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―発達を考えるときの「土台」― 知的発達症とは何か ―神経発達症について(第5回/全7回)

これまで、

ASD
AD/HD
LD

について整理してきた。

今回は知的発達症

昔は「知的障害」と呼ばれていたものだ。

現在は医学的には知的発達症(Intellectual Developmental Disorder)という名称が使われている。

言葉が変わった理由はシンプルで、
「障害」という言葉のニュアンスを少し整理し、発達の特性として理解するという考え方が広がってきたからだ。

もちろん、支援が必要であるという事実は変わらない。

名前が変わっただけで、中身が変わったわけではない。




知的発達症とは何か

知的発達症は、大まかに言えば

知的機能と適応機能の両方に困難がある状態を指す。

ここでいう知的機能とは、

・理解する
・考える
・問題を解決する
・学習する

といった能力。
知能検査で、いわゆるIQで表される部分だ。

そしてもう一つ重要なのが適応機能

これは、

・日常生活
・社会生活
・コミュニケーション
・身の回りのこと

など、生活していく力のことだ。

つまり、

IQの数値だけで診断が決まるわけではない。

生活の中でどの程度困りごとがあるかも含めて判断される。

発達を理解するうえで、知的発達症は「基準になる軸」とも言える。


発達評価の土台

発達を考えるとき、医療ではまず
「知的発達症があるかどうか」を確認する。

これは発達評価の土台になる。

ASDやAD/HDの診断では、基本的に
「年齢相応の発達」を基準にして評価する。

例えば、

・落ち着きがない
・順番を待てない
・集中が続かない

こうした行動があったとき、

年齢に比べてどうか

で判断する。

しかし、知的発達症がある場合は話が変わる。

評価は実年齢ではなく、発達レベルに合わせて考える必要がある。

極端な例で言えば、

6歳の子どもだが
知能レベルが2歳相当だとする。

この子が落ち着きがないとき、

2歳児に落ち着きを求めるだろうか。

普通は求めない。

だからこそ、

ASDやAD/HDを考えるときも
知的発達症の有無を確認することがとても重要になる。

ここを整理せずに評価すると、診断を見誤る可能性がある。


ASDやAD/HDとの関係

知的発達症は

ASD
AD/HD

併存することもある。

ASDの中には知的発達症を伴う人もいれば、伴わない人もいる。

AD/HDも同様だ。

つまり、

別の診断だが、重なることがある。

発達の問題が複雑に見えるのは、
こうした重なりがあるからでもある。


LDとの関係

LD(学習障害)との関係はどうなっているだろうか。

現在の診断基準では、

LDと知的発達症は同時に診断されない。

LDは

知的発達が保たれているにもかかわらず、
特定の学習分野だけに強い困難がある状態

を指すからだ。

ただし、診断基準というものは絶対ではなく、
医学の進歩とともに変化していく。

今後定義が変わる可能性はあるが、
現時点ではLDと知的発達症は別の概念として扱われている。

なので、1話の神経発達症全般について書いた内容の、図を改めて見てみてほしい。
LDと知的発達症は重ねていない。


評価に使われる検査

知的発達症の評価では、
いくつかの知能検査や発達検査が用いられる。

代表的なものとしては、

新版K式発達検査
乳幼児から成人まで使える発達検査で、
姿勢・運動、認知・適応、言語・社会といった領域から
発達の全体像を評価する。

田中ビネー知能検査
古くから使われている知能検査で、
IQと精神年齢を算出し、認知能力の発達水準を把握する。

WISC(ウェクスラー児童知能検査)
学齢期の子どもに広く使われている知能検査で、
言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度など
複数の側面から知的機能を評価する。

こうした検査の結果や生活状況などを合わせて、
総合的に発達を評価していく。


医療の役割

知的発達症は

治す病気ではない。

脳の発達の特性だ。

医療の役割は、

・発達の状態を評価する
・困りごとを整理する
・教育や福祉の支援につなぐ

ことにある。

発達領域は、
医療だけで完結するものではない。

教育や福祉との連携がとても重要になる分野でもある。


次回

次回は

病院の役割

について。

発達の相談はどこに行けばいいのか。
医療は何をしているのか。
どこまでできるのか。

そのあたりを整理してみようと思う。


おまけ

ちょっと難しいけれど、網羅的に理解するのに良い本。
有名な先生が書かれている。


今回触れたような内容についての本。重なると難しいんだよね。

今まさに読んでいて、とても勉強になっている本。今回の記事で言及しなかった、知的発達症には入らないけど正常より低いという、一番支援が難しい人について。

神経発達症シリーズ

第1回 神経発達症とは何か
第2回 ASDとは何か
第3回 AD/HDとは何か
第4回 LDとは何か
第5回 知的発達症とは何か
第6回 病院の役割は何か
第7回 発達障害は白黒ではない(まとめ



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