毒親とダミ声の猫 vol.1 結婚と勘当
毒親とダミ声の猫
〜そこにある愛に気づくまで〜
母を「毒親」だと思っていたワタシが、
長い年月をかけて見つけたもの。
全10話の連作エッセイです。
マガジンからも続けて読むことができます。
【目次】
① 結婚と勘当
② 学費の重さ
③ 母の喪失
④ 真っ暗な家
⑤ 確かな”毒”
⑥ 愛猫の死
⑦ 母の苦悩
⑧ 軽くなる心
⑨ 記憶違い
⑩ 金ちゃん
結婚と勘当
ワタシの実家には、ダミ声の猫がいる。名前は「金ちゃん」。母の愛猫だ。
その鳴き声を文字にするのは難しい。普通の猫のように「ニャーニャー」とは鳴かないからだ。
無理やり表現するなら、「ヌギャー、ヌギャー」といった感じだろうか。
毛色は茶トラ。尻尾は途中で丸まっていて、毛並みもボサボサ。一目惚れされるような猫では決してない。今年で十一歳になるという。
ワタシが「可愛い」とは到底思えないその猫を、母はとても可愛がっている。
母は「もう猫は飼うまい」と思っていたそうだ。しかし、まだ目も開かないような子猫がダンボールに入れられて捨てられているのを見つけ、放っておけなかったらしい。
母が金ちゃんを呼ぶとき、声はワントーン高くなる。
「金ちゃーん♡、金ちゃーん♡」
そう呼ぶと、金ちゃんは「ヌギャー、ヌギャー」と返事をしながらやって来る。
先日、ワタシは久しぶりに一人で実家へ帰った。
去年の三月、母と電話で大喧嘩をしたとき、「もう二度と帰ってくるな」と言われて以来、心に澱のように溜まっていたものが、ようやく晴れたからだ。
ワタシもそのとき、「もう二度と帰るものか」と言いたかった。
だが、その言葉は飲み込んだ。口にしてしまえば、本当に取り返しがつかなくなりそうな気がしたからだ。
その代わり、メールでこう送った。
「お母さんはものすごく口が悪いから、兄に捨てられないようにね」
それを最後に、ワタシから連絡を取ることはできなかった。
ワタシが大人になってからというもの、母とはずっと上手くいっていなかった。
母は事あるごとに禁止や命令をしてきた。
結婚を大反対されたときもそうだった。
「ワタシの人生なのだから、責任はワタシが取る。母からとやかく言われたくない」
そう思ったワタシは、黙って入籍した。
その結果、勘当された。
妹の結婚式にも呼ばれなかった。
子どもが生まれたとき、父が「教育上よろしくないから」と母を説得し、ようやく実家への出入りが許された。
それ以来、母は事あるごとに言った。
「あんな男と結婚して」
そのたびに言い争いになった。
ワタシも母も、一歩も引かなかった。
次第にワタシは、母とは相当相性が悪いのだと思うようになった。
占星術でも、母とワタシの太陽はぴったり九十度のスクエアという、あまりよろしくない角度だった。それもまた、その思いを強くさせていた。
その一方で、ワタシは自分の子どもとはとても仲が良かった。
子どもとは上手くいくのに、なぜ母とは上手くいかないのだろうとよく考えていた。
しかし近年は、母と上手くいかない理由を探すのはやめ、「相性が悪いから仕方がない」と考えることで、自分を慰めていた。
きのうちまみの背景にある物語を、もっと深く知りたい方は、こちらもあわせてお読みください。

いいなと思ったら応援しよう!
地域猫さんたちのご飯に使わせていただきます🙏