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青池保子展 Contrail 航跡のかがやき(2025.3) ~ みざくらより(心からの)愛をこめて

 フッフッフ。行ってきました、漫画家、青池保子さんの原画展。昨年まで神戸、下関で開催され、2025年2月から6月までは東京で巡回開催されると知り、絶対行こうと思って楽しみに待っていたこの日がついに来た。

  春めいてきた上野界隈は、まだ少し桜には早いものの多くの人出。会場となる弥生美術館は、要は東大の横なのだがあまりアクセスがよろしいとは言えない。長年東京を見てきたが、今回初めて不忍池を眺めながら延々歩いてようやくたどり着く。

私設美術館 かなり古い
美術館入口 左側がカフェ

 まず早々に入ったのは美術館ではなく、横に併設されている「夢二カフェ港や」(もともと弥生美術館は竹久夢二の常設展示館である)。今、特別展にちなんだメニューがあるとネットで知り、これは絶対いただかなくてはと思い突撃。あとになったら売り切れなんてことも大いにありうる。出てきたのはエーベルバッハ少佐にちなんだ「いのししカプチーノ」とドイツ伝統のイモケーキ「カルトフェルトルテ」。1品に1枚、少佐の絵柄のコースターがついて来る。照れ笑いをしながらも喜んで2枚とも頂戴する(笑)。

カプチーノのいのししはしっかりしていて飲んでも最後まで崩れず ケーキの味は今一つかな
 2枚のコースターはどうしてこのコマなんですかね 少佐が憤死しそう(笑)

 青池さんの作品を知ったのは、「エロイカより愛をこめて」(1977年~)より前だったがそれほど印象には残っていなかったので、まず絵柄の極端な変化には驚いた。初めて「エロイカ」を読んだのは、大学受験を1か月後に控えた高校3年生の12月である。当時学校は受験前の不安とストレス解消の場となっており、よく、クラスメイトと持ち込んだ漫画本を貸しあっこしていたのだが、当時一緒に行動していて今も親友の彼女が「月刊プリンセス」の最新号を見せてくれたのである。「エロイカ」はNo.7「ハレルヤ・エクスプレス」のちょうどオープニング回。伯爵ジェームズ君に「ヘタ!」と連呼されながら少佐の絵を的にして射撃をしている場面、少佐は任務の前に教会で居眠りをしてスッキリするところから話は始まる。親友が「少佐~ !」というので読んでみると、やたらと彼に伯爵がからんでくるようなので「この伯爵って、少佐のことが好きなの ?」と素朴な疑問で尋ねたとき、友がなんて答えたらよいのかと困ったような顔をしたのも、まあ、無理もない(笑)。

 大学進学してからも女子はみな、漫画好き。「エロイカ」の話もしたが、私が青池作品で一番好きなのは「イブの息子たち」(1976年)で、詩人のバージル・ワードが大好きと言ったら、大受けであった。別に受け狙いではないんだが。「私、女・バージルになろうかしら」と言うと、昨年亡くなった学友が「あなた、それは人生を誤るわよ」と真顔で言っていたのを思い出す(冗談に決まっているじゃない ! )

    青池さんの新たな作風を理解できない読者はいたようで、「イブ」を描いたあと手紙が来て「青池さんあなたは堕落した」「さようなら」と言われたとか。この話は青池さんは昔から何度もされているから、よほど傷つかれたのだろうと思う。それにしても漫画には、なんと〇〇マジメな野暮天の読者の多いことか。わからないなら読まなきゃいいのに。その後も「ロレンスは、いつも少佐の任務のジャマをするのでキライです」などという人もいたらしい(笑)。青池さんも「なんでまんがをまんがとして楽しめないのかな。寂しい気持ちがした」と言っている。私は青池さん関連の本は、コミックスも含めていろいろ持っており、今手元に、「ぱふ」というまんが専門誌の青池保子特集号(1980年5月号)があるのだが、青池さんのことを「少女まんが界ハチャメチャナンセンスの女王」と紹介しているのも、いまひとつ、わかっちゃないなぁ~という気がする。その後、青池さんは「アルカサル-王城-」(1984年)で日本漫画家協会の賞を受賞したりしてようやく世間的な評価が高まった気もするが、青池さんの真価は、その豊かな教養の発露と諧謔精神にあることを忘れてはならない。「たかが漫画じゃない(いい意味で)。もっと楽しもうよ」といつも言われているような気がして、その自由なワールドには、何度となく救いさえ感じてきた。

 さて、ドキドキワクワクしながら展示室へ。何度も何度も読み返した絵の数々が、大きく再現されて掲げられている。漫画はつい筋を追うのに夢中になり、1枚1枚の細かな背景や衣装がどれだけの労力で書きこまれたものか、言われなければ気が付かないことも多い。あの伯爵のくるくるの巻き毛も、実は省略版もあれば、凝って書き込んだ絵もあると知って、今さらながら感心した。青池さんは「今はもうこんな苦労をしてペン入れ作業などする人はいませんよね。アナログ(笑)」などと述懐されているが、青池さんや同時代の漫画家の方々が、眼や手を痛めたり寝不足で苦しんだりといった血のにじむような労力で読者を楽しませてくださったことに、心から感謝したい。コレクションしたコミックスは一生持ち続けて、折に触れて読みかえすことだろう。
「エロイカ」の絶妙なテンポで展開されるギャグのセンス、セクシーともいえるルックスの伯爵と少佐(バラとワイヤーロープ)のからみのほどはNo.14「皇帝円舞曲」までがひとつの区切りかと思われるが、今読んでも爆笑すること請け合いなのでお薦めである。「修道士ファルコ」「ケルン市警オド」は未読なのでこれからの楽しみ。

  青池保子さん、素敵な作品をありがとうございました。どうぞずっとお元気でいらしてくださいね。
 From  MIZAKURA   With   Love ! !

美術館入口で