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噴水の前で│詩

花やしきの噴水の前で
あの男の人は僕の父親になった

白雲が映える春の日に
噴水の前でプレゼントを一つもらって

もらったプレゼントを手に
小さかった僕は考えていた

お母さんはこの人と結婚する
僕はどうするのだろう、と

近くに住んでいる従姉妹と暮らすのか
高知の祖母と暮らすのか
大阪の叔父の家へ行くのか

母と一緒に行く
その選択肢は持ってはいなかった

結婚するのは母で
僕ではないのだから

その日からずっと考えていた
僕はどうするのだろう、と

四歳の子にできることは少ない
母とあの男の人がうまくいくように
周りに気を使うくらいのことしかない

あの人と銭湯に行く時は
顔見知りには知らんぷりをする
ああだこうだと詮索されないように

保育園でもいらないことは話さない
赤ちゃんの頃から一緒だった友達にも
大好きな先生にも

たまにアパートに来る本当の父親にも
もちろん僕は何も言わない
もう会わなくなるのだろうと思いながら

それでも
四歳の頭の中はぐるぐるしていた
僕はどうするのだろう、と

お隣のまさこちゃんは大好きだし
おじさんとおばさんはいつも優しくしてくれる

母の友達のおばさんは
たまに映画に連れ出してくれて好きだ

保育園のひとみちゃんとは
結婚する約束をしている

友達と三歳半年上の従姉妹がいる
江戸川の近くのこの町も好きだ

母はいつ引っ越すのだろうか
答えの出ないまま日が過ぎて
夏になったある日、ついに母に訊ねた

母は心底驚いた
驚いて泣きだした

四歳の子が何か月もの間
自分の行く末を悩んでいたことに

その日から母は
僕を子供扱いしなくなった

母が悩んでいたことも
全部話して聞かせてくれた

母子だけで暮らして行くのは難しいこと
僕が大きくなる前に暮らしを立てないといけないこと
僕の生まれが複雑なこと

母の結婚は
僕のための結婚だったのだ

保育園の運動会がもうすぐやってくる
それがこの町の最後の思い出

夏が終る頃、僕は五歳になり
母と二人で生まれ育った町を出た

2024/6/23

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