洗剤を洗い流し、無表情で去っていく。
そんな光景をぼんやり眺めていると、私も含め、ここにいる人達みんなに色んな人生があり、一期一会の出会いがあり、つつましくも一生懸命生きているんだなあ…と思えてきた。そして全てのことが愛おしく感じられ、ああ、この景色をずっと覚えておこう、と思ったのだ。
今回の世界一周旅行中、感動したり愕然としたり、心が揺れ動くことはたくさんあったが、このサービスエリアの何がそう思わせたのか今でもよく分かっていない。
でもきっと忘れないだろう。つい写真まで撮ってしまったし。


以上がカッパドキア2泊3日の記録だ。
イスタンブールもカッパドキアも、素晴らしい体験が出来た。いかにも異国なのだが、どこかで懐かしく親しみある気持ちになれる魅力ある場所だ。
絨緞詐欺に遭いかけたりチケットを2日分買わされたことなど全く気にならないくらい、トルコが大好きになった1週間の旅行だった。
トルコの次は13か国目となる最後の国、タイへ向かう。
2か月間の世界一周もあと少し、楽しんでいこう。
