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レビ人の組(mishmarot:ミシュマロット)の原点(2回目)――48の町、十分の一税(マアセル)、そして24組の法理と構造

*イスラエル全土に分散したレビ人は、いかにしてエルサレム神殿の精緻な奉仕体系を構築したのか。本稿では、申命記・民数記の法的記述を軸に、レビ人特有の家屋買い戻し権や十分の一税(maaser・rishon:マアセル・リッション)の変遷を詳解。さらに口伝律法『ミシュナ』Taanit(タアニート篇)と歴代志の統計を照合し、3万8千人規模の組織を24組(ミシュマロット)に再編した「律法の現場」の真実を、専門的視座から浮き彫りにします。


はじめに:レビ人の職務変遷と家系原理(前回のおさらい)


 前回は以下の内容を確認した。

  1. 元来、イスラエルの典礼奉仕は初子が担当していたが、金の子牛事件」を機にレビ族が聖別されたこと。

  2. レビ族は、レビの3人の息子であるゲルション、ケハト、メラリの三家系に大別されること。

  3. 祭司はケハト系アムラムの息子であるアロンとその子孫のみ選ばれること。それ以外のレビ族の者はレビ人と呼ばれ、祭司の補助や聖所の管理、機材の運搬の責任を担ったこと。

  4. 地方の法廷で解決が困難な事案について、律法の専門家として上級審の判決に関与すること。

  5. 荒野時代の言及は無いが、ダビデ王の時代に、琴や竪琴、シンバルなどを用いる詠唱者としての任務が確立されたこと。

 今回はその続きである。前回の詳しい内容を見たい方は、以下のリンクから確認して欲しい。

◉レビ人の組(mishmarot:ミシュマロット)の原点(1回目):幕屋守護から律法教育、賛美奉仕への変遷と家系原理

https://note.com/mishnah/n/nc238c204453f


聖所奉仕の法的萌芽:申命記18章における「主の選ばれる場所」への移住権

 レビ人のローテーション制度であるmishmarot(ミシュマロット)について、トーラからは申命記にその最初の萌芽を見ることが出来る。

 レビ人は、現在寄留しているイスラエル中のどの町からでも、望むがままに主の選ばれる場所に移り、主の御前に立つ者となっている自分の兄弟である他のレビ人と同じように、その神、主の名によって仕えることができる。彼は先祖の財産を売って得たものを別として、他のレビ人と同じ分を食べることができる。

(申18:6)

 まず最初に「レビ人は、現在寄留しているイスラエル中のどの町からでも、望むがままに主の選ばれる場所に移る」ことについて、「主の選ばれる場所」とは聖所であり、後代ではエルサレムである。

 レビ人が「現在寄留しているイスラエル中の町」とは、結果的には全部で48存在することになる。それは民数記35章に記されている。

 イスラエルの人々に命じなさい。
 嗣業として所有する土地の一部をレビ人に与えて、彼らが住む町とし、その町の周辺の放牧地もレビ人に与えなさい。

(民35:2)

レビ人の居住実態:民数記35章に見る「48の町」と「逃れの町」の配分原理

 周知の通り、イスラエルはカナンに定住してから、ヨシュアの指導の元、土地を12部族に分配した。その中でレビ族だけは嗣業の地を得ていない。彼らはイスラエル全土にある町の内、48の町が与えられたものである。

 彼らは律法の専門家であったので、各地で律法を教え、正しい裁きをする務めを負ったからと思われる。48という数と分配の基準は続きの箇所に示されている。

 あなたたちは、人を殺した者が逃れるための逃れの町を六つレビ人に与え、それに加えて四十二の町を与えなさい。レビ人に与える町は、合計四十八の町とその放牧地である。イスラエルの人々の所有地の中からあなたたちが取る町については、大きい部族からは多く取り、小さい部族からは少なく取り、それぞれ、その受ける嗣業の土地の大きさに応じて、その町の一部をレビ人に与えなければならない。

(民35:6~8)

 ここから次のことが分かる。

①レビ人に与える町の内、6つは逃れの町である。

②逃れの町以外では、42の町が与えられる。

③どの部族が幾つの町を与えるのかは、その部族の大きさに従う。

 申命記18章6節は、レビ人は寄留している町から聖所、最終的にはエルサレムの神殿に行き、仕える権利があることを明記したものである。

レビ人の所有権と経済基盤:家屋買い戻しの特則(レビ記25章)と先祖の財産

 次に彼らが「先祖の財産を売って得たものを別として、他のレビ人と同じ分を食べることができる」(再掲申18:8)について、まず「レビ人が先祖の財産を売れる」という点が引っかかるだろう。

 「彼らは嗣業の地を持たない。それなのになぜ売るものがあるのか」という疑問だが、町中においては、彼らも土地や家屋を所有している。それはレビ記25章に規定された、レビ人特有の買い戻しの特則にも表れている。

 レビ人の町、すなわち彼らの所有する町の家屋については、レビ人はいつでも買い戻す権利を保有する。

(レビ25:32)

 本来、町中の家屋の買い戻しの権利は1年間しか行使出来ない。しかし神に仕える務めに専念するレビ人が、貧困によって住む場所や生活手段を失ってしまうことがないように、特別な規定が定められたものである。この問題はまた別の記事で扱うことにする。

 話を戻すと、地方の町に住むレビ人が、中央聖所に移住(あるいは長期奉仕)するために地元の家や家畜を売却して得た手元資金があることを示唆している。

報酬体系の変遷:地方の十分の一税(maaser・rishon:マアセル・リッション)から中央神殿への集約

 その他、レビ人にはいわゆる十分の一税を受け取る権利がある。次のように書かれている。

 見よ、わたしは、イスラエルでささげられるすべての十分の一をレビの子らの嗣業として与える。これは、彼らが臨在の幕屋の作業をする報酬である。・・・(中略)・・・レビ人のみが臨在の幕屋の作業をし、その罪責を負わねばならない。これは、代々にわたって守るべき不変の定めである。彼らは、イスラエルの人々の間では嗣業の土地を持ってはならない。

(民18:21~23)

 このレビ人が受ける十分の一税はmaaser・rishon(マアセル・リッション)と呼ばれる。それは彼らが住む町々で受け取ることが出来たが、次第に中央の聖所でも集められ、受け取ることが出来るようになった。

 それは地方で受け取った食糧を、中央聖所のある場所まで運ぶことの不都合もある。

 ともあれ、地方で受け取っていた事実については、トーラの次の節に見ることが出来る。

 あなたの町の中に住むレビ人を見捨ててはならない。レビ人にはあなたのうちに嗣業の割り当てがないからである。三年目ごとに、その年の収穫物の十分の一を取り分け、町の中に蓄えておき、あなたのうちに嗣業の割り当てのないレビ人や、町の中にいる寄留者、孤児、寡婦がそれを食べて満ち足りることができるようにしなさい。

(申14:27~29)

 一方、後代に中央で集める体制が構築されたことは、以下の節に見ることが出来る。

 ヒゼキヤは主の神殿の中に祭司室を設けるように命じたので、彼らはそうした。彼らは忠実に献納物、十分の一の献げ物、および聖別された物をそこに運び入れた。

(歴下31:11~12)

 以下の説明を理解した上で、もう一度申命記18章を掲載する。

 レビ人は、現在寄留しているイスラエル中のどの町からでも、望むがままに主の選ばれる場所に移り、主の御前に立つ者となっている自分の兄弟である他のレビ人と同じように、その神、主の名によって仕えることができる。彼は先祖の財産を売って得たものを別として、他のレビ人と同じ分を食べることができる。

(申18:6)

 彼らは自分の家屋や作物を売った代価を持つことが出来たし、maaser・rishonを受け取ることも出来た。そうして中央の聖所で仕えることが出来たのである。

神殿奉仕の組織化:ミシュナ『Taanit(タアニート)』が解き明かす24組(mishmarot:ミシュマロット)の同期システム

 この通り、トーラにおいては聖所でのレビ人の奉仕が本人の意思にかかっているが、これは後には持ち回りの当番制として確立する。その次第は口伝律法taanit(タアニート)4章に書かれている。

 初期の預言者たちは24のmishmarotを定めた。それぞれのmishmarに対応して、エルサレムには祭司、レビ人、イスラエルの民から成るmaamadがあった。Mishmarがエルサレムに上る時が近付くと、祭司とレビ人はエルサレムに上り、そして、イスラエル人のうち、ある者はエルサレムへ上り、残りの者はそれぞれの町に集まり、天地創造の書を朗読した。

(Taanit 4:2)

 これは以前のmaamadに関する記事で詳しく述べた。祭司もレビ人も24の組に分けられ、それが1週間交代で奉仕にあたるというものである。この組がmishmarotである。

 まだ理解していない方はそちらを確認して欲しい。

◉ maamad(マアマド)の構造と法理 ― ミシュナ『Taanit(タアニート)』が解き明かす神殿奉仕と地方礼拝の同期システム

https://note.com/mishnah/n/n83b1fe6c90cb


歴代志に見る実務分担:3万8千人の統計的分析と職能別配分のフェーズ

 さて、いよいよレビ人のmishmarotの中身について解説する。まずは歴代誌上23章から。

 三十歳以上のレビ人を数えたところ、その男子の数は、三万八千人であった。そのうち、二万四千人は主の神殿における務めを指揮する者に、六千人は役人と裁判官に、四千人は門衛に、四千人は、ダビデが賛美するために作った楽器を奏でて、主を賛美する者になった。

(歴上23:3~5)

 ここでは次のことを言っている。

  1. レビ人の総数:3万8,000人

  2. 神殿奉仕の管理・実務: 2万4,000人

  3. 役人または裁判官: 6,000人

  4. 門番(守衛): 4,000人

  5. 賛美(奏楽・歌唱): 4,000人

 これは、mishmarotを確立する過程として、次のように言えるだろう。

第1段階:全体人数を把握すること。

第2段階:職能別に人数を配分すること。それは以下の通りであること。

・神殿奉仕の管理・実務: 2万4,000人
・役人または裁判官: 6,000人
・門番(守衛): 4,000人
・賛美(奏楽・歌唱): 4,000人

 この4つの部門をそれぞれ24組に分割し、1週間ごとに分担させたことになる。例えば「賛美」の部署については、

4,000÷24 = 166.66....≒ 167人

 となる。正確なところは分からないが、これが1つの目安になる。

 今回はここで終わりととする。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ総目次はこちらから。

◉聖なる同期システム:祭司・レビ人・民が織りなす神殿奉仕の全貌【全7記事・完結】

https://note.com/mishnah/n/nca2eb55cd191

 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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