発達外来の、ある初診の風景
今回は、何本かに1本しかないマジメな医学の話でもしてみようか。
発達障害とは、的な総説をやろうかとも思ったけれど、
それはチャッピーに止められたので、またいずれ。
今回は、普段の外来の風景を少しだけ切り取ってみる。
※もちろん想像で妄想です。実際の外来とは一切関係ありません。
※本来は「親御さん」と書くべきだと思いますが、場面によってややこしいので「親」に統一します。心の中では敬意を払っています。
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先に、ワンポイントだけ
今回も例によって長いです。
正直、すべて読まなくてもいいし、役立つ知識も多くありません。
なので、最初に本当に役立つところだけ置いておきます。
睡眠は大事。
夜なかなか寝つけないお子さんは、本当に多い。
うちの子もそうで、1時間以上寝ないこともざらにある。
医者として、安全なお薬で眠りを助けることはできる(詳細はいずれ)。
よく眠れるようになるだけで、かんしゃくが減ったり、落ち着きが出てくることはある。
適切な睡眠時間は人それぞれなので、何時間とは言わない。
ただ、もし
「かんしゃく」「落ち着きのなさ」で困っているなら、
今より1時間早く寝ることを、まず目標にしてみてほしい。
ここだけ読んで閉じてもらっても構いません。
以下は、知識を伝えたいわけではない外来の風景の話です。

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発達外来の、ある初診の風景
病院にもよるが、
一般外来とは別に「発達外来」を設けているところも多い。
今日は、その発達外来、初診の話。
「◯◯さん、どうぞ〜」
診察室に呼び入れる。
親は、たいてい緊張した顔をしている。
何を言われるのか、何をされるのか、不安が伝わってくる。
子どもは様々だ。
何も思っていなさそうな子、
病院という場所が怖くて入りたくない子、
入ってすぐに泣く子。
その反応だけでも、
「どういうところに困っているのか」が、なんとなく伝わってくる。
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まずは、名前を聞く
1歳以上であれば、必ず本人に名前を聞く。
うまく答えられる子。
答えられないけれど、じっとこちらを見る子。
怖がってすぐに親に抱きつく子。
ここでも反応は様々だ。
そしてその反応も、こちらは見ている。
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主訴を聞く
次に、主訴を聞く。
主訴というのは、
「いちばん困っていること」
「今日この病院に来た理由」のことだ。
本人と話すか、親と話すかは、その時の雰囲気で決めている。
小学生以上であれば、まずは本人と話すことが多い。
ここで、とてもざっくりだが、
大きく分けると2パターンがある。
① 親・家族が困っているパターン
② 親は気にしていないが、保育施設や学校で困っているパターン
①は話が聞きやすい。
実際に家庭でどう困っているのかを、細かく聞いていく。
②は、園や学校からの手紙があると分かりやすいが、ない場合はどうしても親の主観になるため、聞き方が難しいこともある。
主訴が終わったら、
その他に困っていることも含めて、全部話してもらう。
途中で補足や軽い促しはするが、
基本的には遮らず、評価せず、まずは聴く。
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生活背景を聞く
話が一通り終わったら、次は生活やこれまでの経過を聞いていく。
• これまでの病気、通院・入院歴(既往歴)
• 今飲んでいる薬があるか(内服歴)
・ ご家族に何か病気や障害のある人はいるか(家族歴)
• 妊娠中の異常はなかったか
• 何週何gで生まれたか
• NICUに入ったか、何日で退院したか
• これまでの健診で何か指摘されたことはあるか
• 何時に寝て、何時に起きているか
• 偏食や好き嫌いはあるか
• 家庭環境はどうか。養育はどのようにしているか。父母のバランスなど。
どれも、発達を考える上で大事な情報だ。
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診察
次は診察。育児ログで少し書いたが、もう少し詳しめに。
まずは一般診察。
普段、風邪のときに病院で受けるような診察だ。
口の中、呼吸の音、心臓の音、お腹の音。
お腹に何か触れるものはないか。
皮膚にあざのようなものはないか。
その後、神経学的な診察を行う。
顔に特徴はないか。
目の動きや表情に左右差はないか。
反射は正常か。
筋力や姿勢、バランスはどうか。
かなり省略しているが、
「発達の背景に、見逃されている病気が隠れていないか」
という視点で診ている。
もしここで、
今まで指摘されていなかった病気を疑う所見があれば、
採血や頭の画像検査など、そちらに進むこともある。
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まとめに入る
話を聞き、診察を終え、整理する。
• 身体的に明らかな異常はないか
• どこに困っているのか
そして、いよいよ診断を……
告げない。
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診断を、告げない
いわゆる
「自閉スペクトラム症ですね」
「ADHDですね」
と、ここでいきなり伝えることはしない。
ただし、
今の状態を表す診断名を伝えることはある。
例えば、
言葉が出ていておかしくない年齢で出ていなければ
「言語発達遅滞」。
運動が遅れていれば
「運動発達遅滞」。
今、どこがつまずいているのかを共有するための言葉だ。
そして、
困っていることを整理し、
検査に進むか、
リハビリテーションを始めるか、
具体的な対応を相談する。
ここで、初回の外来はだいたい終わる。
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なぜ診断を急がないのか
親から
「はっきり何なのか言ってほしい」
と言われることはある。
ただ、診断はすぐにはつかない。
つける意味も、今の段階では大きくないことが多い。
診断には、時間経過が必要だ。
そして何より診断名がつこうがつくまいが、
やることは変わらない。
特に小学生以前では、
診断名だけで受けられる支援はほとんどない。
必要な支援があれば、その時に伝える。
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親と私が求めているもの
親は「答え」を求めている。
私は「時間経過」を見たい。
でも、親が本当に欲しいのは診断名そのものではなく、
• 今の状況に説明をつけたい
• これからどうしていけばいいのか知りたい
そこだと思っている。(いや、診断名欲しいんだよっていう人がいるのはわかってます。)
だから、そこには全力で寄り添う。
最終的に大切なのは、
家庭生活でも、家庭外でも、
本人がどうしたら楽に過ごせるか。
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今回書いたのは、入り口の話
発達外来そのものは、ここからも続いていく。
今回書いたのは、あくまで最初の入口の話だ。
この入口で
「安心できない」
「信頼できない」
と思われたら、その先には進めない。
だから
「大丈夫だよ」
「味方はいるよ」
ということを、全力で伝える。
もちろん相性はある。
合わなければ、来なくなる人もいる。
それは仕方がない。
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最後に
これは、日本にたくさんある発達外来のほんの一例。全く違うやり方の先生もたくさんいる。
その日に
「お子さんは自閉スペクトラム症です」
と伝える先生もいるし、
そちらの方が合う親もいる。
正解はひとつじゃない。
もしこれを読んで
「こんなんじゃなかった」
と不快に思った人がいたら、すみません。
日本のどこかには、
こんなめんどくさい外来をしている医者もいる、
そのくらいに思ってもらえたら。
これまで
「小児科・発達障害勉強中」
と名乗ってきたけれど、
少しは本当にやっている感じ、出ただろうか。
これからも、自分の勉強も兼ねて、
このあたりの話を書いていこうと思う。
需要あるかな?
※医者シリーズ第6話について
以前、「医者シリーズ第6話」として
発達の診療について、もう少し概念的な話を書いています。
あちらは
「なぜこの分野を選んだのか」
「発達の診療で、何を大切にしているのか」
という、考え方の話。
今回の記事は、
あくまで初診外来という“入口の風景”を切り取ったものです。
同じテーマでも、診断についてもちょっと書き方が変わっています。
よければ、あわせてどうぞ。
