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ミシュナ『Me'ilah』研究 第5回:「shtei halechem」と「lechem hapanim」の聖別構造――「生地」から「パン」への変容がもたらす不適格化とme'ilah解放のタイムライン

*本稿は口伝律法ミシュナ第5部『Kodashim(コダシーム)』に属する『Me'ilah』の第5回目の解説である。

 今回は『Me'ilah』2章6節〜7節を取り上げ、七週祭(Shavuot)の「shtei halechem(二つのパン)」と聖所の「lechem hapanim(供えのパン)」を対象に、2つの聖別「Kedushat HaGuf(クドゥシャット・ハグフ)」と「Kedushat HaDamim(クドゥシャット・ハダミーム)」を区別する。特に今回はオーブンによる焼成(表面の固まり)がもたらす「パン」としての地位確定に連動する不適格化のタイムラインを検証。

 更に、和解の献げ物(shelamim)の血の振りかけ(zerikah)や乳香(levonah)の奉仕が、me'ilahの対象からの解放へ連動する法理構造とタイムラインを詳解する。


前回の振り返り:鳥のolahおよび内側のchatatにおけるme'ilah永続性の法理構造


 前回はミシュナ『Me'ilah』第2章2節を取り上げ、鳥のolah(焼き尽くす献げ物)および「内側のchatat(贖罪の献げ物)」における、me'ilahの掟がいつまで持続するかの法理を解説した。

 主な内容は以下の通りである。

【1】鳥のolah(焼き尽くす献げ物)とme'ilahの持続性

 鳥のolahは、鳥のchatatとは異なり、血の奉仕が完了した後もme'ilahから解放されない。

①奉仕手順と不適格化

 爪で首を突き刺す「melikah(メリカー)」を行うと、tevul yom(清めの中間状態の人)などが触れることで不適格になる状態になる。

②血の奉仕

 血を祭壇に絞り出す「mitzui(ミツイ)」は、家畜の献げ物における血の振りかけ(zerikah)に相当します。この時点で、不適切な意図(piggul)などの問題が生じる。

③me'ilahが続く理由

 通常、血の奉仕が完了すると「祭司が食べてよい状態」になりme'ilahから解放されっるが、鳥のolahは全てが焼かれるため、祭司が食べる時間が存在しない。

③解放のタイミング

 祭壇で完全に焼き尽くされ、翌朝の最初の奉仕である「terumat hadeshen(テルマット・ハデシェン:灰の取り分け)」が行われるまで、me'ilahの対象であり続ける。

【2】「内側のchatat」(焼かれる雄牛・雄山羊)の法理

 「内側のchatat」とは、血が聖所の中に持ち込まれ、肉が祭司に与えられずに「灰の場所(beit hadeshen)」で焼かれる献げ物を指す。

 該当するのは、以下のケースである。

①Yom Kippur(贖罪日)の雄牛と雄山羊。

②大祭司が誤った裁定を下した際の雄牛。

③会衆(サンヘドリン)の誤審による過失のための雄牛、および偶像崇拝のための雄山羊。

 これらも鳥のolahと同様に、祭司の取り分が一切無いため、血の振りかけ(zerikah)が完了してもme'ilahから解放されない。

 エルサレムの城壁の外(宿営の外)にある「灰捨て場(beit hadeshen)」で燃やされるまで、me'ilahの掟に従い続けることになる。

 「すべての掟が完了する場所(灰の場所)」に至るまでme'ilahが続くという点で、鳥のolahと内側のchatatは共通の法理構造を持っている。

 ただし、鳥のolahの「灰の場所」は祭壇のスロープのすぐ東側である。

 以上の内容に不安を感じる方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉ミシュナ『Me'ilah』研究 第4回:鳥のolah(焼き尽くす献げ物)の奉仕手順と内側のchatat(焼かれる雄牛・雄山羊)における不適格化のタイムライン、及び『灰の場所』に至るまでのme'ilahの永続性の法理

https://note.com/mishnah/n/n09eddc0842cc


ミシュナ『Me'ilah』2章6節:shtei halechem(二つのパン)の法理と聖別構造


 今回は口伝律法ミシュナ「Me'ilah」2章6節から始める。ここでは七週祭(Shavuot)のshtei halechem(シュテイ・ハレヘム)が扱われている。

 shtei halechemは聖別してからme'ilahに従う。一端オーブンで焼かれると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる。この時、shelamimがそれらの為に屠られる条件が整うことになる。小羊の血が祭壇に振りかけられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になり、最早me'ilahに従わない。

(Me'ilah 2:6)

 本文に入る前にshtei halechemについて復習する。

 Shavuotの祭日には、2匹の公的なshelamim(和解の献げ物)の子羊の献げ物があり、これには2つの酵母入り(chametz)のパンが伴う。これらはshtei halechemと呼ばれ、字義通りには「2つのパン」を表す。

 shtei halechemは、2匹の子羊と共に奉納(tenufah)を行わなくてはならない。トーラには次のように書かれている。

 19一歳の雄の小羊二匹を和解の献げ物としてささげる。 20祭司はこれらを、初物のパンと共に奉納物として主の御前に差し出す。二匹の雄の小羊は主に聖別されたものとして祭司のものとなる。

(レビ23:19~20)

 このtenufahを通して、shelamimの子羊とshtei halechemの間に結びつきが生まれる。そして子羊が屠られると(shechitah)、パンは子羊の献げ物の一部として確定する。

 いけにえを献げる際の血の奉仕(avodah)の4つの不可欠なステップは、パンにも関連している。子羊の肉を祭司が食べることを許可するのと同じzerikahが、同時にパンを祭司が食べることも許可するのである。

 Shavuot、shtei halechem、tenufahについては下の記事で詳しく解説している。知識に不安のある方は確認して欲しい。

◉七週祭(Shavuot:シャブオット)の法理(上):『レビ記』の供え物と口伝律法『Menachot(メナホット)』から復元する「shtei halechem(シュテイ・ハレヘム)」の深層

https://note.com/mishnah/n/n41e21d7cb956

 もし子羊の血のavodahが不適切に行われ、子羊の献げ物が失格となった場合、shtei halechemも同様に失格となる。

 以上を前提にミシュナ本文を読んでみよう。再度「Me'ilah」2章6節を引用する。

 shtei halechemは聖別してからme'ilahに従う。一端オーブンで焼かれると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる。この時、shelamimがそれらの為に屠られる条件が整うことになる。小羊の血が祭壇に振りかけられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になり、最早me'ilahに従わない。

(Me'ilah 2:6)

聖性の分類:Kedushat HaGuf(クドゥシャット・ハグフ)とKedushat HaDamim(クドゥシャット・ハダミーム)


 冒頭に「shtei halechemは聖別してからme'ilahに従う」と書かれている。この部分は、shtei halechemの原材料が聖別された瞬間からme'ilahの対象になることを言っている。

 より具体的には、神殿の宝物庫の資金で購入された瞬間にshtei halechemの原材料は口頭による聖別を受けたものと見なされる。

 ただし家畜や鳥のいけにえと聖性が異なる点に注意を要する。家畜や鳥の献げ物は取り分けた時点で本質的な聖別を受けており、その聖性は「Kedushat HaGuf(クドゥシャット・ハグフ)」と呼ばれる。

 これに対して穀物の献げ物(minchah:ミンハー)の一種であるshtei halechemは、原材料を購入した時点では金銭的価値だけが聖別されており、その聖性は「Kedushat HaDamim(クドゥシャット・ハダミーム)」と呼ばれる。以上を整理すると下の通りである。

①家畜や鳥の献げ物

 献げ物として取り分けた時点で、既に本質的な聖性(Kedushat HaGuf:クドゥシャット・ハグフ)を受ける。

②shtei halechem

 原材料を購入した時点では、金銭的価値の聖性(Kedushat HaDamim:クドゥシャット・ハダミーム)を受ける。

 このように聖性の違いはあるが、shtei halechemも聖別されるとme'ilahの対象になる。

 穀物の献げ物(minchah)が本質的な聖性(Kedushat HaGuf:クドゥシャット・ハグフ)を受けるのは、kli shareitの中に入れられた時である。この点については、次回の記事で詳しく扱う。

 shtei halechemはminchahの一種であるが、それが焼かれるオーブンがkli shareitに相当する。ただしshtei halechemが本質的な聖性(Kedushat HaGuf:クドゥシャット・ハグフ)を受けるのは、オーブンに入れられた瞬間ではない。

 次にこの点について扱う。

オーブン焼成による地位の確定:「パン」としてのステータスと不適格化の条件


 shtei halechemにとって、焼かれるオーブンがkli shareitに相当するが、ミシュナ本文には「一端オーブンで焼かれると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる」と書いてある。

 「一端オーブンで焼かれた時」とは表面が固まり始めた時であるが、この時献げ物としての準備の初期段階に達したと見なされる。この段階は家畜のいけにえにおけるshechitahである。

 家畜のいけにえはshechitahすることによって「献げ物」としての地位を得ることになり、tevul yomやmechussar kippurimによって不適格となった。

 shtei halechemの場合、オーブンの中で表面が焼かれる時点が、献げ物としての地位を得る段階である。よってこの時、shtei halechemはtevul yomやmechussar kippurimによって不適格とされる。

 その根拠はレビ記23章17~20節である。レビ記23章17~20節において、トーラは2匹の子羊の屠殺に関連して、shtei halechemを「パン」と呼んでいる。パンが「パン」としての地位を得るまで、つまり「表面が固まるまで」は、子羊を屠殺してはならないことを示している。逆に言うと、shtei halechemが「生地」の状態ではshelamimの屠殺を始めてはならない。

 それと関連して、shtei halechemが献げ物としての聖性を得るのは、表面が固まった時、パンの段階に達した時とされる。

血の振りかけ(zerikah)によるme'ilahからの解放と禁忌(piggul / nosar / tamei)の発生


 次に「小羊の血が祭壇に振りかけられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になり、最早me'ilahに従わない」の箇所について解説する。

 shelamimの子羊の血がzerikahされることによって、shelamimは食べてよいものとなる。従って、この時にme'ilahの対象でなくなる。同時にpiggul、nosar、tameiが問題になる。

ミシュナ『Me'ilah』2章7節:lechem hapanim(供えのパン)の構造と奉仕段階


 次節に進む。口伝律法ミシュナ「Me'ilah」2章7節である。

 lechem hapanimは聖別してからme'ilahに従う。一端オーブンで焼かれると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過 によって不適格になるものとなる。この時、shulchanの上に置かれる条件が整うことになる。levonahが祭壇の上に置かれると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になり、最早me'ilahに従わない。

(Me'ilah 2:7)

 最初にlechem hapanimの基本的な知識を確認する。

 lechem hapanimとは、毎週金曜日に神殿で焼かれる12個の酵母の入っていないパンである。12個のパンは安息日(shabbat)ごとに聖所へと運ばれ、日本語ではしばしば「聖卓」と訳される金の机(Shulchan:シュルハン)の上の2つの垂直な棚に、1つの棚につき6個ずつ並べられる。

 Shulchanについては、下の写真を見て欲しい。

聖所内でlechem hapanimが置かれる金の机

 各棚の隣、あるいは一番上のパンの上に、スプーン1杯の乳香(levonah:レヴォナ)が置かれる。これらのパンと乳香(levonah)は、1週間の間、机の上に置かれたままにされる。

 このlechem hapanimとlevonahは翌週の安息日にShulchanから取り下げられる。levonahは祭壇で焼かれ、12個のパンは祭司たちが食べる。

 以上を前提にミシュナ本文を解説する。まずは「lechem hapanimは聖別してからme'ilahに従う」について、前のshtei halechemと同じようなことを言っている。つまり、神殿の財産でlechem hapanimの原材料を買った時、その原材料は聖別されたものと見なされる。

オーブン焼成に伴う不適格化要件とShulchan配置の条件


 次の「一端オーブンで焼かれると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過 によって不適格になるものとなる」とは、 lechem hapanimもオーブンの中で表面が固まれば、tevul yomや mechussar kippurim との接触によって失格となる準備が整うことを言っている。なぜならこの時、原材料からパンになったと見なされるからである。

 言い換えると、表面が固まって「パン」として分類された後、はじめてShulchanの上に並べることが可能になることを言っている。

乳香(levonah)奉仕の3段階とme'ilah解放のトリガー


 次の「levonahが祭壇の上に置かれると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になり、最早me'ilahに従わない」について解説する。上記の通り、1週間聖所に置かれていたlevonahは祭壇で焼かれる。

 古いlevonahを祭壇で焼いた時、古いパンは祭司によって食べられてよいものになる。従ってこの時、古いlechem hapanimはme'ilahから解放される。同時にpiggul、nosar、tameiが問題になる。勿論Shulchanに置いたばかりのlechem hapanimは食べてはならない。

 levonahを焼く奉仕は3つの段階に分かれている。

  1. levonahを取り除く。

  2. levonahを祭壇に運ぶ。

  3. levonahを祭壇で燃やす。

 この奉仕の間に、lechem hapanimを定められた時間を越えて食べる意図を示したなら、そのlechem hapanimはpiggulになる。

総括:穀物の献げ物における「表面の固まり」と「奉仕完了」が描く me'ilah の分岐点


 以上でshtei halechemとlechem hapanimの場合を見てきたが、どちらも表面が固まった時が、生地からパンに変わった時である。この時にme'ilahの対象となる。

 その後祭司が食べてよい分岐点になるのは、shtei halechemの場合、shelamimの血のzerikahであり、lechem hapanimの場合、levonahを祭壇で焼くことである。

 今回の内容は以上である。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を進めるためのご支援をいただければ幸いです)

シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Me'ilah』法理研究

https://note.com/mishnah/n/n8ab1e0588261


 全記事の目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.2】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.201〜No.300)

https://note.com/mishnah/n/na80e65fb273e


◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334

(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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