【巡礼の年 第1年 スイス】フランツ・リストのピアノ曲紹介
この記事では巡礼の年の第1年スイスを中心に紹介します。この組曲の前身とも言える「旅人のアルバム」については、以下リンクを参照してください。
巡礼の年 第1年 スイス S.160
リストの重要なピアノ作品集のひとつ。1855年にこの形になる。旅人のアルバムの数曲を前身としている。ちなみに旅人のアルバムも部分的に「巡礼の年」というタイトルで出版されたことがあるのでややこしい。
第1曲 ウィリアム・テルの聖堂 S.160/1
スイスの伝説的英雄へのオマージュ。楽譜の冒頭に「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というモットーが掲げられている。
演奏はクラウディオ・アラウ。
第2曲 ヴァレンシュタットの湖で S.160/2
初稿と比べ、大幅な改訂はされていない。タイトルはバイロンの詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」より。
演奏はヴィルヘルム・ケンプ。
第3曲 田園曲 S.160/3
旅人のアルバム第2巻第3曲(第7曲c)の改訂稿。
演奏はアルフレート・ブレンデル。
第4曲 泉のほとりで S.160/4
タイトルはシラーの詩より。1886年、ローマに滞在していたドビュッシーがリストを訪問した際、リストは「泉のほとりで」を演奏した。この曲の印象主義的技法がドビュッシーに影響を与えたと言われている。
演奏はホルヘ・ボレット。
第5曲 嵐 S.160/5
旅人のアルバムからの改訂ではなく、この曲は新たに作られた作品。タイトルはバイロンの詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」による。ピアノ協奏曲「呪い S.121」の冒頭との類似性を指摘されている。練習曲に近い性格。
演奏はアルフレート・ブレンデル。
第6曲 オーベルマンの谷 S.160/6
リストの傑作として認められている。タイトルはスイスを舞台とするセナンクールの詩「オーベルマン」による。チャイコフスキーが(その発言がお世辞でなければ)敬愛していた作品で、そのオペラ「エフゲニー・オネーギン」の「レンスキーのアリア」で主題を借りている。ちなみにトリスティアというタイトルのピアノ三重奏版もあり。
演奏はラザール・ベルマン。
第7曲 牧歌 S.160/7
「チャイルド・ハロルド」より。旅人のアルバムに含まれず。チャイコフスキーの「トロイカ」は当曲の影響下にあるのではないかと指摘されてる。
演奏はアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ。
第8曲 郷愁 S.160/8
旅人のアルバム第2巻第2曲(第7曲b)の素材と「スイス・ロマンティック幻想曲 S.157」の素材から作られている。序文としてセナンクールの「オーベルマン」からの引用が掲げられている。
演奏はラザール・ベルマン。
第9曲 ジュネーヴの鐘 - 夜想曲 S.160/9
旅人のアルバム第1巻の「G*****の鐘」を大幅に改訂したもの。
演奏はグリゴリー・ギンズブルグ。
泉のほとりで 〔コーダ異稿〕 S.160/4bis
弟子のジョヴァンニ・ズガンバティが「泉のほとりで」を演奏するにあたり、リストがコーダを彼のために新たに作り手紙で送った。
【関連作品】
アルバムの綴り "アダージョ - レリジオーソ" S.164l
リストが他人のために書き留め贈呈した、ちょっとした譜面。ウィリアム・テルの聖堂の旋律を使用している。
3つのスイスの小品 〔第2稿〕 S.156a
旅人のアルバム第3巻は「3つのスイスの歌」というタイトルで出版されたことがあるが、当曲集はその改訂稿。1876年作。もともとこれらも巡礼の年第1年へ含まれる可能性、または「第1年補遺」とされる可能性もあったらしい。他の作曲家の作品をもとにしている。
演奏は全てジャン・デュベ。
第1曲 牛追い歌 - フェルディナント・フーバーの旋律 (変奏付) S.156a/1
旅人のアルバムの「牛追い歌 - アルプス登山 - 即興曲 (フーバー) S.156/10」を改訂したもの。
第2曲 山の夕暮れ - エルネスト・クノップの旋律 - 夜想曲 S.156a/2
旅人のアルバムの「山の夕暮れ - 田園夜想曲 (クノップ) S.156/11」を改訂したもの。
第3曲 山羊追い歌 - フェルディナント・フーバーの旋律 - ロンドー S.156a/3
旅人のアルバムの「山羊追い歌 - アレグロ・フィナーレ (フーバー) S.156/12」を改訂したもの。
ダルベールの泉のほとりで
リストの弟子オイゲン・ダルベールの1916年の歴史的録音も紹介します。
● 楽譜紹介
新リスト全集の楽譜では今回ご紹介した楽曲は以下のものに収録されています
・巡礼の年 第1年 スイス S.160
・旅人のアルバム S.156 第1巻 印象と詩情 (リヨン、詩篇、G*****の鐘)
・旅人のアルバム S.156 第2巻 アルプスの旋律的な花々

・2つのスイスの旋律によるロマンティック幻想曲 S.157

・3つのスイスの小品 〔第2稿〕 S.156a

・旅人のアルバム S.156 第1巻 印象と詩情
・旅人のアルバム S.156 第3巻 パラフレーズ
・アルバムの綴り "リヨン" S.167s
・ヴァレンシュタットの湖で 〔中間稿〕S.156/2a bis
それではみなさま良い一日を
