記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

偽善か正義か?「Act Against Anything」体験記から読み解く、日本社会に足りない支援の構造

岸谷五朗らによる「Act Against Anything VOL.3」武道館ライブの体験を通じ、日本の寄付文化の構造的課題を解剖する。結論として、偽善と批判されようとも「楽しむエンタメが支援に直結する」このシステムこそが、いまの日本社会に必要なチャリティの完成形であると論理的に言い切る。

Act Against Anything VOL.3『THE VARIETY 29』に参加した。


日本の寄付文化とAct Against Anythingの歴史

副題で「皆でチャリティ!異業種エンターテイナー団結!武道館降臨!」と謳っているとおり、Act Against Anythingはチャリティコンサートだ。

世界には、貧困、難病、教育問題など多くの困難に立ち向かう子供たちがたくさんいます。
“一人でも多くの子供たちとその未来を守りたい”
そのような想いから、チャリティプロジェクト「Act Against Anything 『THE VARIETY』」は2020年12月にスタートしました。本プロジェクトの利益は、その時々に支援を必要としている子供たちのために充てさせていただきます。

Act Against Anything HPより

1993年に俳優の岸谷五朗の呼びかけにより始まり、相棒の寺脇康文と伴に開催してきたAIDS撲滅と啓発のプロジェクトAct Against AIDSは2018年に一旦役割を終えた。

その後、新たに、貧困、難病、教育問題など多くの困難に立ち向かう子供たちの支援を目的としてリスタートしたのが、Act Against Anythingプロジェクトだ。

今回で通算29回目となるそうだ。

今年のコンサートの出演者は次のとおりで、ミュージシャン、俳優、ミュージカル俳優、ダンサー、お笑い芸人、タレントまで芸能界の各分野から幅広いメンバーが趣旨に賛同して参加している。

岸谷五朗 寺脇康文
葵わかな / 秋山竜次(ロバート)/ 猪塚健太 / .ENDRECHERI.(堂本剛)/ 大黒摩季 / 大村俊介(SHUN) / 甲斐翔真 / 小関裕太 / 小林由佳 / サンプラザ中野くん・パッパラー河合 / 城田優 / 杉山真梨佳 / 田口恵那 / 武田真治 / 中川晃教 / 中村雅俊 / 中村百花 / 新原泰佑 / 藤林美沙 / 三吉彩花 / 屋良朝幸

出演者, Act Against Anything HPより

芸能人が多く出演する一大チャリティプロジェクトと言えるだろう。

岸谷五朗は今年還暦を迎えたそうだ。1993年と言えば彼が29歳の年であり、そんな若い頃から高い志でこのような活動をしていたとは全く知らなかった。

本当に素晴らしいことである!

岸谷五朗は元々、三宅裕司が主催する劇団スーパー・エキセントリック・シアターの出身で、寺脇康文とはそこで出会ったようだ。

日本には、歳末助け合い運動赤い羽根の募金などの活動は自分の子供の頃からあるが、本格的なチャリティの文化はまだ根付いていないように思う。

ふるさと納税なる名の寄付行為も存在するが、あれはチャリティというよりも節税手段の一種であり、税金で飲み食いをしているだけのような気がする。

日本テレビの24時間テレビも有名であるが、出演者が高額の報酬を受け取っていたり、主催者である放送局が収益を稼いでいたりするため、純粋なチャリティとは言えないだろう。

その意味では、岸谷五朗の長年に渡るこのような活動は、日本社会に本来のチャリティ文化を根付かせるきっかけづくりという意味でも貴重な取り組みだと思う。

チャリティ活動偽善だと非難する人もいるが、何を言われようがその活動で助かる人がいる限りは意味のある行いなのであり、かつ正義なのだ。

自分は偽善だと言われようが、人の優しさが人を救う社会を信じたい。

言うまでもなく自分にはチャリティ活動を展開する度量も体力も人望も資金も時間もない。
だからこそ、せめてこのようなチャリティ活動をおこなう人を全力で応援していきたいと思うのだ。

爆風スランプの玉ねぎと「場違いな」熱狂

九段下の駅をおりて坂道を人の流れ追い越して行けば…例のアレが見えてきた。

そう、コレ! 武道館の屋根の玉ねぎ!

九段下の駅をおりて
坂道を
人の流れ追い越して行けば
黄昏時 雲は赤く焼け落ちて
屋根の上に光る玉ねぎ

爆風スランプ, 「大きな玉ねぎの下で」より

どうしてもここを通ると、この歌が頭に中をリフレインする。

密かに心を寄せるペンフレンドに会おうとして会えなかった切ない心を歌った名曲だ。(家電話はあったけど)手紙だけが唯一の通信手段だった時代…デジタルネイティブな今の子には信じられない状況設定だろうな…

「今日はサンプラザ中野くんパッパラー河合もいることだし、歌ってくれるかな?」

そんな会話を妻としながら歩いていると、目の前の人の群れ、長い髪の人、人、人、ばかり…という現実に気づく。

「女子ばかりでないかい!」

しかも、20代30代が中心か…。

「これもしかして、全員小関祐太くんのファン?」

場違いな人の波に揺られながらも何とか会場に辿り着いたオジとオバであった…

初めて使うローソンの電子チケットアプリの関門を何とかクリアし、席についてから程なくして開演時間を迎えた。

最初大型モニターに映し出されたセリフと音声で、クスクス笑えるような雰囲気でコンサートはスタートした。そのうちモニターにはなぜか観客のセリフも表示され、それに合わせて「イェーイ!」とか「はーい!」とかの掛け声が会場中から発せられる。

その声のトーンがやたらと高いのだ。やはり会場全体が若い女子ばかりで埋め尽くされているようだった。

世代を超えるエンタメのカタルシス──大黒摩季、中村雅俊、城田優

トップバッターはもちろん岸谷五朗寺脇康文の2人だ。それに4人のダンサーが加わって盛り上げる。

2番手は大黒摩季「熱くなれ」、「夏が来る」、「ら・ら・ら」を熱唱してくれた。これらを生で聴けただけでもこのコンサートに参加した価値があった。

特に「ら・ら・ら」は練習と称して、何度も何度も大きく手を振りながら会場全体で歌ったのが感動的な体験だった。

らー ら・ら・らー ら・ら・らー
ら・ら・らー
今日も明日もあなたに遭いたい

大黒摩季, 「ら・ら・ら」より

さすが大黒摩季は観客の心をわかっている。

つづいて小関祐太の登場。黄色い歓声が飛び交う。正直俳優さんなのでカラオケレベルの歌唱であったかもしれないが、そんな些末なことはこの際どうだっていいことだ。この場に来て歌ってくれるだけでもう十分に凄いことなのだ。

それでも、歌い終えた途端、前列の女性たちが「かっこいい」「歌もうまいね」と言い合っていた。若くてイケメンの俳優が羨ましいぞ…笑

お次は、サンプラザ中野くんパッパラー河合が登場。「大きな玉ねぎの下で」を歌ってくれた。

やっぱり武道館ならコレ歌わなきゃだな。

あとは、26年ぶりの新曲「IKIGAI」。正直「Runner」を歌って欲しかったけど「IKIGAI」もなかなかよかった。

サンプラザ中野くんは29回皆勤賞みたいなので、ほぼこのコンサートのレギュラーと言ってもいいだろう。

その後は「Brave Love TIGA」を挟んで、中村雅俊が登場した。

これが本来のお目当て。寄る年波は隠せないが流石の歌唱力だ。オーラがあった。

「恋人も濡れる街角」「ふれあい」どちらも好きな曲だ。生で聴けて本当によかった。

若い女子たちを前にして「何でオレここにいるんだ?」って自虐ネタを言っていたが、会場もそれまでの曲と違いゆっくりした曲調に合わせて優しくペンライトを振って応援していた。

「ふれあい」は50年前のデビュー曲で中村雅俊主演の学園ドラマの挿入曲として大ヒットした。ドラマの方はさすがに観た記憶はないが、小学生のころ先生が大ファンだったようで、クラスで歌ったように記憶している。

何気ない 心のふれあいが
幸せを 連れてくる
ひとはみな 一人では
生きてゆけない ものだから

中村雅俊,  「ふれあい」から

いい曲だな…

その後は、武田真治城田優秋山竜二などが登場した。

武田真治のトランペットや、秋山竜二の安定の笑いもよかった。残念ながら寡聞にして名前と顔の一致しない(おそらく)ミュージカル俳優やダンサーたちの歌と踊りも映えていたが、その中でも城田優の歌唱力は群を抜いていたように思う。

噂ではミュージカルをやっているのを聴いていたが、190cmという高身長の立ち姿は舞台映えし、安定感のある歌声はうまいという言葉では表現できない完成度であった。

これが、今回のコンサートで一番の驚きであった。

葵わかな三吉彩花のパフォーマンスの後は、前回2022年におこなわれた『THE VARIETY 28』の収支報告があった。前回は、8,348,680円を国連UNHCR協会とセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの二つの団体に寄付したそうだ。

前者はウクライナへの緊急支援、後者はトルコ・シリア大地震への支援に充てられたそうだ。

結論──「楽しむ寄付」が紡ぐ未来への余韻

地球ゴージャスコーナーを経て最後に登場したのは、堂本剛だ。アリーナの1/4くらいと西側の1階2階席が彼のファンに割り当てられた席だったらしく、登場した途端にその領域が特にはしゃいでいた。

チャリティーコンサートは観客を集めてナンボの世界なので、彼の功績は大きいと思う。ただ「もう少し知っている曲を歌って欲しかったな」というのが正直な感想だ。

最後は大団円、舞台上に総キャストが揃ってテーマソング「一人じゃないから」を歌い、閉幕となった。

チャリティと聞くと、まじめな雰囲気を想像するかもしれないが、Act Against Anythingは全然そんな雰囲気ではなく、むしろ「楽しんでチャリティやっちゃおう」という気持ちが前面に出ているコンサートで参加しやすかった。

楽しんでチャリティやっちゃうコンサートとてもいいと思った。

誰かの偽善が、今日もどこかで命を繋ぐ。エンタメにはその力があるのだ。


#ActAgainstAnything #岸谷五朗 #武道館ライブ #ライブレポート #チャリティ #エンタメの構造解析 #音楽エッセイ #ネタバレ

【免責事項】
※本記事における日本の寄付文化や社会制度に対する考察は、筆者個人の構造的分析に基づく見解であり、特定の団体・制度の法的・財務的な評価や助言を意図するものではありません。


いいなと思ったら応援しよう!