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3か月先をどう読むか ― 収入が減っても、支出は止まらない理由 ―【月刊販促設計 2026年6月号 第1回】

このシリーズについて

「月刊販促設計」は、総務省統計局が毎月発表する家計調査データと気象庁の気象データを活用し、3か月先の販促計画を立案するための実践的な情報を提供するシリーズです。

今回の2026年6月号では、2025年6月分の家計調査データ(2025年8月8日公表)と気象庁の気象データを分析し、2026年6月の販促判断に使える「読み方」を整理します。

全3回の構成で、第1回は消費と気象のデータを重ねながら、6月という月の本質を定義します。

最終回公開後には「2026年6月販促設計カレンダー(PDF版)」を配布予定です。


こんにちは。ミタカ販促設計ラボ室長のサタケです。

前回の2025年12月号の検証記事をすでに読んでいただいた方は、「予測の的中より、思考の枠組みの方が現場で使える」という話を覚えていると思います。

今回の6月号もその延長です。データを当てに行くのではなく、消費者の動きを読む軸を作ることを目指します。

まず結論から言います。

2026年6月は、「拡大月」でも「縮小月」でもなく、「選別月」です。

これはどういう意味か。データと気象の両面から説明していきます。

2025年6月、消費の全体像

2025年6月の二人以上の世帯における消費支出は、1世帯あたり295,419円。前年の同じ月と比べると、物価の影響を除いた実質ベースで1.3%の増加でした。2か月連続の増加です。

「消費は増えている」と聞くと好調に見えます。

しかし同じ月の数字を並べると、別の顔が見えてきます。消費支出は実質プラス1.3%の一方、勤労者世帯の実収入は名目では2.0%増えているものの、実質では1.7%の減少でした。さらに可処分所得(税金や社会保険料を引いた実際に使えるお金)に至っては、実質で8.1%減というかなり大きな落ち込みです。

「使えるお金は減っているのに、消費支出は増えている」

これが2025年6月の最大の特徴です。

なぜこうなるのか、次のセクションで掘り下げます。

なぜ収入が減っても、支出は止まらないのか

鍵になるのは、費目ごとの内訳です。

実質で増加した費目(前年同月比)

  • 住居:+11.6%(修繕・維持費が主な要因)

  • 保健医療:+8.9%(5か月ぶりの増加)

  • 交通・通信:+8.6%(自動車関連費が大きく寄与)

  • 光熱・水道:+6.3%(3か月ぶりの増加)

実質で減少した費目(前年同月比)

  • 被服・履物:-6.6%

  • 食料:-2.1%

  • 教養娯楽:-1.0%(外国パック旅行費が特に低調)

この対比が「選別月」というキーワードの中身です。

住居の修繕は後回しにできません。車の維持費も同様です。体の調子を保つための保健医療費も削りにくい。しかし服は去年のもので問題ないし、旅行は今じゃなくてもいい、という判断が働いた結果がこのばらつきです。

消費マインドが高かったのではなく、支出の中身が変わった月だったというのが正確な読み方です。

可処分所得が実質8.1%も落ちているにもかかわらず消費全体が増えているのは、必要な支出を優先した結果として全体の数字が引き上げられたからです。

気象との関係:2025年6月の条件

販促計画において気象データは消費行動の背景として欠かせません。

2025年6月の気象は、通常の6月とはまったく異なる条件でした。

月全体の特徴

  • 北・東・西日本の月平均気温が1946年の統計開始以降、6月として過去最高

  • 全国153の気象台等のうち122地点で月平均気温の歴代最高を更新

  • 太平洋側を中心に日照時間が「かなり多い」水準

旬別の天候経過

  • 上旬:梅雨前線の影響で東西日本の日本海側を中心に雨が多く、来店が不安定になりやすい条件

  • 中旬後半:太平洋高気圧が張り出して晴れの日が増加、各地で猛暑日を記録

  • 下旬:九州・四国・近畿・中国地方で梅雨明け、6月30日には全国118地点で猛暑日

この気象条件が消費に与えた影響は明確です。

梅雨前線が活発だった上旬は来店頻度が落ち、中旬後半以降の急激な気温上昇が「今すぐ必要なもの」への支出を動かしました。冷感グッズや飲料が動いた一方、旅行や外食の余裕は収入状況から抑えられました。

つまり、気象が作り出した「今すぐ必要なもの」だけが売れた月でもありました。

「選別月」という読み方が販促に何をもたらすか

ここまでのデータを整理すると、2025年6月の消費構造は3点に集約されます。

  1. 収入は実質で目減りしていた

  2. それでも必要性の高い支出には使った

  3. 気象が「今すぐ必要なもの」への支出を後押しした

この構造を2026年6月の販促設計に当てはめるとき、陥りやすい間違いが2つあります。

間違い①「6月は弱い月だから何もしない」
全体が伸びないからといって諦めると、伸びている分野への対応が遅れます。前年の住居、交通・通信、保健医療は明確に選ばれた支出でした。

間違い②「気温が高かったから夏商材を前倒しすれば解決する」
前年の被服費は実質6.6%の減少でした。猛暑であっても、まとまった服の買い物には慎重だったということです。気温と支出は単純比例しません。

6月の設計思想は「動かす月」でも「休む月」でもなく「整える月」です。

伸びる分野を見つけて丁寧に対応しながら、伸びない分野への過剰投資を避ける。そのためには、どの費目が動いていてどの費目が動いていないかを、前年データをもとに事前に把握しておくことが必要です。

前年から持ち越すべき「問い」

このシリーズの本質は予測を当てることではなく、思考の枠組みを作ることです。

今回の第1回で確認したのは、2025年6月の消費が「収入の減少下における選別的な消費」だったという事実です。

これを踏まえて2026年6月の販促を考えるとき、持っておくべき問いは一つです。

自分が扱っている商品・カテゴリーは、消費者が「選ぶもの」に入っているか? それとも「後回しにするもの」に入っているか?

この問いに答えられれば、次回以降で扱う週単位の判断や気象対応も、方向性が定まります。

次回予告

第2回では「6月販促で考えておきたい3つの視点」として、守る・合わせる・焦らないという思考軸を提示します。前年の被服費の動きと夏商材の前倒しリスクを中心に、「攻めない強さ」の意味を掘り下げます。

プロフィール

室長について
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役

小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。

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サタケ|ミタカ販促設計ラボ 販促のヒント、伝わっていれば何よりです。 チップは今後の調査・記事制作の資金として大切に使わせていただきます。──室長・サタケ