ぶった斬るシリーズ第87弾「それ、前からじゃなかったっすか?」

記事要約
元モルガン銀行東京支店長・藤巻健史は、
自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し「高市政権」が誕生した場合、
日本経済はバブル崩壊を遥かに超える危機に直面すると警告している。
藤巻は、高市氏が掲げる積極財政・減税・財政出動が、
英国で起きた「トラスショック」と同様の混乱を招く可能性があると主張。
異次元金融緩和を続けた結果、日銀は国債とETFを大量に抱え込み、
利上げも資産売却もできない「機能不全」の状態に陥っているとする。
そのため、政府の財政拡張と日銀の金融政策が同時に進めば、
資産インフレと円安インフレが重なり、
制御不能な物価上昇に発展する危険があると述べている。
さらに、利上げを行えば日銀は保有国債やETFの評価損で
債務超過に陥る可能性があり、
通貨の信認が崩れれば円は急落し、
最悪の場合はハイパーインフレに至ると警告する。
藤巻は、こうした状況下では為替市場で円売りが加速し、
年内に1ドル180円に達しても不思議ではないと指摘。
政府・日銀による為替介入も、外貨準備や政策制約により
十分な効果を発揮できないと主張している。
♦️前書き
正直に言うね。
この記事を最初に読んだとき、
ミリムも、よく分からなかった。
円が終わる。
1ドル180円。
バブル崩壊より酷い未来。
言葉は強い。
でも、どこか引っかかる。
だって、
円が危ない話も、
日銀が無理してる話も、
国債が増えすぎてる話も。
それ自体は、
今日突然始まった話じゃない。
なのに、
「今」「選挙前」「高市政権」
この3つが一気に結びついた瞬間、
急に話が“怖い物語”になる。
それが、どうにも気持ち悪かった。
怖がるべきなのか。
それとも、
怖がらされているのか。
判断がつかないまま、
でも目を逸らせない。
だから今回は、
分かったフリはしない。
理解した結論も出さない。
ただ、
この話の“つなぎ方”に残る違和感を、
そのまま置いていく。
それを、
ぶった斬る。
♦️登場人物紹介
▪️ミリム
「破壊の暴君(デストロイ)」の異名を持つ魔王。
退屈を嫌い、面白そうな違和感には即首を突っ込む。
考える前に斬り、斬ったあとで構造を見る。
今回も「分からないまま」で踏み込んでいる。
▪️ヴェルドラ
暴風竜(ストーム・ドラゴン)。
ミリムとは長い付き合い。
知識はあるが、どこか楽観的。
読者と同じ位置から「それは本当か?」と首をかしげる役。
▪️ディアブロ
原初の悪魔(黒)。
常に丁寧で、常に冷静。
制度、前提、利害関係が絡むと饒舌になる。
笑顔のまま、話を一段深いところまで引きずり下ろす。
▪️ゴブタ
テンペストの中で一番、生活に近い感覚を持つ。
難しい話は分からないが、空気の変化には敏感。
「よく分かんねぇけど変っすよね」を口にできる存在。
♦️第1章 それ、前からじゃなかったっすか?
ゴブタ
「ねえ、これ……」
「それ、前からじゃなかったっすか?」
ヴェルドラ
「む? 何の話じゃ?」
ゴブタ
「この記事っすよ。
高市政権になったら、日本はバブル崩壊より酷くなるってやつ」
ミリム
「……ああ」
ゴブタ
「円がヤバいとか、
日銀が無理してるとか、
国債がどうとか……
それ自体は、昨日今日の話じゃないっすよね?」
ヴェルドラ
「確かにのう。
随分前から聞いておる話ではある」
ゴブタ
「なのに、なんで今になって
『高市政権になったら地獄』って話になるんすか?」
ヴェルドラ
「ふむ。
それならば、もっと前に
地獄になっておらねばおかしい」
ミリム
「……そこなんだよ」
ゴブタ
「正直、
この記事、めちゃくちゃ怖いっす。
でも、どこが“今だから”なのか、
よく分かんなくなったっす」
ディアブロ
「原因と引き金を、
意図的に混ぜている印象はありますね」
ヴェルドラ
「原因と引き金?」
ディアブロ
「はい。
問題そのものは以前から存在していた。
しかし、それを
『特定の政権誕生』と結びつけることで、
一気に物語にしている」
ゴブタ
「物語……っすか?」
ミリム
「『この人が来たら終わり』って言われると、
話が分かりやすくなるからね」
ヴェルドラ
「だが、それは
本当にその者だけの責任なのか?」
ゴブタ
「そこなんすよ。
だって……
今、賃金って上がってます?」
ヴェルドラ
「む?
春闘だの、初任給だの、
上がったという話は聞くが」
ゴブタ
「ニュースでは見ますけど、
俺のとこ、特に変わってないっす」
ミリム
「……うん」
ゴブタ
「株価は上がってるって言うじゃないっすか。
でもそれって、
持ってる人の話で」
ヴェルドラ
「持たぬ者には、
数字だけが踊っておるようなものじゃな」
ゴブタ
「家賃も、飯も、電気も上がってて、
給料は据え置きっす」
ミリム
「それで
『景気は回復した』って言われても、
納得しない」
ゴブタ
「ですよね。
これで
『じゃあ異次元金融緩和を終わらせます』
って言われたら……」
ゴブタ
「正直、先に俺たちが終わる気がするっす」
ディアブロ
「つまり、
回復したことにされているのは
数字だけ、ということですね」
ヴェルドラ
「では問おう。
この状態を
“景気が良くなった”と呼ぶ前提は、
一体どこから来たのだ?」
ミリム
「……それを、
誰も説明しないまま、
『次の政権』の話だけが先に来てる」
ゴブタ
「だから余計に、怖くなるんすよね」
ミリム
「うん。
円が怖いんじゃない。
政権が怖いんでもない」
♦️第2章 なぜ「今」なのか
ヴェルドラ
「しかし妙じゃのう。
この話、去年でも一昨年でも成立したはずじゃ」
ゴブタ
「俺もそう思うっす。なんで今なんすか?」
ミリム
「選挙前だからだよ」
ゴブタ
「……そんな単純なんすか?」
ミリム
「単純だし、厄介。
不安が一番、広がりやすい時期だから」
ヴェルドラ
「未来が確定しておらぬ時期、というわけか」
ミリム
「そう。
誰が責任を取るか決まってないときは、
話を一気に大きくできる」
ディアブロ
「市場も同じです。
確定していない状況を、最も嫌います」
ゴブタ
「嫌うって……売るってことっすか?」
ディアブロ
「ええ。
分からないものからは、距離を取る。
それが市場の習性です」
ヴェルドラ
「なるほどのう。
では高市政権、という言葉は……」
ディアブロ
「象徴ですね。
政策そのものより、
“未知の人格”として使われている」
ゴブタ
「人格?」
ミリム
「市場は数字より人を見る。
分からない人が来るかもしれない、
それだけで話は膨らむ」
ヴェルドラ
「だがそれは、
高市でなくとも起きる話ではないか?」
ミリム
「うん。
でも“高市”という名前は、
今、一番つなぎやすい」
ゴブタ
「つなぎやすい……?」
ミリム
「積極財政。
減税。
日銀との距離の近さ。
全部、同じ一本の線にできる」
ディアブロ
「事実かどうかより、
“物語として成立するか”が優先されます」
ゴブタ
「それで、
『この人が来たら終わり』になるんすね」
ヴェルドラ
「便利な話じゃのう」
ミリム
「便利だから、使われる。
怖い話は、便利な形で広がっていく」
ゴブタ
「でも……それって、
本当に今すぐ起きる話なんすか?」
ミリム
「分からない」
ヴェルドラ
「分からぬ、じゃと?」
ミリム
「分からないから怖がる。
でも分からないまま、
誰かのせいにするのは、別の話」
ディアブロ
「原因は長年積み上がってきたもの。
引き金だけを、今の名前に付け替えている」
ゴブタ
「それで、全部が
『今』の話になるんすね」
ミリム
「そう。時間が折りたたまれる」
ヴェルドラ
「過去の問題と、
未来の不安を、
一つの顔に押し付ける……」
ゴブタ
「それ、ズルくないっすか?」
ミリム
「ズルい。でも、よく使われる」
ゴブタ
「……だから余計に、
信じていいのか分からなくなるんすね」
ミリム
「うん。円がどうこう以前に、
この話の運ばれ方が、引っかかる」
ヴェルドラ
「恐怖が、説明より先に来ておる」
ミリム
「だから斬る。
分からないまま、放置しないために」
♦️第3章 物価が高い国と、苦しい国
ゴブタ
「でもさ……
スイスって、めちゃくちゃ物価高いっすよね?」
ヴェルドラ
「うむ。
聞く話では、水1本でも腰を抜かす値段とか」
ゴブタ
「ですよね。
日本も最近高くなったけど、
スイスは前から高いイメージっす」
ミリム
「そこ、よく混ざるところだね」
ヴェルドラ
「同じ“物価高”ではないのか?」
ミリム
「同じ言葉だけど、
起きてることは真逆に近い」
ゴブタ
「真逆?」
ディアブロ
「スイスの物価高は、
通貨が強い国の結果です」
ゴブタ
「結果……?」
ディアブロ
「賃金が高く、
通貨の信用が強く、
国内で完結する経済がある。
その上で高い」
ヴェルドラ
「高いが、耐えられる、ということか」
ディアブロ
「はい。
高いが、崩れてはいない」
ゴブタ
「じゃあ日本は?」
ミリム
「日本は、
耐える前提で高くなってる」
ゴブタ
「……それ、嫌な言い方っすね」
ミリム
「事実だから」
ヴェルドラ
「賃金は上がらぬ。
だが物価は上がる。
その状態で、
“同じ物価高”と呼ぶのは無理があるのう」
ゴブタ
「じゃあさ、
スイスが高いのは“強い”からで、
日本が高いのは……」
ミリム
「削られてるから」
ゴブタ
「……」
ディアブロ
「通貨が強い国は、
物価高を“管理”します。
通貨が弱くなる国は、
物価高に“追いかけられる”」
ヴェルドラ
「追いかけられる、か」
ゴブタ
「逃げても、
後ろから来る感じっすね」
ミリム
「そう。
だから同じ言葉でも、
体感が全然違う」
ゴブタ
「スイスは高くても、
怖くない。
日本は、
そこまで高くなくても、
なんか怖い」
ヴェルドラ
「なるほどのう」
ディアブロ
「恐怖の正体は、
金額ではなく、
先が見えないことです」
ゴブタ
「……それ、
この記事と同じっすね」
ミリム
「うん。
だから話がつながる」
ゴブタ
「物価の話なのに、
政権の話になって、
通貨の話になって、
最後は“怖い”で終わる」
ヴェルドラ
「すべてが、
一つの線にまとめられておる」
ミリム
「まとめられすぎてる。
だから違和感が残る」
ゴブタ
「スイスは高い。
日本も高くなった。
でも……同じ場所に立ってる気は、
しないっすね」
ミリム
「しない。そこを一緒にしちゃいけない」
ヴェルドラ
「言葉だけで、
状態を判断すると、
足をすくわれるのう」
ミリム
「だから、
数字やラベルより、
まず体感を見る」
ゴブタ
「体感は……正直、
楽になってないっす」
ミリム
「それで十分」
♦️第4章 終わらせる話が、どこにもない
ヴェルドラ
「ここまで聞くと、妙な話じゃのう」
ゴブタ
「妙……っすか?」
ヴェルドラ
「景気が悪いから続ける。
景気が良くなったら終わらせる。
本来は、そういう話であったはずじゃ」
ゴブタ
「あ……」
ミリム
「でも今、
“終わらせる条件”が見えない」
ゴブタ
「賃金、上がってないっすもんね」
ミリム
「生活としてはね」
ディアブロ
「それでも株価は上がっている。
数字上は、回復したことになっている」
ヴェルドラ
「では、終わらせられるのではないか?」
ディアブロ
「終わらせた瞬間、
別の場所が壊れます」
ゴブタ
「別の場所?」
ディアブロ
「金利です。
国の借金。
企業の借入。
住宅ローン。
すべてが、低金利前提で組まれている」
ゴブタ
「……それ、
一斉に来たらヤバいやつっすね」
ミリム
「だから誰も、
“今が終わり時だ”って言わない」
ヴェルドラ
「言えぬ、ではなく……」
ミリム
「言ったら責任を負うから」
ゴブタ
「れいわは
『まだ大丈夫』って言うし、
藤巻は
『もう無理』って言うし」
ヴェルドラ
「真逆のことを言っておるのに、
同時に存在しておるのう」
ディアブロ
「どちらも、
“終わらせ方”を語っていない点では、
同じです」
ゴブタ
「……え?」
ディアブロ
「続けるか、壊れるか。
その二択しか提示されていない」
ミリム
「だから話が、
どんどん極端になる」
ゴブタ
「高市政権で地獄、
円は紙切れ、
1ドル180円……」
ヴェルドラ
「怖い言葉ばかりが並ぶのう」
ミリム
「怖い話は、
出口がないときに一番広がる」
ゴブタ
「終わらせる話がないから、
誰かのせいにするんすね」
ミリム
「そう。
構造の話を、
人格の話にすり替える」
ヴェルドラ
「それで、
『この人が来たら終わり』になる」
ゴブタ
「……でも」
ゴブタ
「終わらせる条件、
本当に来るんすか?」
ミリム
「分からない」
ヴェルドラ
「また、分からぬ、か」
ミリム
「うん。
分からないから、
今は断罪する」
ゴブタ
「断罪?」
ミリム
「“分からないまま、
恐怖だけをつなぐやり方”を」
ディアブロ
「問題は、
円か、高市かではありません」
ヴェルドラ
「では、何じゃ?」
ディアブロ
「終わりを設計しないまま、
続けてきたことです」
ゴブタ
「……それ、
前からじゃなかったっすか?」
ミリム
「うん。
だから今、
急に怖い話になるのが、
一番引っかかる」
♦️後書き
最後まで読んでくれて、ありがとう。
正直に言うと、
ミリムもこの話を
「理解できた」わけじゃない。
円がどうなるのか。
高市政権で本当に地獄になるのか。
1ドル180円が来るのか。
分からない。
でも一つだけ、はっきりしたことがある。
この話は、
「いつの間にか怖くなっていた」。
前からあった問題が、
前から終わっていなかった話が、
ある日突然、
「今すぐ起きる破滅」みたいな顔で
目の前に置かれる。
その瞬間に、
名前が必要になる。
顔が必要になる。
責任を押し付ける先が必要になる。
それが、
高市政権だった。
円が悪いのか。
政権が悪いのか。
日銀が悪いのか。
たぶん、
そのどれでもあるし、
そのどれでもない。
でも、
分からないまま恐怖だけをつなぐやり方は、
間違っている。
ミリムは、
そこだけを斬った。
回避できるか、じゃない。
どの痛みを選ぶか、の段階に来ている。
答えは出していない。
安心も用意していない。
ただ、
「それ、前からじゃなかったっすか?」
という引っかかりだけを残した。
もしこの記事を読み終えて、
少しでも立ち止まったなら、
それで十分だ。
※この回は後日メンバー向けに整理します
Fin
魔王ミリムがニュースと社会をぶった斬る!
時事×本音トークの痛快シリーズ。
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