プーケット(タイ)の雑記|海外ひとり旅
早朝にホステルをチェックアウトし、バンコク・スワンナプーム空港に到着したのは7時。ラウンジかカフェでゆっくり朝食を食べようと思い、搭乗の2時間半前に到着した。
ここは保安検査が搭乗ゲートの直前にあるタイプだ。免税店やレストランを横目に見ながらも、まずは保安検査を通らなきゃと思い、そのまま行く。
そして検査を通過した先には小さな売店しかなく(薄々気づいていたが)、朝食を食べ損ねた。このミスは2回やった。空港では何よりも保安検査を済ませないと落ち着かないからだ。
売店で140バーツ(727円)のぼったくりコーヒーを買い、2日前にセブンイレブンで買ったぼそぼそのレーズンパンを食べる。
ここ2か月ほど、バックパックとショルダーバッグの2つの荷物で過ごしているが、足りないものは何もない。今回の世界一周旅行でのフライトはこれで26回目だが、このままずっと移動しながら暮らしていけるような気がする。
そんなことを考えていると搭乗時間になった。
プーケット行きの乗客はほぼ観光客のみだった。可愛い紙袋に入ったチキンラップと水を渡されたので昼食に取っておく。タイ航空は3回乗ったが、どの機内食も気が利いていた。
エメラルドグリーンの海と島が見え始め、1時間半ほどのフライトで小さな空港に到着した。
予約したゲストハウスの近くまでバスが出ているため、空港のバス乗り場でしばし待つ。ここはバンコクより700キロほど南に位置するが、風があるので暑さは少しましだ。ゆったりした時間が流れており、タイ屈指のリゾート地とは思えないくらい鄙びた雰囲気だった。
しばらくしてバスは満席となり、予定時間より大幅に遅れ出発した。
島の西側にあるバンタオビーチ行きのバスは島の中央を南に走る。小さな商店が並ぶ素朴な町だが、セブンイレブンとカンビナスショップ(大麻の店)の多さがここを観光地たらしめている。
車窓の景色を楽しんでいると、ふと、バスがどの停留所にも停まっていないことに気付いた。マップで確かめると間もなく降車地点だ。急いで運転手に声を掛け降ろしてもらう。
私のようにビーチに行かず途中下車し、辺鄙な場所に泊まる客は少ないのだろう。意思表示しないとバスが停まらないのは海外あるあるだが、危ないところだった。
バスを降りてゲストハウスまで20分程度だ。13時ごろだっただろうか、日傘をさし、機内食のチキンラップを片手に、誰も歩いていない道路を独り歩く。
歩きながら、なぜ私はタクシーを使わないのかな、と考える。
私にとっては、早く快適な移動のプライオリティがそこまで高くない。移動自体が好きで目的でもあるから、早く行って観光や自由時間を多く取る、という発想になりにくい。タクシーを使うのは、他の移動手段がない時・身の危険がある時・急遽の予定に間に合わなくなる時くらいだろうか。
もちろん一人旅に限るが。
今回の旅行では何となく1日10000歩以上を意識していたのだが、帰国し計算すると平均約14000歩だった。4日に1回は飛行機移動があったことを踏まえると、なかなかの記録(?)だと思う。
何故そんな歩くことにこだわっていたのだろうか。
『色んな国に行った』ではなく『色んな国を歩いた』と言える経験が欲しかったのかもしれない。
道中、イスラム教の学校で女子生徒と挨拶したり(プーケットはマレーシアが近くムスリム人口が多い)、売店で800ml6バーツ(29円)と格安の水を購入し4バーツのチップを振舞って驚かれたり、現地の雰囲気を楽しみながらゲストハウスに到着した。


オーナーは非常に明るい人で、久しぶりの宿泊客とあって喜んでくれた。部屋は広く簡易なキッチンもあり、机もあって(ゲストハウスや安いホテルは机が無いことが多い)快適だ。最後の宿が当たりで良かった。

自転車を借り、その日はショッピングモールなどを寄り道しながら40分ほどかけてバンタオビーチへ向った。
ここは全長6kmと長い海岸線が続く静かなビーチだ。近くにラグーナというリゾート施設があり、比較的高級なエリアのようだった。
水着を買って泳ぐかどうか迷ったが、荷物の管理と日焼け止めの面倒が勝ち、海を眺めるだけにした。プーケットにまで行って海に入らず、マリンアクティビティも一切やらない。その時の気分に正直に行動できるという意味では、とても自由で贅沢なことだ。
短パンとサンダルで生ぬるい波を浴びながらビーチを散歩し、白い砂を歩き疲れたらマンゴージュースを飲んで、しばしどこまでも続く海岸と青い海を眺めて過ごした。



帰りにスーパーに寄った。タイでは、これまでの国で見かけなかった日本の商品や食材が普通に売られている。旅行中は日本食を食べないと決めていたので(サンパウロ・リベルダージのうどんを除く)、タイのカップ麺とプロテイン、生野菜を買った。カップ麺は甘辛い春雨で、好みの味だった。

翌日は、Googleマップで近くのビーチを調べ、まずはHaad Laem Singビーチに行き、その後Surinビーチで夕日を見ることにした。
Haad Laem Singビーチまでの道のりはアップダウンが激しい。坂の途中に展望台があり、エメラルドグリーンと白砂のビーチを見下ろすことが出来た。あそこに行くんだ!とワクワクする。見た感じ鬱蒼とした森に囲まれているため、自転車は展望台に置いておき、あとは下へ歩いていく。

このビーチはマップでも行き方が表示されないため、とりあえず道なりに歩いてみた。少ししてリゾートホテルが見えてくる。宿泊客ならダイレクトにビーチへ行けるのだろうが、一般向けの入口が一向に見つからない。
ホテルスタッフ合計4人にビーチへの行き方を尋ね、道とも言えない水路の脇を通り、やっとビーチに到着。ただ、そこはKamaraという別の場所だった。
先ほど展望台から見たHaad Laem Singビーチの方がずっと素敵だったのはちょっと残念だったが、パパイヤシェイクで乾いた喉を潤しながらゆっくり休憩した。タイに来てからは本当に冷たいジュースが欠かせない。


30分程過ごしてから、Surinビーチへ移動するため、自転車を置いた展望台まで戻る。道すがら、地元民と観光客のバイク2台に乗っていくか?と声を掛けてもらった。地元民は「この先は歩いていけないよ」と心配していたが、歩けることを知っているのでお礼を言って断った。
でも、バイクでプーケットを走るのはとても楽しいだろう。適度に風があり、道は混んでおらず、美しい空と海があり、どこにでも停められる。
Surinビーチはこぢんまりした場所で、変な音楽も流れておらず、穏やかに過ごせる場所だった。
直射日光が当たらない木の根元に寝転がりしばらく昼寝をする。どこからか漂うカンビナスの匂いが気になり、移動してまた寝転ぶ。
日没までの2時間ほど、何もせずぼんやりと過ごした。
思考を深めるわけでもなく、思い出に浸るわけでもなく。
徐々に変わりゆく空の色と、たまに海上を飛ぶパラグライダーをぼーっと見て、そこに特段何の観照も見出さず。
旅の終わり時ってこんな感じなのかな…などと思いつつ、海に沈む夕日はやっぱり、感動した。



これが何もしなかったプーケットの記録。
私にとっては丁度良い『旅の終わり時』だったなと思う。

4月7日の早朝、プーケットからバンコク経由で関空に到着した。
2か月と4日ぶりの日本で最初に撮った写真は、空港トイレの注意書きだ。

トイレットペーパーがちぎれやすいことに理解と協力を求める国が、日本の他にどこにあろうか。
これを見て、日本に帰ってきたなあ、としみじみ思い、帰国報告と共に家族にこの写真を送ったのであった。
