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ぶった斬るシリーズ 第90弾 南鳥島レアアース問題 ――「中国に、レアアースという外交カードを切らせない」


♦️前書き


南鳥島沖で、
日本はレアアースを含む泥の採取に成功した。

場所は、日本の排他的経済水域。
水深は、およそ5600メートル。

これまで繰り返されてきたのは、
「存在する可能性」の話だった。

今回は違う。
実際に掘り、
実際に採り、
持ち帰った。

調査段階は終わった。
話は、実行の段階に入った。

2027年には、
本格的な採掘試験が予定されている。

この出来事は、
希望でも、予測でもない。

事実だ。


♦️登場人物紹介


▪️ミリム  
「破壊の暴君(デストロイ)」の異名を持つ魔王。  
面白そうな違和感を見つけると、考える前に首を突っ込む。  
斬ってから整理するタイプで、結論より前提を壊す。

▪️ヴェルドラ  
暴風竜。  
ミリムとは旧知の仲で、話を聞きながら素朴な疑問を投げる。  
読者とほぼ同じ高さで首を傾げる役。

♦️第1章  
採れた、という事実


ヴェルドラ  
「南鳥島って、あのちっこい島だろ?  
 なんかニュースになってたが、結局なにが起きたんだ?」

ミリム  
「起きたのは、単純な話だ。  
 日本が、日本の海で、資源を実際に採ってきた」

ヴェルドラ  
「調査じゃなくてか?」

ミリム  
「調査はもう終わってる。  
 今回は“採取に成功した”って発表だ」

ヴェルドラ  
「……それ、だいぶ違うな」

ミリム  
「違う。  
 可能性の話が終わって、現実の段階に入った」

ヴェルドラ  
「どこだ?」

ミリム  
「南鳥島沖。  
 日本の排他的経済水域だ」

ヴェルドラ  
「水深は?」

ミリム  
「約5600メートル。  
 深海だが、届く場所だ」

ヴェルドラ  
「つまり、日本の権利の範囲で?」

ミリム  
「そう。  
 誰に断る話でもない場所だ」

ヴェルドラ  
「で、採れたのは?」

ミリム  
「レアアースを含む泥。  
 産業利用できるかどうかを、ここから本気で検討する段階に入った」

ヴェルドラ  
「ほう……  
 それって、かなり前進じゃないか?」

ミリム  
「前進だよ。  
 だからこそ、話はここで終わらない」

ヴェルドラ  
「どういう意味だ?」

ミリム  
「“採れた”という事実は、  
 日本が一歩前に出た、という意味だからだ」

ヴェルドラ  
「前に出た?」

ミリム  
「今までは、  
 持っていない側、依存する側だった。  
 今回は違う」

ヴェルドラ  
「……持つ側に回った、と?」

ミリム  
「正確には、  
 “持てるかもしれない側”に立った」

ヴェルドラ  
「たったそれだけで、そんなに変わるのか?」

ミリム  
「変わる。  
 立つ場所が変わると、  
 見られ方も、絡まれ方も変わる」

ヴェルドラ  
「絡まれる前提か」

ミリム  
「もう、絡まれている」

ヴェルドラ  
「……もう?」

ミリム  
「中国は、  
 南鳥島近くの公海に、すでに出てきている」

ヴェルドラ  
「最初から、来てるってわけか」

ミリム  
「だからこれは、  
 遠い未来の話でも、仮定の話でもない」

ヴェルドラ  
「“採れた”瞬間から、  
 次の段階に入った、と」

ミリム  
「そう。  この事実だけは、動かない」


♦️第2章  
中国は、もう動いている


ヴェルドラ  
「ちょっと待て。  
 “もう出てきている”って、どういうことだ?」

ミリム  
「文字通りだ。  
 南鳥島の周辺、公海の話だ」

ヴェルドラ  
「公海なら、問題ないんじゃないのか?」

ミリム  
「問題“ないように見える”だけだ。  
 中国は、そういう場所を選ぶ」

ヴェルドラ  
「どういう意味だ?」

ミリム  
「日本の排他的経済水域の外。  
 でも、限界まで近い場所」

ヴェルドラ  
「ギリギリ、ってやつか」

ミリム  
「そう。  
 法的には合法。  
 でも、実務的には圧力になる」

ヴェルドラ  
「圧力?」

ミリム  
「調査船を出す。  
 何を調べているかは、はっきり言わない。  
 でも“そこに居続ける”」

ヴェルドラ  
「それだけで、効くのか?」

ミリム  
「効く。  
 現場は常に気を遣うことになる」

ヴェルドラ  
「事故が起きたら面倒だしな」

ミリム  
「そう。  
 トラブルが起きれば、  
 “日本が緊張を高めた”という話にすり替えられる」

ヴェルドラ  
「……いつもの手口だな」

ミリム  
「いつもの手口だ。  
 南シナ海で何が起きたか、見てきたはずだ」

ヴェルドラ  
「じゃあ、今回も?」

ミリム  
「今回“”じゃない。  
 今回“だから”だ」

ヴェルドラ  
「採れたから、か」

ミリム  
「採れる可能性が、現実になったからだ」

ヴェルドラ  
「まだ本格採掘じゃないのに?」

ミリム  
「関係ない。  
 中国は“”の段階で潰す」

ヴェルドラ  
「潰す、か……」

ミリム  
「正面からは来ない。  
 抗議もしない。  
 制裁も言わない」

ヴェルドラ  
「じゃあ、何をする?」

ミリム  
「居座る。  
 観測する。  
 空気を作る」

ヴェルドラ  
「嫌なやり方だな」

ミリム  
「でも、一番効果的だ」

ヴェルドラ  
「日本は、それを分かってて動いてるのか?」

ミリム  
「そこが、次の話になる」

ヴェルドラ  
「……嫌な予感しかしないな」

ミリム  
「安心しろ。  
 “知らなかった”段階は、もう終わった」

ヴェルドラ  
「終わった?」

ミリム  
「専門家も、はっきり言っている。  
 “妨害は来る”と」

ヴェルドラ  
「最初から、前提なんだな」

ミリム  
「前提だ。  
 だから問題は、中国じゃない」

ヴェルドラ  
「……来るのは分かってる相手、か」

ミリム  
「そう。  
 分かっている相手に、  
 どう対応する設計になっているか」


♦️第3章  
狙っているのは、中国だ



ヴェルドラ  
「なあミリム。  
 さっきから話を聞いてるとよ、  
 やっぱ中国が全部の元凶じゃないのか?」

ミリム  
「“来る”という意味では、そうだ」

ヴェルドラ  
「じゃあ、問題は中国だろ?」

ミリム  
「違う。  
 問題は、“中国がやると分かっていること”に  
 どう対応してきたかだ」

ヴェルドラ  
「対応?」

ミリム  
「中国の手口は、説明するほどでもない。  
 南シナ海で見た“あれ”を、そのまま持ち込むだけだ」

ヴェルドラ  
「調査、居座り、最後は共同管理……か」

ミリム  
「そう。  
 だから次は“中国が来るか”じゃない。  
 “来たときに日本が止まるか”だ」

ヴェルドラ  
「南鳥島沖も、同じ流れか?」

ミリム  
「同じだ。  
 場所が違うだけで、手口は変わらない」

ヴェルドラ  
「でも、南鳥島は日本のEEZだろ?」

ミリム  
「だから来る。  
 早い段階で“止める空気”を作りに来る」

ヴェルドラ  
「空気?」

ミリム  
「危ない。  
 刺激するな。  
 経済が壊れる。  
 被害総額が出る」

ヴェルドラ  
「……それ、誰が言ってきた?」

ミリム  
「立憲民主党、共産党、社民党。  
 それに“腰が引けた与党議員”だ」

ヴェルドラ  
「中国じゃないのか?」

ミリム  
「中国は、カードを“ちらつかせただけ”だ」

ヴェルドラ  
「レアアースか」

ミリム  
「台湾情勢を巡る発言のあと、  
 “輸出規制の可能性”を匂わせた」

ミリム  
「“被害総額”という試算が、  
 いつの間にか“確定ダメージ”みたいに使われた」

ヴェルドラ  
「仮定が、事実に化けたわけか」


ミリム  
「“中国を刺激するな”  
 “現実を見ろ”  
 “対話が先だ”  

 そう言って、全部止めた」

ヴェルドラ  
「止めたのは、中国じゃないな」


ミリム  
「そう。  日本が“自分で差し出したカード”だ」


ヴェルドラ  
「じゃあ中国は?」

ミリム  
「何も言わず、見ていただけだ」

ヴェルドラ  
「自分でカードを切った、ってことか。
情けない話だな」

ミリム  
「だから南鳥島は重要なんだ」

ヴェルドラ  
「レアアースの確保?」

ミリム  
「日本のEEZで、  
 日本が、  
 自分の意思で掘るという事実だ」

ヴェルドラ  
「中国は、それが嫌なんだな」

ミリム  
「嫌どころか、  
 前例を壊される。
 “他国の資源は、圧をかければ止まる”  
 この前例だ」

ヴェルドラ  
「だから妨害する」

ミリム  
「だから出てくる。  
 だから既成事実を狙う」

ヴェルドラ  
「最後は?」

ミリム  
「“国際資源だ”  
 “共同管理すべきだ”  
 そう言って、話をすり替える」

ヴェルドラ  
「まるでジャイアンだな」



ヴェルドラ  
「じゃあ今回の南鳥島は?」

ミリム  
「中国にカードを切らせないための一手だ」

ヴェルドラ  
「なるほどな……  
 これは資源の話じゃないな」

ミリム  
「主権の話だ」


♦️第4章  
今回は、なぜ止まらなかったのか



ヴェルドラ  
「でもよミリム。  
 今まで散々止められてきたのに、  
 今回は、なんで止まらなかったんだ?」

ミリム  
「理由は1つじゃない」

ヴェルドラ  
「複合か」

ミリム  
「まず、中国依存は“もう絶対”じゃなくなった」

ヴェルドラ  
「2010年のレアアースショック以降だな」

ミリム  
「そう。  
 都市鉱山、  
 代替素材、  
 供給先の分散」

ヴェルドラ  
「止まっても即死はしなくなった」

ミリム  
「“致命傷”じゃなくなった、が正確だ」

ヴェルドラ  
「それだけで空気は変わるな」

ミリム  
「次に、被害総額の数字だ」

ヴェルドラ  
「6600億円」

ミリム  
“3か月止まったら”  
 “最悪の場合”  
 そういう前提付きだと、  
 皆が理解してしまった」

ヴェルドラ  
「魔法の数字じゃなくなった」

ミリム  

「恐怖を煽る言葉として、  
 効かなくなった」

ヴェルドラ  
「でも中国はカードを切れるだろ?」

ミリム  
「切れない」

ヴェルドラ  
「なぜ?」

ミリム  
「中国も完全停止はできない。  
 返り血が飛ぶからだ」

ヴェルドラ  
「だから“脅し”として使うのか」

ミリム  
「本気で切れないカードほど、脅しに最適だ」

ヴェルドラ  
「今回は?」

ミリム  
「今回は、日本が引かなかった。
 正確には、  
 “引かせる言葉”が効かなかった」

ヴェルドラ  
「空気が変わった、と」

ミリム  
「もう1つある」

ヴェルドラ  
「何だ?」

ミリム  
「深海だ」

ヴェルドラ  
「5600メートル」

ミリム  
「簡単に真似できない。  
 簡単に奪えない。  
 簡単に既成事実化できない」

ヴェルドラ  
「中国でも、すぐには無理か」

ミリム  
「だからこそ、  
 “今のうちに止めたい”」

ヴェルドラ  
「止まらなかった理由が、  
 妨害が来る理由にもなってるわけだ」

ミリム  
「そういうことだ」

ヴェルドラ  
「じゃあ今後は?」

ミリム  
「もっと露骨になる」

ヴェルドラ  
「調査船、空母、漁船……」

ミリム  
「全部来る」

ヴェルドラ  
「怖がらせに?」

ミリム  
「“既成事実を作れるか”の  
 テストだ」

ヴェルドラ  
「日本は?」

ミリム  
「今回と同じだ。  
 ①調査を継続する  
 ②予算を途切れさせない  
 ③現場の航行・作業を中断しない  
 この3つを守るだけだ」

ヴェルドラ  
「シンプルだな」

ミリム  
「主権は、  
 声の大きさじゃなく、  
 止まらなかった回数で守られる」

ヴェルドラ  
「なるほど……  
 これは実験でもあるわけだ」

ミリム  
「中国に対する実験であり、  
 日本自身に対する試験だ」

ヴェルドラ  
「落ちたら?」

ミリム  
「南シナ海と同じ未来だ」

ヴェルドラ  
「受かったら?」

ミリム  
「“止められない国”になる」

ヴェルドラ  
「重いな」

ミリム  
「でも、  
 もう始まってる」


♦️第5章  
止めさせない仕組みは、どこにあるか



ヴェルドラ  
「ミリム。  
 “止まらないことだ”ってのは分かった。  
 でもそれ、どうやって実現する?」

ミリム  
「政治だ」

ヴェルドラ  
「身も蓋もないな」

ミリム  
「でも事実だ。  
 南鳥島沖のレアアース開発を止めてきたのは、  
 中国じゃない」

ヴェルドラ  
「日本の政治、だったな」

ミリム  
「正確には、  
 “止められる構造”を残してきた政治だ」

ヴェルドラ  
「構造?」

ミリム  
「国会で、  
 予算を止められる。  
 委員会で、  
 審議を引き延ばせる。  
 政権が弱ければ、  
 空気で止まる」

ヴェルドラ  
「今まさに、それだな」

ミリム  
「だから結論は単純だ」

ヴェルドラ  
「何だ?」

ミリム  
「与党が、  
 単独、もしくは安定過半数を持つこと」

ヴェルドラ  
「選挙の話か」

ミリム  
「逃げずに言う。  
 南鳥島のレアアースは、  
安全保障政策だ」

ヴェルドラ  
「経済じゃなく?」

ミリム  
「経済“”だが、  
 最終的には主権の話だ」

ヴェルドラ  
「じゃあ野党は?」

ミリム  
立憲民主党、共産党、社民党。  
 彼らは一貫してこう言ってきた」

ヴェルドラ  
「“中国を刺激するな”」

ミリム  
「そう。  
 これは理念じゃない。  
 実績だ」

ヴェルドラ  
「与党が弱いと?」

ミリム  
「妥協が始まる。  
 修正が入る。  
 検討が増える。  
 そして止まる」

ヴェルドラ  
「中国は何をする?」

ミリム  
「何もしない。  
 日本が自分で止まるのを、  
 待つだけだ」

ヴェルドラ  
「一番安い方法だな」

ミリム  
「だから中国は、  
 日本の選挙を“よく見ている”」

ヴェルドラ  
「南鳥島と、選挙が繋がるのか」

ミリム  
「繋がる。  
 与党が過半数を失えば、  
 南鳥島は止まる可能性が跳ね上がる」

ヴェルドラ  
「つまり?」

ミリム  
「南鳥島沖のレアアース開発は、  
 “技術”の問題でも、  
 “資源”の問題でもない」

ヴェルドラ  
「何の問題だ?」

ミリム  
「国民が、  
 どの政治構造を許すか、という問題だ」

ヴェルドラ  
「選挙で?」

ミリム  
「そう。  はっきり言う」

ヴェルドラ  
「……」

ミリム  
「南鳥島を掘り続けたいなら、  
 政策を止めない議席数を  
 与党に与え続けるしかない」

ヴェルドラ  
「綺麗事なしだな」

ミリム  
「綺麗事を言った国から、  
 主権を失ってきた」

ヴェルドラ  
「じゃあ5章の結論は?」

ミリム  
「中国を止める方法じゃない」

ヴェルドラ  
「じゃあ?」

ミリム  
「日本が、  自分で自分を止めない方法だ」

ヴェルドラ  
「それが?」

ミリム  
「選挙で、  
 “止めない構造”を選び続けること」

ヴェルドラ  
「南鳥島は?」

ミリム  
「その結果が、  初めて形になる場所だ」

ヴェルドラ  
「……重いな」

ミリム  
「でも、誤魔化さなかった」

ヴェルドラ  
「確かにな」

ミリム  
「止まるポイントは3つだ。  
 ①予算(概算要求・補正)  
 ②法(海洋・資源開発の制度設計)  
 ③現場(海保・自衛隊・作業船の運用)  
 ここが連動して初めて“継続”になる」

♦️後書き  
 南鳥島は、試金石だ


南鳥島沖のレアアース開発を、  
これまで止めてきたのは中国じゃない。

日本自身だ。

試算が独り歩きし、  
政治が萎縮し、  
判断が止まってきた。

今回は、それが起きなかった。

深海だからでもない。  
レアアースだからでもない。  
技術が凄いからでもない。

「止める理由」が、  
もう通用しなくなっただけだ。

だが、それは一度きりの話かもしれない。

予算。  
議席。  
委員会。  
選挙。

止める装置は、  
今も国内に全部そろっている。

中国は、それを知っている。  
だから何もしない。  
日本が自分で止まるのを待つ。

一番安く、確実な方法だからだ。

南鳥島は、未来の夢じゃない。  
希望の象徴でもない。

これは、  
日本が「次も止まらない国でいられるか」を  
試されている場所だ。

合格か、不合格か。  
それを決める答案用紙は、  
もう国民の手の中にある。

ミリムは、そう判断している。


Fin


魔王ミリムがニュースと社会をぶった斬る!
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※過去の記録・思考の蓄積は、メンバーシップ「Mirimの作品庫」にまとめています。
Bistro陽炎も第1章から順に読めます。


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