GW反動と初夏需要の狭間を制する―2025年5月家計調査データから読み解く【月刊販促設計 2026年5月号 第1回】
このシリーズについて
「月刊販促設計」は、総務省統計局が毎月発表する家計調査データと気象庁の気象データを活用し、3か月先の販促計画を立案するための実践的な情報を提供するシリーズです。
今回の2026年5月号では、2025年5月分の家計調査データ(2025年7月4日公表)と気象データ(気象庁発表)を詳細に分析し、2026年5月の販促戦略立案に必要な「判断軸」を整理します。
全3回の構成で、第1回は消費動向と気象の関係性、第2回は週別の具体施策、第3回は実践ツールと効果測定手法をお届けします。最終回公開後には「2026年5月販促設計カレンダー(PDF版)」を配布予定です。
2025年5月の気象を振り返る―消費行動に影響を与えた3つの要素
販促計画を立てる上で、前年の気象データは重要な判断材料です。2025年5月の気象は、消費行動にどのような影響を与えたのでしょうか。
気温:平年を上回る暖かさ
2025年5月の平均気温は、全国的に平年を上回りました。特に月後半は真夏日を記録する地域もあり、初夏というより「夏の予行演習」のような陽気でした。
この気温が消費に与えた影響
光熱・水道費の前年比1.5%減:暖房需要の完全終了
被服費の8.2%増:夏物衣料への移行が例年より早く進んだ
飲料の売上増:冷たい飲み物への需要が前倒しで発生
降水量:ゴールデンウイーク期間は好天
5月前半は比較的好天に恵まれ、特にゴールデンウイーク期間は晴天が続きました。一方、月後半は梅雨入りを思わせる雨の日もありました。
この降水パターンが消費に与えた影響
教養娯楽サービスの大幅増:好天によるレジャー・旅行需要の喚起
外食の増加(寄与度0.48ポイント):外出機会の増加
月後半の家事用品需要:梅雨を意識した準備行動
日照時間:十分な日射で紫外線対策商品に注目
5月の日照時間は平年並みからやや多めでした。気温の高さと相まって、紫外線への意識が高まる気象条件でした。
【気象データから読み解く 販促のヒント】
2025年5月の気象パターンから、5月は「気温次第で消費の立ち上がりが大きく変わる月」であることが分かります。2026年5月の気象予測(平年並みから高め)を考慮すると、夏物商材の展開時期の判断が重要になります。
2025年5月の消費支出:4.7%増の"中身"を気象と併せて読み解く
2025年5月の二人以上世帯の消費支出は31万6,085円、前年同月比実質4.7%増でした。この数字を気象データと重ね合わせると、より立体的な消費構造が見えてきます。
交通・通信費25.3%増:好天がレジャー需要を後押し
消費支出全体の増加に対する寄与度3.41ポイントのうち、自動車等関係費が3.58ポイント。特に自動車購入が2.97ポイントを占めます。
さらに教養娯楽サービスは外国パック旅行費0.24ポイント、国内パック旅行費0.20ポイント。ゴールデンウイーク期間の好天が、旅行・レジャー需要を後押ししました。
【販促実務者が考えるべきこと】
数十万円規模の大型支出をした世帯は、連休明け後に日常消費を抑制する傾向があります。5月全体の数字は好調でも、後半は財布の紐が固くなる可能性を織り込むべきです。
食料費1.0%増:好天による外食シフト
外食が寄与度0.48ポイントある一方、食料費全体では0.32ポイント。つまり内食部分は実質減少しています。
好天続きのゴールデンウイークで外食・外出が増え、家での調理機会が減少。連休明けには内食回帰が進みますが、疲労から簡便調理志向が強まります。
被服費8.2%増:高気温が夏物移行を加速
5か月ぶりの実質増加。シャツ・セーター類8.9%増、洋服10.3%増。
2025年5月は気温が高めに推移したため、夏物への移行が例年より早く進みました。2026年5月も気温が高めの予測なら、この傾向を織り込むべきです。
光熱・水道費1.5%減:季節の完全移行を確認
電気代6.2%減は、暖房需要の完全終了を示しています。ただし本格的冷房需要はまだ始まっていません。この「端境期」の期間は気温次第で変動します。
検証記事から学ぶ―予測よりも「判断力」を磨く
2026年1月26日に公開した「2025年11月号の検証記事」で、重要な気づきがありました。それは「予測を当てること」よりも「状況に応じて判断し、軌道修正できる力」の方が実務では重要だということです。
3か月前の予測は完璧には当たらない
気象予測も消費予測も、3か月先を完璧に当てることは不可能です。むしろ重要なのは
複数シナリオを想定しておく
気温が高い場合/低い場合
雨が多い場合/少ない場合
判断ポイントを明確にする
「5月第2週の平均気温が○度を超えたら展開を前倒し」
「連休明け第1週の売上が前年比○%なら施策を強化」
軌道修正の準備をしておく
在庫の持ち方
売り場の変更スケジュール
追加施策のストック
2026年5月で想定すべき2つのシナリオ
シナリオA:気温が高めに推移(予測に沿った場合)
夏物商材の展開を5月第2週から本格化
冷感商品、UVケア商品の前倒し展開
冷たい飲料、アイス類の売場拡大
シナリオB:気温が低め、または変動が大きい場合
春物と夏物の併売期間を延長
重ね着できる商品の継続展開
気温変動に対応した体調管理商品の訴求
【判断の分岐点】
5月第2週(母の日週)の平均気温が平年比プラス2度以上ならシナリオA、平年並みならシナリオBで進めるなど、具体的な数値基準を事前に設定しておきます。
2026年5月の販促戦略:3つの柱と判断基準
第一の柱:「日常回帰」を支援する
【基本方針】
ゴールデンウイーク明けの第1週は、「頑張らなくていい」「無理しなくていい」商品と訴求。
【判断基準を組み込む】
連休中の天候が良好だった場合:外食シフトの反動が大きいため、簡便調理商品を強化
連休中の天候が悪かった場合:巣ごもり消費の延長で、家で楽しむ商品を継続展開
【具体的商品カテゴリー】
簡便調理食品:レトルト、冷凍食品、カット野菜
栄養補給:野菜ジュース、栄養ドリンク
疲労回復:入浴剤、リラクゼーショングッズ
第二の柱:「初夏の準備」を先取りする
【基本方針】
気候変化に対応した商品提案。ただし展開時期は気温次第で調整。
【判断基準を組み込む】
5月第1週の気温が平年より高い場合:第2週から夏物を本格展開
5月第1週の気温が平年並み以下の場合:第3週まで春夏併売を継続
【紫外線対策(気温に関わらず展開)】
5月の紫外線量は真夏並み。この事実を啓発しながら展開。
日焼け止め、UVカットスプレー、美白美容液
UVカット機能付き衣料、日傘、帽子
【冷感商品(気温次第で展開時期調整)】
気温高め:5月第2週から本格展開
気温低め:5月第3週から段階的展開
商品例:冷感寝具、冷感インナー、冷感タオル
【エアコン点検・買い替え(早期訴求が鍵)】
気温が高めに推移する予測を活用し、「今年は暑くなりそう」という訴求で早期点検を促進。
第三の柱:「母の日」を起点にギフト需要を喚起
【基本方針】
母の日を単独イベントではなく、5月全体のギフト需要喚起の起点とする。
【判断基準を組み込む】
母の日週の売上目標未達の場合:翌週にセルフギフト訴求を強化
母の日週の売上好調の場合:その勢いで初夏ギフトへ早期移行
【母の日ギフトの多様化】
美容・健康:スキンケア、サプリメント
食品:高級食材、スイーツ
体験型:レストラン券、エステ券
実用品:キッチングッズ、バッグ
【セルフギフトの提案】
「自分にもご褒美」訴求で、母の日後の谷間を埋める。
カテゴリー別の展開ポイントと判断基準
食品:気温で展開商品を切り替える
【基本展開】
第1〜2週:簡便調理商品
第3週以降:涼感商品へ移行
【判断基準】
第2週の平均気温が25度超:冷製パスタ、そうめんを前倒し展開
第2週の平均気温が20度未満:温かい商品も継続、段階的移行
日用品:紫外線は確実、湿気対策は時期調整
【確実に展開】
紫外線対策:気温に関わらず5月前半から本格展開
【気温次第で調整】
梅雨対策商品:気温高めなら5月第3週、低めなら第4週から
衣料:気温による判断が最も重要
【判断基準】
平均気温22度以上の日が続く:半袖・ノースリーブを前面に
平均気温18〜22度:七分袖など調整しやすい商品を中心に
平均気温18度未満:春物継続、夏物は奥に配置
家電:予測を活用した早期訴求
【エアコン】
「今年は気温高めの予測」という情報を活用し、早期点検・買い替えを促進。
【小型家電】
扇風機、サーキュレーターは気温次第で展開時期を調整。

次回予告
第2回では、5月を4つのフェーズに分け、週別の具体的な販促施策と、その週ごとの判断ポイントを解説します。
第1週(5/1〜7):GW明けリスタート週の売れ行き確認ポイント
第2週(5/8〜14):母の日需要ピーク週と気温判断
第3週(5/15〜21):初夏移行判断週
第4週(5/22〜31):梅雨前準備週と6月への橋渡し
各週で「何を見て」「どう判断し」「どう動くか」を、実践的な視点でお届けします。
室長プロフィール
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役
小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。
この記事で取り上げた販促予測や市場分析について、お客様の業種・エリアに特化した形で作成するサービスを当社では提供しています。
通常業務では、家計調査だけでなく商業動態統計、景気動向指数、地域別データ、業界団体レポートなど、複数のデータソースを統合して分析します。
興味のある方は、以下の記事もご参照ください。
【小売チェーン向け市場予測:外れても説明できる5層分析フレーム】
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チップは今後の調査・記事制作の資金として大切に使わせていただきます。──室長・サタケ