バンコク(タイ)の雑記|海外ひとり旅
イスタンブールの空港で、ここ2か月間、ほぼ毎日着ていた薄手のダウンジャケットを捨てた。昨年冬に買ったのだが、色々な国を移動していると信じられないくらい汚れる。もう十二分に元を取った。
これから9時間のフライトを経て向かうのはバンコクだ。一年で一番暑い時期である。その後は4月の大阪に帰るため、トルコで身軽になっておく。
今回の世界一周旅行において、タイは唯一リラックス目的で選んだ旅行先だ。物価も安く気楽に過ごせるだろうと完全にノープランで、バンコクに3泊、プーケットに2泊することになっている。
それにしても。2月3日に羽田を飛び立ってから2か月しか経っていないが、既に半年くらい旅をしている気がする。
以前読んだ誰かのエッセイで、『長生きしたいなら色んな場所に旅行するとよい、新しい経験をすると時間がゆっくり流れるから』というようなことが書かれていたが、まさにその通りだ。
13か国目のタイ旅行が終われば、ペルーから始まった東回りの世界一周旅行は終了だ。
寂しいような、一方で穏やかな日常に戻りたいような、どっちつかずの感情で入国審査を通った。
バンコク初日
空港で、私は少々疲れていた。
カッパドキアから夜行バスでイスタンブールに戻り、バックパックを背負い歩き廻って観光した後、機内泊で朝5時半にバンコクに着陸している。バスでも飛行機でもあまり眠れず、2日ほどまとまった睡眠を取れていない。
アラフォーにはいささかハードな旅程だが、疲れたらどこでも眠れていた若い時の感覚で考えていたのが甘かった。しかもホステルのチェックインは13時なので、さらに半日耐えなければならない。
回らない頭で最小限のタイバーツを引き出し、通勤ラッシュの列車に乗り(幸いにも座れた)、眠らないよう気を付けながら、まずはホステルに向かった。
眠気覚ましと時間稼ぎのため、途中の地下鉄で乗り換えず30分ほど歩くことにした。
地上に出た時の暑さは衝撃的だった。
まだ8時台なのに日差しが強烈で、大阪の真夏並みだ。
ちょっと挫けそうになったが、広い道路を大量に走る2輪車を見ると東南アジアに来た実感が湧き、テンションが上がってくる。
特にホンダのバイクとトヨタ車が目につく。これまでの国では日本のバイクを見たことはなく、日本車も少なかったので、ここでの存在感はちょっと嬉しい。
歩いていたのはオフィスが多いエリアで、狭い歩道にたくさんの屋台が並び、お弁当を50タイバーツ(240円)ほどで売っている。
宿泊先のホステルも1泊2500円ほどと、円安の日本からしてもタイはまだまだお手頃だ。


3泊したRalph Poshtel Sukhumvitは清潔で快適なホステルだった。バンコク中心部のSukhumvit駅に程近く、屋台やショッピングモールもありとても便利。すぐそばにメンズマッサージ店が数軒あり、全身整形のおねえさん達は客引きに余念がないが、夜も治安の悪さは感じなかった。
荷物を預けて近くのスタバに入り、ラテとマフィンで2時間ほど粘って予定を立てる。
チェックインまでの時間で服を買いに行き、その後は仮眠を取ろう。夕方から活動するならチャオプラヤ川クルーズが良さそう。せっかくなのでディナー付きで予約。
明日、有名な三大寺院を見物し、明後日は古都アユタヤに日帰り旅行をしてみよう。ムエタイ観戦も面白そうだったが、WEB予約が上手くいかず断念。
とにかく暑いので、詰め込み過ぎずゆっくり過ごそうと決めた。
初めて使うGrabに乗り、タイ最大の衣料品卸売市場であるプラトゥーナーム市場へ向かう。質はさておきなるほど安い。だだっ広い売り場で無駄に吟味を重ね、黒地のペラペラパンツ120バーツ(580円)とエセナイキの日除けパーカー230バーツ(1100円)を購入。これでタイの装備は完了だ。
帰りはムッとする暑さの中を40分ほど歩く。疲れていても、初めての街は歩きたくなってしまう。
高架下に広い市場を見つけ入ってみた。衣服や食べ物の屋台が並び賑わっている。短い靴下を10バーツ(49円)で購入し、味の素の効いた麺を食べ感動した。やはりアジアは美味しい。

待望の13時になり、冷房の効いた部屋のベッドで2時間弱の仮眠を取った。アラームのバイブが鳴った時、クルーズをキャンセルしようかと思うほど寝足りなかったが、ここ一番の本気を出して何とか起きた。
チャオプラヤ川クルーズ
チャオプラヤ川クルーズにはGrabで向かう。バンコクの夕方は渋滞が激しく、ギリギリの時間に到着。45分の乗車で140バーツ(680円)ほど。
チケットを受け取り、強烈な西日を浴びながら乗船しデッキに上がると、ブッフェの料理がずらりと並んでいた。指定されたテーブルに座る。1人席なので気が楽だ。
クルーズが始まると、化粧の濃い盛り上げ役の女性が船内の説明を行い、すぐに流行歌を歌い出した(しかも割と下手)。ちょっと邪魔だな…と思ったがすぐ気にならなくなった。
まずは冷えたビールを飲み、喉が落ち着いたところで思う存分タイ料理を食べる。欧米の観光客がポテトやパスタを山盛りに取っているのを見て、辛いもの、酸っぱいもの、香草類を美味しく感じる自分の味覚に感謝する。
チャオプラヤ川はタイ中央部を北南に流れる『母なる川』だ。流域は稲作地帯で、水運は経済活動を支え、また重要な観光資源でもある。
水は土砂や排水などで茶色く濁っており、都市で現役バリバリに活動している川、という感じでとても良い(上流は綺麗なのだろうけど)。
また川沿いには王宮や寺院があり、夕日に照らされ美しい影を見せていた。
食事を終えて近代的なビルやホテルを眺めていると、なんだか旅行が終わったような、切ない気分になった。バンコクに来てまだ異国情緒を感じられていない気がする。






すっかり暗くなった帰り道、この旅行で初めてのeSIMトラブルでネットが繋がらなくなった。
海外旅行がどれだけネット頼りなのかを痛感する。昔はオフラインで旅行していたのに、今では考えられない。
なんやかんやでホステルに辿り着き、22時過ぎから翌日10時半まで爆睡した。こんなに長時間眠ったのは久しぶりだった。
三大寺院巡り
バンコクに来たら寺院巡りは押さえておかねばならない。
涼しく人が少ない朝に行くのが良いらしいが、寝過ごしたため11時半にホステルを出た。
寺院では現金が必要になる。タイは両替所のレートが良いそうなので近くで両替したところ、ほぼ市場レートの価格であることに驚く。
日本円はドルやユーロに次いでタイで優遇されるようだ。カードよりも両替の方がお得だなんて嘘みたい。
地下鉄Sukhumvit駅からSanam Chai駅まで行き、トゥクトゥクの客引きを横目に炎天下を15分ほど歩くと、昨日クルーズ船から見た王宮にたどり着いた。

王宮(グランドパレス)
1782年に、当時の王様ラーマ1世(現在のタイ王室の初代)がバンコクに首都を移し王宮の建設を始めたそうだ。歴代の王が増改築を繰り返し、今や100以上の建物があるという。
現在の国王であるラーマ10世は王宮には住んでいないが、王室儀式や来賓対応の際には王宮が使われているとのこと。
また、王宮の中にあるエメラルド寺院(ワット・プラケオ)は王室の守護寺院で、タイで最も神聖な寺院とされている。ヒスイで作られた高さ66㎝の本尊が有名だ。かなり高い場所に祀られており、あまりよく見えなかったが、本堂ではみな思い思いに祈りを捧げていた。

現王朝の王名(ラーマ●世)はラーマーヤナのラーマ王子が由来だそう



王宮を悪から守る結界の役割で、空港にもカラフルなヤックが複数体立っていた
ワット・アルン(暁の寺)
王宮を出て、チャオプラヤ川をボートで渡りワット・アルンへ向った。昨日のクルーズでひときわ美しかった寺だ。17世紀のアユタヤ時代に起源を持つそうなので、王宮よりも古い。
入ると大きくカラフルな仏塔に圧倒される。近づいてみると陶器のような素材を用い、美しい細工が全体に施されている。
仏塔には急な勾配の階段があり、7mくらいの高さまで登りぐるりを歩く。派手な衣装を着てメイクばっちりの人々がカメラにポーズを取っており、写り込まないよう注意が必要。ここは人気の撮影スポットでもあるようだ。
ベンチに座り休憩していると、日本のツアーがやってきて、初老の男性ガイドが説明を始めた。曰く、塔を支えている像(タイの守護神)があり、下の像は厳しい表情で、上の像は穏やかな表情である。石段が急なのは、天国に行くのは大変だけど、地獄に落ちるのは怖いから悪いことしちゃだめよ、という戒め。寺院内を歩く時は右回りに行くと良い方角だとか。
良い情報を聞いた。こういう話を聞けるのはガイドが居てこそだ。
ガイドに盗み聞きのお礼を伝えると、ツアーに着いてきて勉強しますか?と言ってくれた。先ほど左回りに行ってしまったので、右回りして来ますねと言って別れた。




ワット・ポー(寝釈迦仏のある寺)
ワット・アルンから小舟でチャオプラヤ川を渡り、ワット・ポーへ向かう。行きは30バーツ(145円)で帰りは5バーツ(24円)とボート価格が違ったが、船のランクだろうか。
寺に入る前にフードコートで遅い昼ごはんを食べる。スイカシェイクをがぶ飲みし、暑さを少し和らげてから出発。

ワット・ポーは16世紀のアユタヤ時代に作られた寺院だ。医学・天文学・文学などの知識が集積されており、国立大学のような位置づけだったそうだ。
またここにある寝釈迦仏は、ラーマ3世が仏教の中心地としてワット・ポーを確立させたい狙いから作られたとか。ブッタが輪廻解脱した瞬間の悟りの完成を現しており、足裏に螺鈿で施された108の吉兆文様も圧巻だ。




寺院内部には医学の場の歴史なども展示されており、ここがタイ式マッサージの本場であることも知った。
その場所を出ると、寺らしからぬ現代的な建物があり、マッサージメニューの看板が出ている。なんと、これはやるしかないでしょう。


中に入ると思った以上に混みあっており、20分ほど待ってから、ハッカ油の全身マッサージ(60分680バーツ≒3300円)を受けた。足を重点的にお願いしたのだが、ツボを的確に押され、我慢できる上限くらいには痛いマッサージだった。
翌日、好転反応なのか少しの頭痛とだるさが出たが、本場のタイマッサージを受けた経験は特別な思い出になった。


帰り道、ホステル近くのセブンイレブンで1回分の洗濯洗剤とミニサイズの歯間ブラシを買い、ふと、こんな気の利いたものを手軽に買える国ってどのくらいあるんだろうと思った。
この便利さや快適さを当然だと思うと、満足を感じる基準がどんどん高くなってしまう。それはもはや精神的に不幸なのではないか。
数多ある国の中で日本で暮らせていることにきちんと感謝しよう、と思った。
また、バンコクのこの日本に近い便利さが、何となく異国情緒を感じさせない理由かもしれない…と感じた。
次回はアユタヤと、特に何もしなかったプーケットの記録を書こうと思う。
